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[旅の日記]

蟹田と青函トンネル 

 蟹田と言う町をご存知でしょうか。
青森駅からJR津軽線に乗り、青函トンネルを渡る列車が本州最後に停まる駅です。
そんな珍しさもあって、JR蟹田駅に降り立ったのです。

 ホームの標識には、しっかりと「北緯40度」の文字が示されています。
磯の香りが漂うこの駅を、出てみましょう。
駅舎の前には、灯台を模った時計が建っています。
それ以外で見えるのは駅の休憩所と駅前市場の「ウェル蟹」ぐらいです。
静まり返った駅前です。

 それでは唯一目に入った「ウェル蟹」を訪れてみます。
市場と言えば複数の店で構成されているように思いますが、ここは1部屋だけでコンビニのような造りです。
日用品やこの地方で採れた海産物が並んでいます。
水が流れる水槽には、ホタテがびっしり並んでします。
店の片隅では、簡単な食事もできそうです。
ホタテは食べたいが生の貝を手に入れてもどうしようもないので、仕方なく買うこともせずに外に出ます。

 駅前通りはすぐに海岸線にぶつかり、そこから海岸線に沿って進む松前街道を歩いてみます。
宿と食堂があるだけの通りです。
外ヶ浜に下りて、青森湾・陸奥湾が下北半島と津軽半島に挟まれる平舘海峡にほど近い海を眺めてみます。
湾内と言ってもはるか遠くに対岸があり、水平線しか見ることができません。
どんよりと雲のたちこめたあいにくの天気でしたが、荒々しい海を感じることができます。
浜には打ち寄せられたホタテの貝殻が並んでいます。

 近くには「八幡宮」もあります。
真っ赤な鳥居が目印です。
しばらくブラブラしたのですが、電車の時間が来ましたので、そそくさと駅に戻ることにします。

 駅に戻ったのにも、訳があります。
これから青函トンネルを通って、北海道に渡るのです。
以前に青森・北海道を旅したのはン十年前で、まだ青函連絡船が走っていた時ですから、海底を通るのは初めてでワクワクします。
それに加えて、ここ青森の蟹田と北海道の木古内間は、乗車券だけで特急電車に乗れる特殊な区間です。
つまり特急券を購入する必要がないのです。

 やがて特急白鳥は来ました。
乗車券だけで乗ることができるのは、自由席だけです。
連休の中日だったので電車が混んでいないか心配だったのですが、電車で移動する客がいないのか車内に人はまばらです。
特急電車は、快適に蟹田駅を走り出します。
やがて開通する北海道新幹線の線路と合流しますが、狭起動の在来線と広軌道の新幹線が同じ線路を走るために3本のレールが敷かれていることを見ることができます。
青函トンネル内は、在来線も新幹線も同じところを走るのです。
そういえば、秋田新幹線でも同じような光景を見て、驚いたものです。

 いくつかのトンネルを抜けて、いよいよ青函トンネルに入ります。
140mの水深の津軽海峡のさらに100m下を、電車は進んで行きます。
トンネルの入り口から出口までの54kmを、約30分間の暗闇の世界です。
以前は見学用にあった竜飛海底駅、吉岡海底駅の2つのトンネル内の駅も今は閉鎖され、ひたすら電車は走ります。
さすがに連絡船とは違って、あっという間に北海道に抜けてしまったのでした。

 わずか1駅だけの小旅行、それも乗車券1枚で実現できる楽しさにまたしても心を動かされ、こうして来る羽目になってしまったのでした。

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