にっぽんの旅 信越 新潟 村上

[旅の日記]

鮭と生きる村上 

 新潟駅から電車で1時間余り、村上駅に降り立っています。
本日は、鮭で有名な村上の町を散策することにします。

 村上は新潟の最も東に位置する町で、古くは村上藩の城下町として栄えたところです。
今でも武家町、商人町があり当時の面影が残る町です。
さてせっかく村上に来たんですから、村上を有名にした鮭を食べに行きます。
駅前に人気の店があると聞いて、訪れてみます。

 そこは旅館を兼ねたところで、さまざまな鮭の食事を楽しむことができます。
はらこも食べたいし焼き鮭も食べたい、そんな贅沢な悩みを聞いてくれるものがありました。
「鮭ばっかり丼」という名のものです。
大きな丼に入っていますので少なく見えますが、これが結構お腹に溜まるのです。
よく見れば鮭の切り身が乗るくらいのご飯の量ですから、それなりの量があります。

 さて美味しい鮭と米に満足し、これから本格的に町の散策を行います。
目指すは、鮭の店があるここから東に1km余り離れたところです。
通りを歩いていると、肴町、鍛冶町など職業を連想させる町の名前が続きます。
確かに魚屋が続いたかと思うと、次は鍛冶屋が並んでいます。
町ぐるみで家の庭を開放しており、家の中をのぞけるところもあります。
そんな趣のある家屋に混ざって、やはり酒屋が目を引きます。
軒下に吊るされた杉玉が、「美味しい酒があるよ、寄っておいで」と誘ってきます。
そして杉玉と並んで一般家庭でも見られるのが、軒下に鮭を干している姿です。
これから訪れる鮭の店に、期待が持てそうです。

 駅から20分ぐらい歩いたでしょうか、お目当ての鮭の店「千年鮭 きっかわ」に着きました。
表から見ると何のことはない鮭製品を扱う店ですが、奥を見学できるということなので店の奥に入ってみます。
扉を入って驚くことに、そこは異次元の空間が広がっています。
天井からは無数の鮭が吊るされ、ゆっくりと乾燥するのを待っています。
その数には圧巻です。
そして、ここでは「鮭の酒びたし」を購入します。
越年した塩引き鮭が、梅雨を経てその水分がほとんど抜けてしまうまで1年かけてゆっくりと乾燥発酵させ、それを薄く切ったものです。
村上大祭のお膳でいただくのが定番だそうです。
見た目は茶色く薄いものですが、塩が効いていてお酒の肴にぴったりです。
想像するだけで、今晩の食事が楽しみになってきました。

 この通りには、昔からの家が集まっています。
塩引き鮭のお茶漬けが食べられる「井筒屋」も、2階一面に障子の白が眩しい独特の造りをしています。

 公園を挟んで、町の施設が並んでいます。
そのひとつが「おしっぎり会館」です。
7月に行われる村上大祭の際に曳き回される「おしゃぎり」が展示されています。

「おしゃぎり」とは、だんじりのようですが左右に1つずつの大きなコマしかなく、厳かに移動するものです。
町毎に持つ山車が、ここに展示されています。

 「三の丸記念館」は、1907年に建築された「村上銀行本店」の建物です。
1878年に創設された「村上第71国立銀行」の業務を引き継いだことから、鬼瓦には「七十一」の文字が刻まれています。
そして第四銀行村上支店の店舗として営業してきましたが、現在はその建物が集会所として使われています。
2階の窓には鮭が干してあり、さすが村上です。
 その隣にある茅葺屋根の建物は、「若林家住宅」です。
曲屋造りの平屋建ての建物は、かつての武家屋敷なのです。
中級武家が住んでおり、囲炉裏のある畳の間の奥には、広い庭が見渡せる和室があります。
庭園には「鶴の松」「亀の松」を配し、回りに生えるツツジが彩を加えています。
これらの庭の木々が、四季折々の風景を楽しませてくれます。

 さらに奥には「村上歴史文化館」があります。
「若林家住宅」とは対照的に、外観は村上市にあった明治時代後期の病院を参考に設計された真っ白の洋館です。
村上市所蔵の民俗や歴史に関する資料が、展示されています。

 この辺りに浄念寺に通じる「安善小路」があります。
通称「黒塀通り」と呼ばれています。
矩形に曲がった通りで、車も通らず静かなところです。
歴史ある寺や割烹が連なる通りで、風情ある景観がここには残っています。

       

 本日最後に向かうのは、「イヨボヤ会館」です。
鮭が上る三面川に面した、日本初の鮭の博物館です。
三面川の鮭に関する歴史や文化の説明が行われています。
ふ化した鮭の泳ぐ姿も、観察することができます。
「イヨボヤ会館」からは三面川の川の中も見ることができ、川底に造られたガラス張りの窓には時折魚が目の前に現れます。
時期になればここで立派な鮭の姿を目にすることができるのでしょう。

 鮭を食べて、鮭を見て、鮭の土産まで買って、終始鮭一色に染まった村上の町探索でした。
村上の人は風邪をひかないといわれるほど、昔ながらの鮭の威力を感じさせる旅だったのです。

 
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