にっぽんの旅 東北 秋田 角館

[旅の日記]

角館武家屋敷 

 今回は、秋田県の角館の散策です。
角館と言えば、武家屋敷が残り。「みちのくの小京都」とも呼ばれているところです。
その角館を、ゆっくり回ります。

 角館には、大曲からJR田沢湖線で向かいます。
JR田沢湖線はローカル線ながらレールの幅が広い標準軌を採用した珍しい路線です。
標準軌にしたのは、この路線を秋田新幹線が走るからで、1996年には1年間営業を停止し軌道を広げる工事を行いました。

 また角館は、秋田内陸縦貫鉄道の終着駅でもあります。
車両ごとに色の異なる電車が、走っています。
ちょうど大曲からの電車が角館駅に到着したとき、鷹巣行の急行が発車しようとしていたところでした。
この列車にも後ろ髪をひかれながら、まずは角館の街を見て回ります。

 駅の西側1kmほどのところに、「西宮家」はあります。
黒い塀で囲まれた中に、5つの蔵と母屋をもつ建物があります。
先祖は佐竹氏の家臣で、明治に入ってからは西宮藤剛が町長を3度務め、角館の発展に寄与してきました。
明治後期から大正時代にかけては、地主として西宮家は最も繁栄したときでした。
今は外観とは違い、モダンなレストランとして利用されています。

 「西宮家」から南に下り、角を西に進んだところには、「安藤醸造元」があります。
「上」の文字が書かれたのれんが目印です。
地主として角館に住んでいた安藤家は、小作米として入ってくる米の一部を原料として味噌や醤油を醸造していました。
木造の多いのこの町で、レンガ造蔵座敷がひときわ目に着きます。
当時この町は度々の大火に見舞われていました。
そこで明治時代中期に座敷を火災から守ろうとして、外装をレンガ造りに造り替えたものです。
内部は無料で公開されており、本職の麹、味噌、醤油の販売も行われています。

 ここから北上し、一気に武家屋敷に進みましょう。
角館庁舎の斜め向かいに、「櫓」の文字の入った建物があります。
調べてみて判ったのですが、どうやら焼き鳥屋さんのようです。
てっきり歴史のある建物かと思ったのですが、どうなんでしょうか。

 さてここからが、武家屋敷の始まりです。
関ヶ原の合戦後、戸沢氏が常陸多賀郡へ転封されたのと入れ替わりに、佐竹氏が秋田へ入部し久保田藩領となります。
1603年には佐竹義宣の実弟にあたる蘆名義勝が所預(ところあずかり)として角館に入ってきました。
当時の角館の城下町は、角館城の築かれていた小松山(現古城山)の北側の麓にあったのですが、度重なる水害や火災に見舞われたことから、1620年に現在の古城山の南麓へ町全体を移転しました。
新しい城下町では、道路の幅員を広げ、下水を整備し、防火対策を施します。
そして武家地、町人地、寺社を配置したのでした。

 そんな多くの武家屋敷が残る角館ですが、その中でも主だったことろを紹介しましょう。
武家屋敷資料館の入口にあるのが、「古泉洞」という名のそば屋さんです。
寺子屋を改装して作られたということで、軒下の木彫りの飾りは見事です。

 柴田家は非公開の建物ですが、門の姿を見て足が止まりました。
苔の蒸した門の屋根は、雨上がりの武家屋敷に鮮やかな緑を放っています。

 松本家は、今宮家組下の家柄で、佐竹氏国替えとともに秋田へやってきました。
柴垣で囲まれた屋敷は、武家の面影を残した茅葺き屋根が特徴的です。

 岩橋家は、芦名氏の重臣で、芦名氏が絶えた後は佐竹北家に仕えた家柄です。
屋敷は江戸時代末期の改造で、茅葺き屋根から現在の木羽葺きに変えられました。
角館の中級武士の屋敷としての、典型的な間取りを残しています。

 青柳家は、芦名氏の家臣団の優力な武将でしたが、芦名氏が絶えた後は佐竹北家に仕えました。
屋敷は広く敷地の入口に薬医門、道沿いには武者窓とよばれるのぞき窓のついた造りになっています。
公開されていますので、建物内部を見学することができます。

 石黒家は、角館に全存する最古の武家屋敷です。
佐竹北家に仕え、財政関係の役職についていました。
茅葺き屋根の母屋とのぞき窓のついた黒板塀、正玄関と脇玄関を備えて武家の高い格式を示しながら簡素なただずまいとなっています。
角館の武家屋敷の中で、格式が一番高い家柄の屋敷です。
少し中を覗いてみましょう。
部屋の中央には囲炉裏があり、寒い冬を凌いでいました。
欄間に彫られた亀の姿は、隣の部屋から洩れる陽の影が壁に透かして映るように配置されています。
また奥の座敷からは、庭園が一望できます。

 「角館樺細伝承館」では、桜皮細工の茶筒や整理箱、雑貨などが展示されています。
桜の皮をなめすことにより出てくる、飴色に透き通る光沢と味わい深い渋みが特徴です。
その魅力にはまってしまい、高いものは買えないので靴べらを買ってしまいました。
自分へのお土産にします。

 「角館樺細伝承館」から西に歩き檜木内川脇の駐車場では、さくらソフトがあります。
ピンク色に染まったソフトクリームは、口の中に甘さが広がりお薦めの一品です。

 角館は小さな町ですが、さすがに歩き疲れてしまいました。
そんなこともあると、入浴用のタオルを荷物に忍ばしてきたのです。
「かくのだて温泉」は、手軽に入ることのできる銭湯です。
タイル張りの浴槽の真ん中には、何故だか判りませんが大きな岩があります。
湯舟に出たり入ったりして、温泉を楽しみます。

 さて、風呂にも入り待望の食事です。
その前に、風呂上がりの地ビールを頂くことにします。
「角館麦酒」は黒ビールで、手作りのゴマ豆腐が合います。
ゴマの風味いっぱいのゴマ豆腐は、ぶらりと入った店にしては大成功です。
たけのこの和え物が合ったりしてビールが進みます。
そして最後には、今回食べ残していた比内地鶏の親子丼で、角館の締めくくりとしました。

 JR角館駅に着くと、秋田新幹線スーパーこまちが出迎えてくれました。
江戸時代にタイムトリップした1日でした。

     
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