にっぽんの旅 東海 静岡 天城

[旅の日記]

天城峠 

 川端康成の「伊豆の踊子」の舞台を、今回は散策してみます。
というより、田中絹代から始まり、美空ひばり、吉永小百合、山口百恵等の往年の大スターが演じた映画と言った方がなじみ深いかもしれませんね。

 修善寺からは東海バスが、1時間に1〜2本の割合で走っています。
朝9時に修善寺駅に着き、先ずはバスセンターに寄ります。
片道1000円を越えるバスですから、何がしかの割引券があるはず。
予想は見事に当たり、2日間で特定区間内の乗降りが自由にできるフリー乗車券が、わずか1900円で販売されていました。
早速これを買い、バスに乗り込みます。
ここから最初の目的地である水垂(みずだれ)までは、1時間かかります。
月ヶ瀬、嵯峨沢の各温泉地と、天城山を越えての山々の風景を眺めながら、バスに揺られて行きます。

 そして降り立ったのは、河津七滝の北の入り口である水垂です。
水の音のする方へ、自然と足が向かいます。
ところがこれが結構の険しい道で、おまけに今朝までの大雨で足場は決して良くありません。
わずか5分ほど歩いただけなのですが、釜滝に着いた時には足がつりそうになっていました。
地獄滝とも呼ばれるこの滝は、水量が多く激しい息遣いのする滝です。

 河津川沿いの遊歩道を、南に歩いていきます。
次に現れたのは、エビ滝です。
川を流れる水が、白くあがる水しぶきがエビの尾びれに似ていることから、この名が付いています。
ところがこの日は大雨の後で、天気予防では先日の地震と今回の雨とで土砂災害に注意と言っているが如く、濁流で流れる川には既にエビの姿はなくなっていました。

 その先には、蛇滝があります。
玄武岩が蛇のウロコに似ていることが、こう呼ばれています。
落差はさほどないのですが、当日の増水で川幅が広がり、そこから一気に落ちる水勢には迫力があります。

 先を歩いて行くと、急に道幅が広がります。
ここから先は、観光バスで訪れる一般の観光客のために、整備された道が準備されてます。
ここで目にしたのが、初景滝です。
2つの糸を引くの滝(通常は1ヶ所なのかも知れませんが)をバックに、踊り子と彼女に魅せられた学生のブロンズ像が建っています。
河津七滝の一番の観光ポイントです。
滝の脇には湧水が噴出しています。

 整備された道が切れた所に、出合滝があります。
階段を下りていかなければならず、先ほどの賑わいもなくひっそりしています。
そしてそこからは次なる大滝の滝元でもあり、ゆっくりと水が吸い込まれていく様子が見られます。

 大滝には、一旦バス通りに出て旅館の脇の細い道から入ります。
ちょうど旅館を跨いでいく格好です。
滝野反対側遠くには、ループ橋が見えます。
高さ30mのこの滝は、河津七滝のなかで最も大きく雄大な姿を示しています。
七滝の締めくくりとして、しばらく眺めて行くことにします。

 さて河津七滝(かわづななたる)のバス停では、早咲きの桜が花をつけています。
ここからバスでループ橋を渡り二階滝(にかいだる)まで行き、踊り子と同じ気分で旧天城トンネルをくぐることにします。
バス通りから1本中に入った旧下田街道は、舗装のしていない地道なのですが、車も通ることができる所です。
今回は「ハチに注意」の看板を気にしながらも、歩いて登ることにします。
途中、二階滝を横目で見ながら通り過ぎ、苔むした天城橋を越えて、ついに目的の旧天城トンネルに辿り着きます。
1904年建造の石造りのトンネルは、446mの長さがあり現存する石造トンネルの中では最長ものです。
トンネルの中は等間隔にわずかな灯りがともっているだけで、足元は真っ暗です。
歩いて脱いでいたコートを再び羽織らなければならないほど、トンネルの中は一段と冷えています。

 トンネルを抜けると、再び静かな緑が続きます。
水生地下(すいしょうちか)のバス停まで、旧下田街道を下って行きます。
途中、水生地や清水を必要とするわさび田を横目で見ながら、国道までの散策を楽しみます。
さて、ここからは再びバスに乗り、6kmほど先にある浄蓮の滝に向かいます。

 浄蓮の滝は、観光バスが止まる一大観光スポットでした。
初景滝を除いた河津七滝とは打って変わって、こちらは列をなして階段を下って行きます。
日本の百滝に選ばれた浄蓮の滝ですが、完全に観光地化され正直なところちょっとがっかりです。
で、ここでの名物はわさびソフトです。
甘いソフトの中にピリッとした辛みが、時折口の中を駆け巡ります。
辛さが苦手な人には、ミカンソフトもあるのです。

 滝三昧そして天城トンネルで、伊豆の踊子気分に浸った1日でした。

   
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