にっぽんの旅 東海 岐阜 美濃

[旅の日記]

和紙の里 美濃 

 本日は古い街並みと和紙で有名な美濃を訪れます。
美濃太田から30分程度の比較的手ごろに行くことができる場所です。
長良川鉄道に乗り込んで、列車の旅を楽しみます。

 春の良い季節とあって列車が混むことを心配していたのですが、そんな心配も吹っ飛ぶほどにがらがらのローカル線は坦々と進みます。
到着した「美濃市駅」では、木造の趣のある駅舎が出迎えてくれます。
改札はあるものの検札は列車を降りるときに運転手が行いますので、ホームへは自由に行き来できます。

 長良川鉄道「美濃市駅」から5分も歩かないうちに、名鉄美濃町線の「旧美濃駅」が現れます。
白く塗られた木造の駅舎の奥には、当時のホームがそのまま残されています。
そしてそこには、懐かしい車両が待機しています。

 「旧美濃駅」は、1911年に美濃電気軌道により「上有知駅」として開業します。
しかし同年すぐに「美濃町駅」に改称してしまいます。
その後駅の移転などもあって「新美濃町駅」に再び改称してしまいます。
1923年には美濃電気軌道が名古屋鉄道に合併され、1954年には名称を「美濃駅」となります。
一時は新岐阜駅(今の名鉄岐阜駅)から急行が運行されていましたが、それも輸送量の減衰に伴ってやがて廃止され、ついにはワンマン運転での運航になってしまいます。
そして1999年にはついに廃線に追い込まれていったのです。
今残っている駅舎は、登録有形文化財にも認定されています。
先頭が丸い赤と白の車体は、懐かし当時の様子を思い出すことができます。

 そこから10分も歩けば、古い町並みが残る市街地に到着します。
美濃はうだつの上がる町として有名で、この一帯には古い家々が並んでおりタイムトリップしたようです。
しばらくはこの街並みを楽しんでみます。
うだつとは屋根の両端にある防火壁のことで、燃えやすい木造の建物において類焼を防ぐ工夫として設けられました。
切妻平入りの町屋で両端の妻を一段高くしたうだつはやがて豪商たちの富の象徴として、手の込んだ模様とそこで使われる鬼瓦について独自のうだつを競い合って造られることになります。
ここ美濃には東西2筋に渡って、うだつの上がる町並みが見事に残されています。
歴史的景観が今に残ると言うことで「伝統的建造物群保存地区」にも選定されてます。

 その中でもひときわ立派な建物が「旧今井家」で、「美濃史博物館」として中を観ることができます。
和室が並ぶ奥の縁側からは、庭に下りることができます。
庭には水琴窟があり、石の中央に柄杓で水を灌ぐと下に埋められた壺にこぼれ落ちる水滴が響いて、まるで琴を奏でるような音が聞こえます。
敷地内にある蔵が「美濃史博物館」になっており、和紙で作った祭りの飾りや、これまた和紙で作った日本一と称される巨大な羽子板が無造作に置かれています。

 ここで「旧今井家」の道向かいにある喫茶店で一休みします。
席について注文をすると、豆を挽く心地良い音が聞こえてきます。
やがて良い香りのコーヒーが運ばれてきます。
口に含むと歩いて来た疲れが吹っ飛ぶほど、寛ぐことができるのです。

   
   

 少し休んだ後は、程近くにある「美濃和紙あかりアート館」を訪れます。
美濃産業会館として1941年に建築されたもので、現存するなかでは美濃市最大の近代木造建築です。
なかには和紙で作られた灯りのオブジェが展示されています。
作品は会館の中だけでなく、美濃の町に展示され町中がアートの世界に彩られます。
そして美濃和紙は無形世界遺産にも選ばれるほど、貴重な日本の美なのです。

 それではここでうだつの街並みを離れて、「小倉山城」に向かいます。
飛騨高山藩主の金森長近は養子の金森可重に高山城を譲り、1605年に隠居のためこの地に築城します。
山腹部分に本丸と二の丸が築かれ、山麓には三の丸が置かれました。
その後は、可重より長近の実子である長光に2万石が与えられ美濃国に上有知藩が成立しますが、嗣子がなく1611年の長光が没すると廃藩となってしまいます。
現在は小倉公園には本丸に模擬櫓、そして山頂には展望台が建造されています。
模擬櫓の脇道を入ったところには。「富本稲荷」があります。

 ここからは「長良川」の川辺に出てみましょう。
小倉公園を一旦出て、西側の民家の中を貫く道を進みます。
「長良川」沿いに小さな「住吉神社」があります。
神社の名前からも「長良川」を使った船の往来が盛んだったことが判ります。

 そして「住吉神社」の鳥居の前の川の畔である上有知湊には「川湊灯台」があります。
上有知湊は「長良川」を使った物資運送の玄関口として築かれ、番船40艘を置いた舟運の拠点として栄えました。
高さ9mの灯台は船の運航の目印として、美濃に鉄道が開通するまでの間活躍しまたのです。
右手を眺めると「長良川」に架かる赤い橋が見えます。
1916年に竣工した橋長113mの日本最大級の「美濃橋」で、現存する日本最古の近代吊橋です。

 これで歩いて行くことのできる美濃は一通り回り終えました。
人混みに紛れることもなくのんびりと美濃の町を味わうことのできた1日でした。

   

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