にっぽんの旅 東海 静岡 伊東

[旅の日記]

伊東 

 今日訪れるのは、東伊豆の街「伊東」です。
熱海から電車でわずか20分余りで着くこの伊東は、温泉街熱海と違い、静かな漁村が広がっています。
とはいえ、JR伊東線と伊豆急行線とのターミナル駅でもあり、この付近では比較的大きな街です。
今日は、この伊東の街をゆっくりと散歩して行きます。

 駅前のロータリーから、商店街である「湯の花通り」を進みます。
タイルを敷き詰められた通りは、温泉まんじゅうの店がある他は、通常生活のための商店が並びます。
ただ所々にかわいい顔をした現在風七福神の石像が立っており、心を和ませてくれます。
通りはやがて「キネマ通り」と名前を変えて、生活色が一層豊かな通りとなります。

 やがて松川と交差し、そこで左斜めに入る小道へと進みます。
昭和初期に建てられた温泉旅館「東海館」と「いな葉」が、そこにあります。
いずれも伊東を代表する旅館です。
それぞれ3階建ての巨大木造建築で、上部には望楼がそびえています。
「東海館」のそれは瓦の三角屋根、「いな葉」は多角形で天井にお椀をひっくり返したような半球の形をしています。
いずれも伊東市の観光施設として利用されています。

 大川橋を渡り、松川の対岸からこれらの建物を見てみましょう。
松川のせせらぎに松の姿が、昭和浪漫漂うこの建物をさらに引き立ててくれます。
「東海館」と「いな葉」の巨大木造旅館を眺めながら、河辺を散歩道をブラブラします。

 実は「東海館」の内部を見学できるのです。
大きな梁をもつ、立派な日本旅館です。
和風の客室は、松川を臨む縁側から川のせせらぎを眺めることができます。
1部屋ずつ見て回ります。
望楼にも上ることができ、そこからは伊東の町を見渡せます。
また風呂も解放されていますので、タオル片手に湯に浸かることもできるのです。

 さて、再び「あんじん通り」からの散策を継続します。
松川を渡る大川橋の北側に、「ピアッツァ・リエティ」なる広場があります。
イタリアの友好都市リエティから贈られた、石臼のモニュメントです。
2つのタイヤがつながったような形をしている石臼は、これはオリーブオイルを搾るためのだそうです。

 さらに北に進み、和田寿老人湯を越えて伊東市役所方向に進みます。
わずかに海寄りの道から入っただけなのに、そこからは急な上り坂が続きます。
息せき切らして登りきると、「物見塚公園」に出ます。
眼下に伊東の街とその先に広がる海を見下ろすことのできる、絶景の場所です。
ここは、伊豆一円を統合した伊東氏の館跡で、曽我兄弟の祖父にあたる伊東祐親の馬に乗った像が飾られています。
そして、「物見塚公園」の隣には、超近代的な「伊東市役所」、そしてその横には日蓮上人も過ごしたことのある「仏現寺」と続きます。

 「仏現寺」まで来ると、せっかく登ってきた坂を一気に降り、国道135号線に出ます。
そのまま西に進みたいところですが、少しだけ東に戻ったところに古めかしい燈篭があります。
道の片隅に建っており、うっかりすると見逃してしまいそうなものです。
「玖須美の石燈篭」と呼ばれるもので、かつては海からの船がこの灯りを頼りにしていた、いわば灯台の役目をしていたものです。

 ここでUターンして、本来の西方向に進路を変えます。
立派な「毘沙門天芝の湯」を越え、道の両側に広がるひものの家内工業を眺めながら歩いていきます。
ちょうど昼時だったので、どこの店(工場)からもひもの作りの人々が休憩のために外に出てきます。
磯の匂いをかぎながら、歩いていきます。
そしてこの辺りには、古いたたずまいを残した家があります。
木の扉が並ぶ屋号「一王」、そして白壁がまぶしい屋号「斉元」など、今でも現役の建物です。

 ここからは1本海寄りの道である135号線バイパスを歩きます。
朝のうちは賑わっていた魚市場も、この時間になるとさすがに人影がありません。
港には漁船が並び、ここでも昼食なのか人を見ることができず、カモメだけが港を這いまわっています。

 ここで昼食を取ることにします。
せっかくここまで来たのですから、是非おいしい魚を口に入れて帰りたいものです。
あまり綺麗な食堂よりも、古いが小奇麗な店はないものかと探していると、ありました!
おばちゃんとお婆さん、そして厨房では男性の声がする家庭的な店があったのです。
昼食にしては少し値が張りましたが、煮魚定食を注文することにしました。
待つこと5分程度、出てきたのは煮込まれて真黒になった3匹のカサゴが、山のように皿に盛られています。
そして茶碗蒸しや漬物、吸い物、たっぷりのご飯。
魚の山を見て、慌ててビールも注文したのでした。
カサゴは醤油だれの味がしみていて、そして3匹といったボリュームいっぱいで言うことなし。
酒のつまみに、そしてご飯のおかずに十分の量でした。

 お魚で大満足した後は、伊東駅目指して海辺を進みます。
松川に架かる渚橋の手間には、「アダムス胸像」そして帆船のモニュメントが飾られています。
橋を越えた「渚公園」にも、彫刻家重岡健治の数点かの作品が太平洋を望む芝生の中に並んでいます。

 その先は砂浜が続く「オレンジビーチ」が広がっています。
さすがに11月ともなれば水に入っている人はいませんが、浜辺を散歩する人の姿を見ることができます。
135号線バイパスの山側の歩道にはひものやが店を構え、ずらりと並べられた、いや今まさに干している最中のひものが道いっぱいに並べられています。
さすがに都会では見ることのできない風景です。

 そうこうしているうちに、伊東駅に到着です。
ここから少しだけ足を延ばし、「伊東サンライズマリーナ」に向かいます。
そこにはヨットハーバがあって、多くのクルーザが整列しています。
海水は澄んでおり、海底が見えるほどです。

青い小魚が、気持ちよさそうに泳いでいます。
隣には「伊東マリンタウンシーサイドスパ」の温泉もあり、土産が並び食事ができるので、多くの人で賑わっています。
 そして今度こそ、本日の散策は終了です。 まっ昼から夕食並みの豪華でおいしい魚を腹いっぱい食べて、魚に合わせてビールもちっぴり嗜んでの満足な一日でした。

   
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