にっぽんの旅 東海 静岡 伊豆高原

[旅の日記]

伊豆高原 

 本日の散策は、伊豆高原の城ヶ崎海岸です。
熱海から乗った伊豆急行は、黒い車体の「黒船電車」。
海側の座席が、外に向かって並んでいます。
JRの伊東線から伊豆急行と、乗り換えなしの海岸線を眺めながら1時間弱の小旅行です。

 城ヶ崎海岸へは、その名の通り城ヶ崎海岸駅が最寄り駅なのですが、ここはあえて一つ手前の富戸駅で降りで海伝いを歩くことにします。
富戸駅は小さな駅で、降りる人もまばらです。
田舎の風情がたっぷりの場所です。
ここから海までは、急な下り坂を転げ落ちるように進みます。
そして海に突き当たる所に、「三島神社」があります。
ここは源頼朝と八重姫との間に生まれた千鶴丸が平家によって川に沈められ、流れ着いた千鶴丸を葬った場所です。
その時千鶴丸が握りしめていた橘の枝を植えたと言われるものが、神社の裏手に大木として祀られています。

 ここからは、海岸伝いに歩きます。
「竜宮神社」「宇根展望台」を過ぎ、ごつごつした黒い石が転がる海岸を横目に県道脇を進みます。
「網干場」の名前の通り、訪れた時には数名の漁師さんが網を広げている光景に出くわしました。
磯の香りがプーンとしてきます。
やがて、その網の主である「富戸漁港」が見えてきます。
港には朝の漁から帰ってきた漁船が、横付けされていました。
人の姿はあるが慌てるでもなく、のどかな漁師町の風景です。

 ここからは一挙に坂を登り切り、海沿いの散策路に入ります。
「魚見小屋」の看板が立ち、魚の群れを見張ったという小屋を探したのですが、見つけることができません。
看板には復元した小屋があるとは書かれていたのですが・・・
そうこうしているうちに、「ぼら納屋」に出てしまいました。
ぼら漁の盛んな富戸漁港の、海の見張りと網の手入れ、そして船の改修を行ったところです。
今は食事処として使われています。
ただその値段の高いこと、昼の定食に3000円も出せず、そのまま素通りすることにします。

 「ぼら納屋」から先は、整備された遊歩道が続きます。
この辺になると、海岸線は荒々しい岩場が続きます。
遊歩道はくねくねと左右に曲がりながら、岸の形に合わせて上り下りを繰り返します。
「まどかえ」「こづり」「かどかけ」と名付けられた海岸線を進んでいくと、小さな砲台が飾られている「砲台跡」に出会います。
沼津藩水野氏が黒船に備え、富戸と川奈に築いたものの一つがこの場所なのです。

 さらに「ふたまた」「もずがね」と進むと、吊り橋が現れます。
橋のこちら側は「半四郎落とし」と呼ばれる断崖絶壁です。
昔、富戸村に半四郎とおよしという仲の良い夫婦がいたのですが、半四郎が籠いっぱいのトジを背負って帰る途中、この崖から滑り落ちました。
およしはここに来て涙する日が続いたと言い伝えられている場所なのです。
対岸の門脇岬との間は岩がえぐれ、そのせいでさらなる侵食によりへこんだ海岸線の奥深くまで波が打ち付けています。
海面から23mの高さのつり橋は、下から響く波の音でスリルが増します。

 吊り橋を渡りきると、「門脇灯台」がそびえています。
この灯台、中を自由に見学できるのです。
階段を登りつめて灯台の最上階に立つと、太平洋が一望できます。
そして、垂直に切り立った「半四郎落とし」の迫力とその下に広がる真青の海のきれいさを、改めて眼にすることができます。
ここで、しばしの休憩を取ります。

 さらに遊歩道は続きます。
「穴口」では、地面にぼっかり空いた穴から、はるか下に水の青と打ち付ける白波が交互に入れ替わるのを見ることができます。
この辺りからは、疲れてきたせいか道の高低が心持ち激しくなったように感じます。
「びしゃご」「しんなり」「ひら根」と進み、凹凸に富んだ海岸線を見て歩きます。

 疲れがピークに達したころに、本日の遊歩道の終着点である「伊豆海洋公園」に着きます。
既に汗だくになっており、売店で売っていたみかん風味のソフトクリームの甘くて冷たい味が身にしみます。
花の時期を逸した「伊豆海洋公園」は、今回は入ることをやめ、ここが本日の散策の最終地点となりました。
帰りは「伊豆高原」駅までバスに乗り、そこからタイミング良く再び「黒船電車」に乗り込むことができたのでした。

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