にっぽんの旅 東北 宮城 石巻

[旅の日記]

チョビンもサイボーグ009も 石巻 

 宮城県の港町、石巻に来ています。
仙台からの普通電車でも、1時間半で行くことのできる場所です。
「ロボコン」のラッピングがなされた仙石線の電車に乗ってやってきました。
そう石巻は「ロボコン」を始めとする石ノ森章太郎の記念館「石ノ森萬画館」があるからです。

 石巻駅に着くとサイボーグになり切った女性の隊員がチラシを配っています。
漫画「サイボーグ009」に搭乗するサイボーグ003 フランソワーズ・アルヌールでしょうか。
「サイボーグ009」は、ブラック・ゴースト(黒い幽霊団)という兵器の製造・販売を行う組織が、きたるべき未来戦用にサイボーグ兵士の計画を進めていた。
太平洋の孤島 エックスポイントでは、世界各地から集められた9人の実験体が改造されていました。
これがサイボーグ001から009までの9体です。
日本から連れて来られた島村ジョーは、目覚めたときに襲いかかってきた巨人ロボットを倒し、他の8人からブラック・ゴーストが抱く悪の計画を知らされ皆で秘密基地を脱出します。
9人のサイボーグを連れ戻そうと、戦闘機、戦艦、ロボットを投入するエックスポイントに立ち向かうサイボーグ9人の物語です。

 駅構内には、「サイボーグ009」や「仮面ライダー」の像がお出迎えしてくれます。
駅を出ると、モダンな駅舎入口の横や上にも「サイボーグ009」がいます。
もうこの町は、石ノ森章太郎で一色です。

 それでは「いしのまきマンガロード」を西に向かって歩いて行きます。
道の両脇には石ノ森章太郎の漫画のキャラクタが点在しています。
お堅いはずの市役所の入り口には「仮面ライダー」が待っています。
緑の身体は「仮面ライダーV3」ではないでしょうか。
交差点には「サイボーグ009」がもちろん立っています。
さらに歩いて行くと「ゴレンジャー」が、そして路地に入ると「ロボコン」がいます。
その先には可愛らしい「星の子チョビン」が、さらに向こうには「さるとびエッチャン」でしょうか。
子供のころに観た懐かしい漫画よみがえってきます。

   

   

 キャラクタを追いかけて行くと「旧北上川」に出てきます。
そして川の中州には丸い見たことのない形をした建物があります。
未来の姿をしたこの建物が「石ノ森萬画館」です。
館内では石ノ森漫画のキャラクタ、そして漫画のできるまでのキャラクタの紹介はされています。
また映写室では、石ノ森漫画が勢揃いした独自の漫画が上映されています。
少し童心に帰ることができる一瞬です。

 「石ノ森萬画館」を堪能したあとは、石巻の町を歩きます。
東日本大震災では津波により甚大な被害を受けた石巻ですが、仮設橋が残っていたり護岸修復の工事中であったり、他の湾岸地域と同様に復興に全力を注いでいる最中です。

 そんな中、外壁一面が様々な種類のタイルで覆われた「観慶丸商店」があります。
天保年間創業の「観慶丸商店」の初代の須田幸助は、元は千石船の船頭だったのですが、やがて陶器を扱い商業にも手を出してきました。
その後は様々な商品を手掛けるようになり、豪商としての地位を築いて行きます。
そして1930年には、石巻初となるこの百貨店を建てたのです。
3階建てですが木造の造りで、東日本大震災にも持ちこたえる頑丈なものでした。
角を曲線に加工し半円形の欄間や丸窓をもつ洋風建築の姿を今に残しています。

 その道向かいには「旧東北実業銀行石巻支店」があります。
1925年に建てられた3階建ての近代建築です。
重厚な印象を受けるこの建物は、1階は出入り口を張出し、2階以上は窓の上部を半円形にして、その両脇に円柱が通る意匠になっています。

 「観慶丸商店」と「旧東北実業銀行石巻支店」の間の道を北に進むと、ほどなく教会が見えてきます。
「旧石巻ハリストス正教会教会堂」で、現存する木造教会堂としては日本最古のものです。
ビサンチン式ドームを、和風建築である八角形の円堂の建築手法で表現しています。
戊辰戦争に参加した勝又cが、東京で正教会の洗礼を受けます。
1872年に帰郷し友人などに信仰を布教したことが、石巻における正教会の始まりです。

 最後にどうしても寄りたいところがあります。
小さな食堂なのですが、ここで注文したのは「石巻焼きそば」です。
出来てきたときは「ソースをかけて食べてください」と言われます。
「なに? ソースがかかっているのじゃないの」と言いたくなるような茶色の麺をしています。
何の変哲もない焼きそばのようですが、実はソースをかけていないのに麺自体が茶色い色をしているのです。
石巻の焼きそばになるには、4つの条件があるのです。
1つ目の、二度蒸した生麺を用いることが、蒸したために麺が茶色くなる理由です。
さらには焼き上げ時にだし汁を加えて蒸し焼きにすることも、さらに麺に色を付けます。
3つ目の条件は、目玉焼きがトッピングされることです。
そして最後に、4.食べる直前にソースをかけるのことが、食堂のおばちゃんがソースを進めた訳です。
なるほど、テーブルには「焼きそばの出汁」と書かれたソース入れが準備されています。
焼きそばはこれらの工程を経て、ふっくらしたように思えてきます。
半熟の目玉焼きをつぶして、黄味をからめながら食べるのは実に美味しいものです。

 さあ、漫画に暮れた石巻。
そして震災にも負けずに残った古い建物、それにB級グルメながら庶民的で美味しい焼きそば。
それも心に残る思い出となりそうです。
仙台までの帰りは、東北本線経由の快速に乗って1時間の速攻でホテルに戻ることになりました。

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