にっぽんの旅 東北 山形 山寺

[旅の日記]

山寺 

 山形県の山寺が、今日の散策の舞台です。
いつかは行こうと決めてはいましたが、東北となればなかなか時間が取れなかったのが実情です。
で、今回は待ちに待った山寺旅行です。

 JR山寺駅は、山形駅からJR仙山線で15分程のところにあります。
あいにく外は雨。
それでもせっかく来たからには、このまま引き下がれません。
強行突破あるのみです。

 山寺駅は、木造三角屋根のお寺を思わせるような素朴な駅舎です。
駅前の立谷川に掛かる朱塗りの欄干を越え、向こう岸に渡ります。
道の左右には観光バスも入れる駐車場を備えた土産物屋や蕎麦屋が、ぽつりぽつりと客引きをしています。
雨で足場が悪いのですが、5分も歩けば登山口に辿り着きます。

 登山口では、「根本中堂」へと続く階段が待ち構えています。
これから続く「奥の院」までの長い長い階段の始まりでしかありません。
階段を登りきると、正面にはまず最初のお堂である「根本中堂」があります。
山寺は正式には宝珠山立石寺と言い、860年に清和天皇の勅願にて慈覚大師が開いた天台宗のお寺です。
山全体がお寺になっており、この根本中堂には木造薬師如来坐像が安置さています。
ここから山門まで、日枝神社、宝物館、念仏堂、灯篭が続きます。
そして、芭蕉像もここにあります。
芭蕉と言えば「閑さや岩にしみ入る蝉の声」の句が有名ですが、1682年に山寺を訪れた時に詠んだ句です。

 山門で入山料を払い、ここからが1000余段にものぼる登り階段の本番です。
ところが、早くも食の誘いに負けてしまいます。
別にお腹がすいていたのでもないのですが、山寺名物の「力こんにゃく」が目に入ったのです。
事前の情報から、是非食べてみたいひとつだったのです。

球状のこんにゃくがぎっしり入った鍋から、こんにゃくを取り出し串に刺してもらいます。
1本100円という手軽さ、そして何よりの低カロリーということで安心して食べれます。
「力こんにゃく」を食して、今度こそ出発です。
 やがて右手に「姥堂」、左手に「笠岩」があります。
「姥堂」とは、下が地獄で、ここから上が極楽の浄土口を示します。
石清水で身を清め古い衣服は堂内の奪衣姥に奉納し、新しい着物に着替えて極楽へ向かうところなのです。
1段1段と石段を登ることにより、欲望や汚れを消滅させるという言い伝えがあります。

 やがて階段が狭くなくところが、「四寸道」です。
そして「せみ塚」に出ます。
芭蕉の「閑さや岩にしみ入る蝉の声」の句が書かれた短冊をこの地に埋めて石の塚を立てたことから、「せみ塚」と呼ばれています。
「せみ塚」の後方には、頭上高くそびえる壮大な岩の姿を見ることができます。

 道は「弥陀洞」に差し掛かります。
「弥陀洞」とは、直立した岩に阿弥陀如来の姿を掘り出したもので、1丈5寸(約4.8m)もの巨大な岩です。
その先には「仁王門」があり、門を潜ってその先を急ぎます。
1848年に再建されたけやき材で組まれた門で、両側の仁王尊像が睨みを利かせています。

 ここからも石段は続きます。
観明院、性相院、中性院と続き、頂点の「奥の院」にやっとたどり着くことができました。
もう膝はかくかくで、いうことを聞きません。
「奥の院」は、慈覚大師が中国で修行中に持ち歩いた釈迦如来と多宝如来を本尊とする如法堂です。
その左側には「大仏殿」があり、山頂まで登り切った人が参拝していきます。
5mもの金色の阿弥陀如来像が、安置されています。

 帰りは「開山堂」に寄っていきます。
「開山堂」は立石寺を開いた慈覚大師のお堂で、木造の尊像が安置されています。
その横の岩の上にたたずむ小さな赤いお堂は、写経を納める「納経堂」です。
山寺の写真として必ず掲載されるのが、この「納経堂」の写真ではないでしょうか。

 すべての荷物を背負い、雨のため急いで登ってきたからなのか、ふくらはぎがつる寸前です。
足を延ばしながら、この先の「五大堂」への石段を登ります。
「五大堂」は、いわゆる展望台なのです。
ここで下界を眺めていると、これまで降り続いていた雨がすっと止み、雲が切れて山寺界隈を一望できることができたのです。
まさに願いが届いたような気分です。
しばらくここで休み、雲が晴れるのを待って下山することにしました。

 JR山寺駅までの土産物屋では、迷わずソフトクリームを頼みます。
山形産のさくらんぼが入ったアイスは、甘味があって疲れた身体に最適です。
観光バス客がお土産を物色しながらしゃべっているたわいもない会話を、アイスを食べながら聞いて楽しみます。

 土産物屋の外れで、JR山寺駅に続く山寺街道沿いに、「旧山寺ホテル」があります。
木造2階建ての建物は前身を「中島屋」といい、1751年に立石寺により旅籠屋営業が許された時に坊を含めて24件あった宿のひとつです。
2007年までは現役のホテルとして活躍していたのですが、建物の傷みもひどく2012年に「やまがたレトロ館」として生まれ変わりました。
館内には山形県内の大正、昭和の建物の線画が数多く展示されています。
それも無料で解放していることに、ひどく助かります。
おしゃれな建物の線画を見ていて、山形県の発展の歴史を見て取ることができます。
写真ではなく、絵のぬくもりのある筆のタッチが、建物を生き生きと輝かせてくれます。
ぶらりと入った所だったのですが、山寺に来て思ってもみなかった収穫があった「旧山寺ホテル」でした。

 実は駅に荷物を預けようかどうか迷ったあげく、荷物ごと抱えて山寺の石段を登り切ったのでした. これが、この日の夜は膝痛に苦しむことになります。
くれぐれも荷重オーバーにはご注意を。

     
旅の写真館