にっぽんの旅 東北 宮城 蔵王

[旅の日記]

蔵王の御釜 

 宮城県と山形県にまたがる蔵王連峰、夏の蔵王にやってきました。
山形側の「かみのやま温泉」からは、無料のマイクロバスが出ています。
乗るなり運転手が「本当に行くの? 山頂は霧で何も見えないよ」と言われてしまいます。
せっかく来たのに、このまま引き下がるわけにはいきません。
同じような客が他にも2名、強行軍を乗せたバスは山に向かって走り出します。

 7月で30度を超える気温なのに、何故かバスには暖房が入っています。
半袖シャツ1枚の自分と比べ、よく見ると誰もが長袖のシャツを重ね着しています。
嫌な予感が漂ってきました。
バスは大きなエンジン音をあげながら、坂道を登り続けます。
次第に気温が下がり始め、終点の苅田駐車場に着いた時には、出発から20度近い温度差があったのでした。
「しっかり着込んで行っておいで」と言われ、バスを降ります。

 ここから先は、リフトに乗って山頂に向かいます。
「苅田リフト」の乗り場の小屋で、リックから着替えの半そでシャツを引き出して2枚重ねで着込みます。
さらには売店で売っていたカッパをかぶって、準備完了です。
往復切符を買ってリフトに乗り込むことにします。

 霧の中を進むリフトは、ガスのために少し先は真っ白で何も見えません。
途中、宮城県から山形県の県境を越えて行きます。
ガスに加えて雨も降りだします。
こんなときでも、どこからともなく鳥のさえずる声が響いてきます。
晴れてさえいれば、さぞかしすがすがしく気持ちの良いことなのでしょう。

 山頂駅からは尾根伝いを歩いて行きます。
この辺りは、また宮城県です。
遊歩道が備わっているので、寒ささえ克服すれば安全に散策することができます。
しかし今日は雨、至る所にできた水たまりを避けながら、前に進んで行きます。
10分ほど歩いたことでしょうか、「御釜」の展望台があります。
本来はこの先にエメラルドグリーンに輝く火口湖の「御釜」が見えることでしょう。
今日は真っ白で何も見えませんが、依然に見た時の美しい「御釜」の写真を掲載しておきます。
「御釜」は1182年の噴火により誕生した湖で、光の反射により五色の光を放つことから「五色沼」とも呼ばれています。
湖は酸性で、動植物は生息していない神秘的な場所です。

 「御釜」の隣には「蔵王山頂レストハウス」があり、ここで霧が晴れるのを待ちます。
中の売店では、宮城県でも山形県でもなんでも来いで、両県の名産品が売られています。
ここで「さくらんぼアイス」を食べみることにします。
ピンク色のさくらんぼが入ったクリームは甘く美味しいもので、口の中に甘味が広がります。
でも気になるのは外の天気。
せめて一瞬でも霧が晴れてくれれば、と思ったものの一向に晴れる気配がありません。
山頂は霧が立ち込めることがしばしばで、4回来て1日晴れるくらいだと聞いて納得します。
諦めて先ほどやって来たリフト乗り場に向かい、下山します。

 寒さをこらえながらリフトで下駅に着くと、「ひょっとして白石駅に行くのはない? バスの乗り場は山頂からだよ」と教えてくれるのです。
そう、「かみのやま温泉」から乗ったバスの運転手と話した白石行きのことがリフト乗り場にも伝わっていて、親切にも声を掛けてくれたのでした。
片道のリフト代をサービスしてもらい、寒さと戦いながら再び山頂に向かいます。
時間に余裕をもって出てきたのが幸いして、1日2本しか走っていないバスには間に合いそうです。
山頂に降り立ち、見慣れた「蔵王山頂レストハウス」へ進みます。
ここからは1時間30分かけて、路線バスで白石に向ったのでした。

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