にっぽんの旅 東北 秋田 秋田

[旅の日記]

秋田 

 本日は、秋田の街を歩いてみます。
秋田新幹線「こまち」も通り、東北の日本海側でありながら手軽に訪れることのできるところになりました。
ところが本日利用したのは在来線の鈍行電車、米どころ秋田の田んぼをのんびりと眺めながら、奥羽本線に揺られてやってきました。
通常は新幹線も在来線も同じ線路を走るのですが、大曲駅では「こまち」だけが隣の新幹線専用ホームです。
ここで新幹線にはめずらしいスイッチバック、つまり進行方向を入れ替えるのです。
もうひとつ、今回在来線を利用したが故の発見がありました。
新幹線と在来線が同じ線路を走るために、広軌道用の新幹線と狭軌道用の在来線とで3本のレールが敷かれているのです。
これは運転席に入れない新幹線では、決して見ることのできない風景でしょう。

 鉄ちゃんではないのだけれど、果てしなく鉄道が気になりながらも、鈍行電車は秋田駅に到着しました。
さすが新幹線の駅でもある秋田駅は、大きくて立派な駅です。
ここからは、まずは「千秋公園」を目指します。
「千秋公園」は、久保田藩主佐竹氏が城主を務めた久保田城の跡地です。
佐竹家は室町時代から続く常陸守護の家柄でしたが、関ヶ原の合戦で反徳川を掲げ、その挙動を咎められて出羽国(後の羽後国)へ移封されました。
常陸水戸54万石から秋田に転封を命じられ、約20万石に格下げになります。
さらには、権力を持たないようにと、天守の築城も制限ざれてしまいます。
そんな中、1604年に久保田城は完成し、城を中心に城下町が発展していったのです。

 黒門跡を通り城への坂を登って行くと最初に二ノ丸跡が、その先の長坂門跡を進むと今度は「一ノ門」が見えてきます。
「一ノ門」の脇には、城へ続く門の開閉と城下一帯の警備を担当する「御物頭御番所」が、今も残っています。
木造二階建瓦葺櫓門である「一ノ門」をくぐって、城内に入ってみましょう。
かつてはここに本丸御殿があったのですが、今では佐竹義尭公の銅像が建っているのみです。
静かな公園の中では、数羽のカラスがわがもの顔で、のっそりのっそりと飛び跳ねています。
敷地内には「八幡秋田神社」「弥高神社」などがあります。
敷地の外側を歩き、「多門長屋跡」を過ぎ「一ノ門」の対面にある「御隅櫓」を目指します。
「御隅櫓」は場内に8つあった櫓のひとつで、本丸の北西の最も高い場所に場所に建てられており、物見や武具の貯蔵庫として使用されました。
1989年に復元された建物は、内部を見学することができます。

 「千秋公園」を出て、広小路の向かい側歩道に居るのが、ご当地キャラクターの「与次郎」です。
「与次郎駅伝」の主催者でもある愛嬌たっぷりの狐なのです。

 ここから西に進路をとります。
旭川に架かる通町橋を渡ると、そこに「秋田民俗芸能伝承館」があります。
「秋田民俗芸能伝承館」のまたの名を「ねぶり流し館」といい、建物に入ってすぐのところに「秋田竿燈祭り」の竿燈が飾られています。
秋の豊作を祈願する「秋田竿燈祭り」では、提灯を括り付けた竿を手や額、肩などに乗せてバランスを取りながら街を練り歩くのです。
旧暦の七夕の行事で、本当は8月の祭りの時期に訪れたかったのですが、日程が合わず今回は7月の訪問となってしまいました。
ここで祭りに参加したかの如く、「秋田竿燈祭り」を味わっていきます。
祭り当日は、夜に提灯に灯がともり神秘的で壮大な提灯が動く様は、夏の秋田の風物詩になっています。
「秋田民俗芸能伝承館」には、大小さまざまの提灯が展示してありますが、大若ともなると、重さ50kg、長さ12m、提灯の数は46個にも及びます。
そしてここでは、竿燈の持ち方を教えてもらい、実際に竿燈を持つこともできるのです。
訪れた時にも、1組の家族がふらふらしながら竿燈を抱えていたのでした。

 「秋田民俗芸能伝承館」の横には、「旧金子家住宅」が今も残されています。
江戸時代後期に質屋・古着商を開き、明治初期には呉服・太物卸商を営んでいた豪商 金子家の住まいです。
主屋の中には黒漆喰の土蔵が、一体となって構成されています。
屋根の上には、防火用の水を貯めた桶が配置されており、日本人の生活の工夫が見て取れます。

 ここから旭川に沿って、南下していきます。
「旧金子家住宅」から2筋を越えたところに、「赤レンガ郷土館」があります。
ここは旧秋田銀行本店として、1909年着工したものです。
明治期のエンジ色が眩しいレンガ造りの洋風建築で、中に入ると銀行のカウンターとロビーが広がっています。
2階まで吹き抜けになった内部は、天井中央から巨大なシャンデリアが光を放っています。
白い漆喰の天井と内壁が、高級感と上品さをかもしだしています。

 旭川方向に一筋入った「川反通り」では、料理屋や飲み屋が並んでいます。
まだ時間が早いのか、周りはひっそりしています。
今晩の食事はどこで取ろうかと、しばし下調べをするのでした。

 さて、市内循環の100円バスで秋田駅に戻り、「秋田市民市場」に向かいます。
現地の様子を見たいならば、市場に行くことが一番というのが鉄則です。
案の定、新鮮な海産物が所狭しと並んでいます。
とはいえ旅行者の身、生ものを買ったところで困ってしまいますので、目で見て楽しんでいたのでした。

 秋田と言えば、美味しい鍋がたくさんあります。
郷土料理で最初に思い浮かぶのが「きりたんぽ鍋」です。
あきたこまちをすりつぶし、杉の木に巻いて作るのが、秋田名物きりたんぽです。
鍋には、野菜、豆腐をきりたんぽと一緒に炊きます。
出汁をいっぱい吸ったきりたんぽを、崩さないように箸でそっと摘み食べます。
普段はビール大好きの私ですが、この時ばかりは秋田の地酒で鍋を堪能し、すっかり酔ってのホテル帰宅になりました。

 「きりたんぽ」だけが秋田の鍋ではありません。
この地方の魚と言えばハタハタです。
ハタハタを「しょっつる鍋」を食べることにします。
「しょっつる」は「塩魚汁」と書き、魚から採った醤油(魚醤)のことです。
これで出汁を採り、卵をいっぱいはらんだハタハタを白菜、長ネギ、豆腐と一緒に炊いて作ります。
堅くて小さなハタハタの卵の、ある種特殊な食感(プチプチというより、もっと噛みしめなければいけない)を味わいます。
卵に飽きると白身を頂き、ハタハタの背骨しか残りません。

 あと忘れてならないのが、秋田銘菓「金萬」です。
カステラの生地の中に白餡がが入っており、上品な味です。
もちろん、今回も「金萬」をお土産として買って帰ったのでした。

 
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