にっぽんの旅 東海 愛知 常滑

[旅の日記]

常滑焼 

 瀬戸、多治見と同じく名古屋で焼物で有名な常滑の町を訪れてみます。
海上空港である中部国際空港の陸側の入口に当たる常滑は、古くから良質の粘土が取れました。
その土を活かして、平安時代から焼物の生産が盛んであったと言われています。
明治時代になると土管、タイルなども生産されるようになり、近代的な窯業の町へと発展を遂げてきました。

 常滑駅へは、名古屋から名鉄で40分余りで着きます。
焼物で造られた巨大なオブジェが、駅前交差点を飾っています。
焼物窯が並ぶ地域には、駅から10分程度歩かなければなりません。
温かい春の日差しを受けて、のんびりと歩いていきます。
小高い丘を掘り起こして造った道路の端には、市民が作った焼物が傾斜を利用した道路枠の壁に飾られています。
温かい家族の和をテーマにしたもの、漫画のシーンを再現したものなど、様々な焼物が埋め込み壁画のように並んでいます。
道の反対側には、年季の入った建物があります。丸久旅館です。
木の板を打ち付けただけの壁で、木造3階建ての建物は、何かしら不思議な魅力を感じるのです。

 そうこうしているうちに、まねき猫の案内があり、ここからが「やきもの散歩道」となります。
この辺りでは、家の敷地の境に土管が積まれているのを目にします。
そして、あちらこちらに窯の煙突が見えます。
近くに寄っていくと、煉瓦を積み上げた窯があるのです。

 ちょうど団子屋さんがありました。
1本から買えるようなので、醤油団子を注文してみます。
焦げた醤油の香ばしさがなんともいえない団子は、甘すぎずちょうどいい具合です。
歩きながら食べほすと、道端にはちょうどいい場所にゴミ箱があるのです。
缶のふたをくりぬいて作ったゴミ箱は、団子のくしだけをうまく差せるものです。

 リサイクルゴミ箱に気をよくして坂道を歩いていると、廻船問屋「瀧田家」に出ます。
江戸末期から明治時代にかけて、海運業で巨大な富を蓄えた瀧田家の屋敷です。
襖と障子で区切られた2階建ての畳の間が、今は資料館として一般開放されています。

 「瀧田家」の坂を登ったところには、常滑を紹介する写真で必ずと言っていいほど登場する「土管坂」があります。
坂の上り方向に向かって右手に焼酎瓶、左手に土管が積まれています。
土管は明治10年ごろ、焼酎瓶は昭和30年代の作品ということです。
そして路面には、土管を焼くときに使われた焼台が敷き詰められています。

 雨が降ると流れる雨水が音を奏でる「電纜管」を越えて、「登窯」へと進みます。
「登窯」は、やきものを訪れる周回道路の南の端にあります。
煉瓦を積み上げた窯は、中まで覗くことができます。
そしてこの辺りには、製陶業者自らが作品を展示して販売する店が、ポツリポツリと並んでいます。
1軒1軒覗きながら行くのも、面白いものです。

 さてここで周回道路の残り半分を戻っただけでは、ただの散歩。さらに先を進みましょう。
彫刻の並ぶ商店街を歩いていきます。
商店街と言っても、それは旧家が立ち並ぶ田舎の道、その地にとっての幹線道路。
くねくねと曲がりながら、風情のある街並みです。
道のあちらこちらに焼物の飾りが施されています。
郵便ポストだって、ご覧の通り(写真をご覧ください)。
レトロな造りの「本町大正館」「宝金寺」「からくり時計」を経て、路線バスの行き交う道路に出ます。
ここから500〜600mも歩けば、そこには「INAXライブミュージアム」です。先を急ぎます。

 緑の芝の先に、高い煙突を持つ黒塗りの大きな建物、ここが「INAXライブミュージアム」です。
敷地中にはいくつかのテーマを持った建物が並んでおり、まずは気になる黒塗りの建物に入ってみます。
ここは資料館で、入れば巨大な窯の内側に自分が立っていることに気が付きます。
土管に関する資料や、使うのがもったいないぐらいの芸術的な陶器の便器が、並んでいます。
一方タイル博物館では、まずは会館に入ったところでまばゆく光り高さのあるタイル張りの通路口に驚かされます。
そして天井にまで、タイルが敷き詰められています。
中は世界のあらゆる時代のタイルが展示されています。
その他「建築陶器のはじまり館」や体験コーナなどでも楽しめます。

 「INAXライブミュージアム」で楽しんでいるうちに、常滑での1日も終わったのでした。

 
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