にっぽんの旅 東北 山形 かみのやま

[旅の日記]

かみのやま温泉 

 温泉の共同浴場と足湯めぐりは、いかがですか。
場所は、かみのやま温泉。山形駅から電車で10分ぐらいの温泉です。
元々山形は、日本有数の温泉地帯。
山形蔵王、天童、銀山、赤倉、寒河江温泉、赤湯、小野川、湯野浜温泉、湯田川など、ここに挙げたのはその半分ぐらいでしょうか。
そんななかの、かみのやま温泉です。
会津の東山、庄内の湯野浜と並んで、奥羽三楽郷と称される温泉です。
おおむね塩化物泉(ナトリウム塩化物・硫酸塩泉)が成分で、神経痛・創傷・皮膚病等に効能があると言わいます。

 それでは、早速温泉に浸かってみましょう。
JRかみのやま温泉駅から西に進み、新湯通りのアーケードを潜って行きます。
温泉まんじゅうの湯気が勢いよく上がっている以外は、朝6時の温泉街はひっそりしています。
ぼちぼち仕事に掛かろうとしているのは、朝市のおばちゃんぐらいです。

 朝市の向かい側には、新湯の足湯場があります。
しかし今回は、その先の共同風呂「澤の湯」に向かいます。
民家脇の細い路地の入り組んだところに銭湯はありますが、案内板があるので迷うことはありません。
入浴料と洗髪料の合わせて250円を払い、洗髪用シャワーの水道栓をもらいます。
時間が早いだけあって、湯舟にはまだ誰もいません。
湯気がこもる浴室は、自分一人で占有です。
少し熱めの湯に身を沈めて、旅で疲れた身体をゆっくりとほぐします。

 温泉で力を蓄えた後は、近くの春雨庵に向かいます。
ここは沢庵和尚が上山で暮らした場所です。
京都大徳寺にいた沢庵和尚でしたが、1629年の紫衣事件で抗議したために、江戸幕府と対立しこの地に流されてきます。
沢庵は、禅道、詩歌、築庭を通して上山の城下町の発展に尽くします。
そして、ここを春雨庵を名付けたのでした。

 この近くには、「栗川稲荷神社」もあります。
1697年に備中国庭瀬の城主であった松平信通公が出羽の国上山の城主に赴任となり、そのときに自らが信仰していた稲荷を持ってきたのが由来です。
「伏見稲荷」を思わせるような幾重にも建てられた赤鳥居を潜り登っていくと、両側を狐の像に守られた神社本殿があります。
それよりもその横の真っ赤な社屋と、節目だらけのごつごつした赤い柱で吊られた鐘ならぬ鈴の方が印象的です。

 新湯の足湯まで戻り、一路北に向かいます。
そこには、武家屋敷が残されている場所があります。
今でも4軒が軒を並べており、1軒は内部まで観ることが許されています。
他の家も人が住んでいるのですが、庭だけは観せてもらえます。
わらぶき屋根の姿を今に残し、保存されています。
ふと道路を見ると、マンホールのふたの絵柄がかわいかったので、思わずカメラを向けてしまいました。

 武家屋敷の道向かいには、「明新館跡」の石碑が立っています。
これは、いまでいう学校に当たるところです。
1809年に上山藩松平信行が、儒学を重んじ家臣に命じて学問所を建設したのが始まりと言われています。
いまでは、当時を偲ばせるものはなく、石碑の文字でこの場所を知るだけとなりました。

 湯町共同浴場を越え、温泉街へ入ります。
湯町の足湯場には、かみのやま温泉発祥の地である「鶴の休石」があります。
脛に傷を負った鶴が足を湯に浸し、治癒して飛び立ったことから温泉を発見したとの伝えがあります。
そしてその横には飲泉所もあり、温泉を飲むこともできます。

 温泉街をぶらぶら歩いてみます。
松本屋という昔ながらの旅館を見付けました。
今回は泊まりませんが、今後来るときは松本屋と「下大湯」の共同浴場巡りでしょうか。
もっと足を延ばせば新丁鶴の湯もあるのですが、上山城を目指します。

 丘の上にたたずむ上山城は、最上氏の最南端の城塞で、伊達氏や上杉氏との攻防の舞台ともなりました。
壮麗な城郭は「羽州の名城」として広く知れ渡っています。
幕府により1873年取り壊され、堀跡や石垣が残るのみでしたが、1982年に再建され現在は郷土歴史資料館として利用されています。

 上山城から三島神社の前を下り、目印の櫓のあるところが、かみのやま温泉のメインストリートです。
「中湯」共同浴場の前を通る道路ですが、「中湯」とは逆の方向に進みます。
実はその先に映画「おくりびと」のロケ地があるからです。
主人公小林大悟はチェロ奏者で、彼の属している楽団が解散してしまいます。
大悟このとき故郷に戻ってくるのですが、そこがコンチェルトです。
そのあとに納棺士の人生を選ぶことになるのですが。
実は国際線に飛行機の中で、座席にあるスクリーンでこの映画を見ていたのですが、涙が止まらなくで困った思い出があります。
他の乗客には、なぜ涙しているのかすら判らなかったことでしょうが。
コンチェルトはスナック和として、実際に営業をしていました。

 近くには「二日町ふれあいの湯」という共同浴場もあります。
もうお風呂は結構と最後に選んだのは、かみのやま温泉駅に向かう途中の「前川」の足湯です。
バス道路沿いに面していますが、バスからの人目にひるむこともなく誰が入ってくるでもなく、私一人の贅沢な足湯となり歩き疲れた疲れをほぐしてくれたのでした。

 その日はかみのやまに泊まり、翌朝一番に外湯を巡ります。
沢庵和尚が身体を癒したと言われる「下大湯」に向かいます。
ここは、かみのやまで一番大きくそして最も歴史の古い銭湯なのです。
6:00からの開館だというのに、10分前には既に先約おり入浴しています。
洗髪を申し入れ追加料金の100円を払うと、30cmほどの大きな札の付いた水道栓の蛇口が渡されます。
それを洗い場まで運び栓をひねるのですが、冷水、温水の2つの蛇口を1つの栓でまかなうため、交互に忙しく付け替えて使わなければなりません。
そんなことはあるものの、熱めの湯で大きな浴槽にゆっくりと浸かり朝から気持ちの良い思いをしたのでした。

 そして「下大湯」の隣の高台にはには「愛宕神社」もあります。
ずーっと温泉三昧のかみのやまだったのでした。


   

 
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