にっぽんの旅 東海 静岡 島田

[旅の日記]

島田と大井川 

 今回は大井川をテーマにした散策です。
JR東海道本線の島田駅に到着したのは、既に23時を過ぎてしまいました。
夜も遅いので、明日に備えて睡眠を取ります。
といっても地方未ければ(都会でもかな)必ずチェックするのが、テレビ番組です。
東京キー局の合間に挟まれている地方番組は、派手さはありませんが家庭的で意外と面白いものがあるのです。
この日もついついローカル番組で、夜更かしをしてしまいました。

 さて翌日は、朝から活動開始です。
今回の宿は都内の半分の宿泊料金、それに加えてクーポンカウントが溜まっていたのでさらに割引と、非常に安く泊まれたのです。
それだけに大丈夫なのか心配をしていたのですが、確かに設備は最新で綺麗とまではいかないにしてもそれなりで、そして嬉しいことに朝食がパンでもカレーでも取り放題。
バイキングに弱い私は、例のごとく皿いっぱいにご飯を盛り、カレーのルーが滴り落ちるほどで、朝から食べ過ぎたのでした。

 そんな食べ過ぎの解消のためにも、早く動かなければなりません。
近代的な島田駅を後に、早速お目当ての蓬莱橋を目指します。
蓬莱橋は大井川に架けられた橋で、木製の橋としては世界一の長さを誇ります。
長らく橋のなかった大井川ですが、明治に入って1879年に橋は完成したのです。
ところが、大井川の激しい流れで何回も流され、そのたびに掛け直しを繰り返していました。
橋脚をコンクリートにし今の姿になったのは、1965年になってからのことなのです。
橋は人と自転車だけが通ることができ、100円の通行料が必要です。
900mの距離を歩いて行く訳ですから、往くだけでも20分ほど架かってしまいます。
橋を歩けば、木の棒を叩いたような軽い音がし、また所々でお寺の縁側を歩く時のような心地よい木のきしむ音がします。
大丈夫なのかと疑いながらも、大井川の優雅な流れを眺めているといつのまにか心配事は吹っ飛んでしまいます。

 対岸には、恵比寿尊天の像が出迎えてくれ、高砂の石碑、昭和の道などがわざわざ作ったのかのごとく一箇所に集中しています。
折角来たものですから、市の観光協会?の罠にまんまとはまって、一通り見て回ります。
そうしてもと来た対岸へ戻ってみると、小一時間かかっていたのでした。

 再び島田駅まで戻り、今度は駅北側の大井神社に寄ります。
鳥居の先に、その神社があります。
創建時期は不明ですが、885年の日本三代実録に神社の記述があることから、それ以前から存在していたと思われます。
大井川沿いには当時70を越える大井神社があり、大井川と東海道の島田宿、そしてそこを旅する旅人を守る鎮護の神として崇められてきました。
晴れ着の帯を披露する島田の帯祭は、特に有名です。

 さて、江戸時代の大井川と島田宿を知るために、大井川川越遺跡に向かいます。
「箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川」で有名な大井川ですが、江戸から京に向かうにはここ島田で川越しをしなければなりません。
川越しの値段は、水かさによって変わり、水が増すほど高くつくようになっています。
もっとも4尺5寸(136cm)になると川留めになってしまい、島田宿で一泊しなければならなくなってしまいます。
そうして栄えた島田宿なのです。
大井川川越遺跡には、人足が集まった宿が当時のまま残されています。
ここで、川越しをするために川札を買いに行った川会所を訪れます。
川越賃銭は前述の水かさで決まる川札と、乗り物によって異なる台札の2つで決まります。
肩車に始まり、人足が担ぐ平連台(梯子のような形のもの)、台と手すりの付いた半高欄連台、そして籠の形をした大高欄連台までさまざまなものがあります。
相撲取りや非人、大道芸人には、無料で渡れる棒渡し(丸太につかまって無料で渡った)というものもありました。
そんなあわただしい当時の様子とは打って変わって、川会所では門番のごとくお婆さんが日向ぼっこを兼ねて話し込んでいたところでした。

 そして、その先の大井川の川越場に行ってみます。
大井の渡しでは、現在は大井川の流れがあるだけで当時の面影は残っておらず、静かに流れる川の流れだけがゆっくりと時を刻んでいます。
当時の様子をさらに詳しく知るために、川沿いにある島田市博物館を訪れます。
白壁、三角屋根の博物館では、川越しの様子や島田宿の賑わいを、資料と映画で紹介してくれます。
たった今見てきた風景だけに、非常に理解しやすいものばかりでした。

 東海道の大井川を十分堪能したので、次は少し上流へ移動します。
バスと電車を乗り継いで、大井川鐵道の塩郷駅まで移動します。
ここにも大井川にまつわるものがあるのです。
電車で40分の塩郷駅は無人駅で、ここに塩郷の吊り橋があります。
板を横に2枚並べただけの狭い吊り橋には、所々にすれ違い用の場所が設置されています(といっても板の幅が少し広くなるだけですけど)
入口の看板には「1m以上の十分な間隔を取り、10名程度で通行するよう」と書かれています。
これって本当に大丈夫なの? 不安を抱きながらも恐る恐る橋を渡って行きます。
この時は人がまばらだったせいもあり、自分自身が歩いて生じる揺れるだけでしたので、高所恐怖症の私にも十分渡れるものでした。
橋の途中で、大井川鐵道のSLが通るのを待ちながら勇壮と流れる大井川を眺め、ゆっくり対岸に向かいます。
対岸では茶畑を見る以外めぼしいものもなく、一往復して戻ってきました。
さて帰りの電車までは1時間以上もありましたので、土産物屋でおしるこをすすって時間をつぶして無人駅を後にしたのでした。
40分間電車に揺られて、本日の大井川の旅は終了となりました。

   
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