にっぽんの旅 信越 新潟 小木

[旅の日記]

両津港と朱鷺の森 

 海を渡るということで、これまで行きたくともなかなか腰が重かった佐渡島を、今回訪れることにしました。
新潟港を朝一番の佐渡汽船のフェリーで就航します。
朝が早いということもあって、まだ路線バスも走っていません。
暗い夜道をトボトボと歩いて、フェリー埠頭まで行きます。

 実は佐渡に渡るには、JRのお得きっぷが有効なのです。
JR線はもとより、新潟市内の観光循環バスの1日券、フェリー埠頭までバスの往復、佐渡汽船のフェリーの往復、佐渡島内の路線バスの3日券がセットになっています。
そしてフェリーを使うだけで、全額近しが回収できてしまうのです。
今回はJRに乗る余裕がないにもかかわらず、この切符を購入しその恩恵にあずかることにしました。

 フェリー乗り場に到着した時も夜は明けておらず、真っ暗の中スクリューの展示を見て、佐渡汽船の搭乗口であることを確認します。
出航30分前までの発券には、何とか間に合ったみたいです。
まだ人もまばらな待合のためのベンチで、改札が開始すのを待ちます。

 乗り込んだ「おけさ丸」は、1700人の定員を誇る大型フェリーです。
エントランスだけは、ホテルのロビーのような豪華さです。
ここで2時間半の海の旅です。
朝が早かったのですっかり寝込んでしまい、気付いた時には、佐渡ヶ島が直前に迫っていました。

 着いたのは佐渡ヶ島の両津港です。
しばらくはフェリーから降ろされる車を眺めて、佐渡に来た喜びにひたっています。
それでは、この辺をブラブラしましょう。
バスターミナルから出たところには、この地方の踊りである「佐渡おけさ」の像が建っています。
内陸側に進んでいくと、軒下に魚のヒレのようなものが干されています。
通りでは煮干しを作っていましたから、多分食材なのでしょう。
ひょっとして、これがフカヒレなの?
よくわからないまま、写真だけは撮っておきました。

 市役所の両津支所の裏から、「加茂湖」を臨むことができます。
「加茂湖」は、4.9km2の面積をもつ新潟最大の湖です。
また、日本の離島の中でもっとも面積の大きな湖でもあります。
特に牡蠣の養殖が盛んで、両津港周辺でも牡蠣を使った料理を出してくれる店があるのです。

 再びバスターミナルに戻り、バスに乗って「トキの森公園」に向かいます。
以前は「トキの森公園」へは、最寄りのバス停といえども30分ほどかかって歩く必要があったのですが、訪れた時には田畑の真ん中をバスが突っ走り、公園入口までバスが着くようになっていました。
公園に入ると朱鷺(とき)の姿をした着ぐるみのマスコットが出迎えてくれます。
本当の朱鷺はもっとスマートですが、マスコットの朱鷺はお腹が出て羽が脇腹に付かないほどのかなりの肥満体型です。
ユニークなマスコットを眺めていると、朱鷺が檻の前面に出て来ているので今なら見ることができるとの情報で、大型の飼育ゲージに向かいます。

 飛翔可能な大型ケージでは、既に朱鷺が食事を終えて後ろのねぐらに身を隠そうとしているところでした。
4羽の朱鷺は左右に動きものの、なかなか全身を眺めるレベルではありません。
2階から眺めたり、1階に戻り望遠で眺めたり、20分ぐらい朱鷺との根競べが続きました。
その時です、4羽の朱鷺が一斉に慌てふためきゲージの中を飛び回ることになったのは。
係員が言うには、恐らく上空に見知らぬ鳥が飛来し、それに驚いたのではないかということです。
パニック状態が数分続いた後、木の枝に留まったのでした。
幸か不幸か、おかげで朱鷺を間近に見ることができたのです。
長いしゃくれた口に、目の周りだけが紅くきょとんとした眼で眺めているる様は、正直賢そうには見えません。
愛嬌豊かな朱鷺をしばらくは観察していたのでした。

 その後は朱鷺資料展示館に行き、パネルで紹介されている朱鷺の生態を見ていきます。
朱鷺はペリカンの仲間であること、卵は常に3個しか生まないこと、日本の固有種は絶滅し中国から譲り受けて人工繁殖していることなど、朱鷺の事典ともいうべきところです。
以前は日本を始めロシア、韓国、台湾、中国で、ごくありふれた鳥として生息していましたが、いま見られるのは中国だけです。
日本でも人工繁殖したものを放鳥し、その甲斐があって今では200羽余りが確認されているということです。

 それでは、「トキの森公園」の向かいにある神社を訪れてみましょう。
敷地の囲いがあるでもなく、神社の境内に来てしまったみたいです。
ここ「白山神社」で、弉冉尊(いざなみ)を祭神としています。
両側を狛犬に守られながら、社殿の屋根の中央が前方に張り出す向拝がないところは、佐渡の一般的な様式のようです。
お参りを終え、再び両津に戻ります。

 佐渡でしか食べられないものに、「ながも蕎麦」があります。
ながもと呼ばれる佐渡独特の海藻が入った蕎麦です。
どろっとしたところはモロヘイヤや芽かぶと似たところがあり、食感はプチプチ感があります。
出汁もよく出ていて、佐渡に来たんだなと感じるひとときでした。

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