にっぽんの旅 東北 宮城 白石

[旅の日記]

白石うーめん 

 宮城県の白石、この白石駅に来ています。
JR東北本線の仙台まで1時間の場所にあり、鎌倉時代から室町時代までは豪族 白石氏が支配していた地域です。

 白石に来て、食べたいものがあります。
「温麺(うーめん)」なる食べ物があると聞いて、訪れた時には是非口にしたかったものです。
出てきたつけ麺は、そうめんかと思うような白くて細い麺です。
食べてみても、そうめんとの違いが判りません。
店にうーめんの案内書きがありそれによると、一般的なそうめんは生地を延ばす際に乾燥を防ぐために油を塗るのですが、うーめんはそれを用いないということです。
そのためさっぱりしているそうですが、そうめん自体さっぱりしていると思っているので、うーめんのありがたさが今ひとつ判らないのが正直なところです。
そうめんにしても、うーめんであっても、夏の暑い時期にあっさしとして食べやすいことは確かです。

 腹を満たし「白石城」の方向に足を進めます。
やがて現れるのが「壽丸(すまる)屋敷」です。
ここは紙問屋や雑貨商などを営んでいた豪商 渡辺家の町屋です。
1923年に建てられた母屋と、店蔵となっていた土蔵造は明治中期の作品です。
2階建切妻平入りの建物は、中を見学することができます。
和室の高い天井は壁の上部にも窓が設けられており、光を取り入れることができます。
続きの和室と縁側の和風の造りです。

 さらに西に進みましょう。
市役所の敷地内を突き切り、「白石城」に向かいます。
「白石城」への登り口には「白石城歴史探訪ミュージアム」があり、そこでは明治維新のときに明治新政府軍に立ち向かう「羽越列藩同盟」の話が3D映画で上映されます。
次の上映時刻まで少し時間がありますので、先に「白石城」を見に行くことにします。

 「白石城」は、後三年の役で戦功を成した刈田左兵衛尉経元が白石の地に築城したのが始まりです。
その後は白石氏、伊達氏などが支配した後、1591年には豊臣秀吉がこの地方を没収して会津若松城とともに蒲生氏郷に与えます。
蒲生源左衛門郷成が、白石城の城主となります。
さらに1598年にこの地が上杉領となると、上杉氏家臣の海甘糟備後守は白石城の再構築を行い入城します。
1600年の関ヶ原合戦の直前には伊達政宗が白石城を攻略し、再びこの地を伊達領として石川大和昭光が城主となります。
しかしその後は、伊達氏家臣の片倉小十郎が城主となり城の大改修を行います。
それ以降260年の間、幕末まで片倉氏が居城することになったのでした。

 1615年に江戸幕府により発せられた一国一城令では大名の居城を残して各藩の持つ城は破却されますが、仙台の伊達家は領地の南を守る「白石城」を特別に残すことを許されます。
そこで「白石城」では天守のことを「大櫓」と呼び、城の扱いにはしていないのです。

明治維新の戊辰戦争の際に、薩長連合に対抗するための「奧羽越列藩同盟」が結ばれたのも「白石城」であり、歴史を刻む大切な存在だったのです。

 それでは、その「白石城」をもっと知るために、「白石城歴史探訪ミュージアム」に戻りましょう。
2階には当時の城内の暮らしぶりや、平成の城郭復元の様子が展示されています。
そして3階では「奧羽越列藩同盟」の3Dビジョンを他に客もなく、自分だけの独り占めで見ることができたのでした。

 城内には「神明社」という神社があります。
807年に坂上田村麻呂が創建したと伝えられる神社で、藤原秀衡、蒲生氏郷、上杉景勝などの領主によって庇護されてきました。
伊達政宗が白石城を攻め落とした際、その先鋒だった片倉小十郎に正宗は白石の地を与えます。
「神明社」は「白石城」の鎮守、そして片倉家の崇敬社となり、片倉家の手で社殿の造営や修復が行われてきました。
白石大火で焼失した社殿ですが、現在のものは1935年に改築したもので、山門には伊勢神宮の第60式年遷宮で解体された内玉垣御門の一部が移設されています。

 それではここから武家屋敷に向かいましょう。
城の堀伝いに歩いて行きます。
小川である「沢端川」に玄関を向けた藁葺きの屋敷があります。
目の前の川には清流でしか花をつけない梅花藻が、水の流れになびいています。
鯉も泳ぐ綺麗な川です。
建物は「旧小関家」で、1761年の白石城下絵図では「小関右衛門七」とあります。
この辺りは中級家中の屋敷が並び、茶の間、なかま、納戸、そして台所から成る建物です。

 この近くには「商家資料館」もあります。
古い商家を改修した建物の内部は、資料の展示と特産品の紹介がされています。

 さらに歩いてほどなくした消防署の片隅に、「うーめん発祥の地」の碑が建っています。
先ほど頂いたうーめんですが、江戸時代に大畑屋鈴木浅右衛門が胃腸の弱い父親のために、旅の僧に教わった油を使わない麺の製法を会得したものと伝えられています。
まさにこの場所が、白石の特産品となったうーめんが生まれた場所なのです。

 先を進むと、今度は「上下水道事業所」があります。
水道らしく、入り口には小便小僧が飾られています。
単なる公共の施設と言えばそれまでですが、なめこ壁の蔵をイメージした姿は目を引きます。

 「白石 人形の蔵」があります。
東北に残る江戸時代の土人形などの人形、玩具が収蔵、展示されています。
昔の駄菓子屋を思い出させるような内部は、懐かしさを思い出させてくれる空間です。

 ここから「沢端川」を越えて、白石駅に戻ります。
川に架かる橋の欄干にはこけしが飾られています。
こけしは、この地方のもうひとつの名産品なのです。

 その先には「蔵王酒造展示館」があります。
1873年創業の造り酒屋で、酒蔵の見学ができ試飲も可能です。
ところが当日は休館日で、中の様子すら見ることができません。
後で判ったのですが、酒蔵見学をするには予め予約が必要だったようです。
いずれにせよ、今回は町の酒屋で酒「蔵王」を選ぶことにします。

 城下町の姿を今に残し、東北の静かな街並みを探索できた白石でした。

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