にっぽんの旅 信越 長野 須坂

[旅の日記]

長野電鉄で行く小布施、須坂 

 「2000系車両が今年中に引退する」そんな言葉に誘われて、やってきたのは長野です。
特にこの数日は、新型車両が点検のために古い2000系車両が特別に走るということですから、この時を逃すことはできません。
冬場で雪の心配しており道の中央までは積もってはいないものの、歩くとバリバリと音をたてて氷が砕けます。
滑らないように小幅で慎重に歩き、ホテルに入ったのでした。

 翌朝、改めて長野電鉄の長野駅に向かいます。
長野駅は地下駅であるにもかかわらず、ローカル線らしく人による改札口があり、切符にスタンプを押してもらって入場します。
駅には、既に須坂行きの特急電車が止まっています。
あずき色をした2000系車両です。
流線型の先頭の丸い車体は、可愛らしさがあります。
地下駅を走り出した電車は、善光寺下駅を超えたところで地上に出ます。
駅を飛ばして走る特急電車は、さすがに快適です。
特急料金がたったの100円というのも、嬉しい限りです。
周りの景色を楽しんでいると、約20分で電車は須坂駅に到着します。

 須坂駅の向かいのホームには、ここから湯田中まで行く次の特急電車が止まっています。
そして今度は最新の1000型の電車です。
これまで乗ってきた2000系より数字が若いのですが、何故か新型車両なのです。
最前列の座席は展望席になっており、運転席は2階にあります。
乗り込んで発車を待っていると、突然天井が開きそこから梯子が降りてきました。
運転手が用事のために降りてきたのですが、そのたびに手で梯子を降ろすところは近代的な車両でありながらローカル線の温かさを否応なく感じてしまいます。
電車は定刻に走り出し、草むらを走りすぎていきます。

 次の小布施駅で、電車を降ります。
ここには、引退した旧車両が駅の片隅で保存されている「ながでん電車の広場」があります。
日立製作所製の電気機関車であるED5002、汽車会社製の電車デハニ201、車体全体のボルトの凸凹がある川崎造船製の電車デハ354、日本車輌製の電車モハ1005が、ひっそりと身を横たえています。
車内に入ると、木製の壁が子供のころの電車の思い出がよみがえらせてくれます。
車両を乗り降りしたり、運転席をのぞきこんだりして、しばし鉄道に酔いしれていました。

 一通り電車も見終えて駅を後にして向かったのは、葛飾北斎の北斎館です。
皇大神社を越え、栗の小径を進みます。
この地方は栗が有名で、栗を使ったお菓子も売られています。
そんな中、高井鴻山記念館を通り北斎館までの小路には、栗の木の間伐材が敷き詰めており、風情のある通りになっています。
一歩一歩踏みしめながら、北斎館へと向かいます。

 北斎館では、葛飾北斎の作品が数多く展示されています。
江戸時代を代表する浮世絵師の北斎ですが、18歳のときに勝川春章の門下となります。
数多くの浮世絵を描きますが、平面的な浮世絵に嫌気がさし、動きのあるもの、自然の姿、そして西洋の遠近法を取り入れた独自の画風を完成させていきます。
北斎の代表作としては、1831年に発行された富嶽三十六景が有名です。
享年90歳で没するのですが、その死の直前に「あと10年、いやあと5年生きていれば自分の芸術を完成できたのに」と言って亡くなったということですから、並々ならぬ芸術への執念をうかがうことができます。
東町祭屋台の天井絵である龍と鳳凰、上町祭屋台天井絵である男浪と女浪も展示されています。

 さて小布施駅に戻り、元来た須坂に戻ります。 幸いにも朱色と肌色をしたもう一つの2000系電車に乗ることができました。
須坂駅では、引退した100系の電車があります。これも写真に収めます。
須坂は蔵の街、駅を出て蔵の町並みを見に行くことにします。
途中の団子屋でみたらし団子をほおばり、交流センターから中町に東西に走る蔵の道、そしてそこから南の田中本家博物館までを眺めて回ります。
商店でもマンションでも表は白壁、瓦屋根を形どって造られています。
通りの途中にある笠鉾会館では、須坂祇園祭で使われる笠鉾と祭屋台が展示されています。
また旧上高井郡役所は、大正時代に建てられたバロック様式の建物です。

 街を一通り散策すると、再び須坂駅に戻ります。
さて次の電車は…。今度は普通に走っているステンレスの車両でした。
小布施と須坂の町並みを観にいった、というよりも長野電鉄の電車に乗りに行った本日の散策も、長野駅で終点です。
そして最後は、さくら肉で一杯。喉にしみる旨さです。

   
 
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