にっぽんの旅 信越 長野 木曽福島

[旅の日記]

木曽の福島宿 

 JR中央線の木曽福島駅にやってきました。
本日は、ここ木曽福島を巡ります。

 木曽福島は御嶽山の登山口、そして中山道の福島宿であったところで、古い街並みが残っている場所です。
それでは町を回って、これらを確かめていきましょう。
駅から線路沿いに走る道を、松本方向に歩いて行きます。
10分くらいたったところで、道は上り坂になります。
ここからが旧市街が残る「上の段」地区への入口です。

 「上の段」への登り坂の途中に、江戸時代に造られたといわれる井戸があります。
深さ6.5mの井戸は、昭和の中頃まで飲料用の井戸として使われてきました。
中山道を往来する旅人の喉を潤し、祭りのときには神輿を担ぐ枠持衆への砂糖水としてふるまわれました。
清い水が豊富な福島では、町のあちこちで水が湧き出ている景色を見かけます。
通りの坂を登り切ったところには「上の段用水」と呼ばれる水場があり、豊富な水が次から次から流れてきます。

 その向かいには「まつり会館」があります。
福島宿にふさわしい、趣のある建物です。
ここでは、木曽踊りや木曽の伝統行事についての展示が行われています。

 「上の段」はさほど広くなく、すぐに下り坂に差し掛かります。
坂の途中には「高札場」があり、「定」と書かれた掟の木札が掲げられています。
「高札場」を見ると、ここが宿場町であることを改めて認識させられます。

 坂を下りたところに「木曽町観光協会」が、そしてその隣には改築工事中の「旧役所」があります。
この辺り一帯が「本陣跡」のあったところです。
しかし、いまはその姿を確認することはできません。

 さらに先を急ぎましょう。
しばらく歩いて行くと、右手に「福島関所」に通じる階段があります。
この石段を上り、「福島関所」を訪れてみることにします。

 福島宿は、中山道六十九次の37番目の宿場です。
福島宿には1,000名足らずの人口が住んでおり、宿内の家の数は158軒、そのうち1軒の本陣と1軒の脇本陣、14軒の旅籠がありました。
箱根、新居、碓水とともに四大関所のひとつに数えられる福島宿です。
そして「福島関所跡」は、木曽川を見下ろす高台にあります。
江戸幕府は「入り鉄砲出女」の政策を打ち出しており、江戸に武器が入ってくることと江戸から女性が出ることには厳しく目を光らしていました。
このことは「福島関所」でも例外ではありません。
現在では「福島関所資料館」となっている「福島関所跡」ですが、ここには女性が関所を通過する際に使用した手形が飾られています。
また女性が男性に成り代わって関所を通過しそれがばれたときには、打ち首などの厳しい処置が行われたということです。

 「福島関所跡」の隣には、「高瀬資料館」があります。
「夜明け前」で知られる島崎藤村の姉が嫁いだ家で、小説「家」のモデルにもなった旧家です。
藤村に関連した資料が展示されています。

 ここからは「福島関所跡」とは木曽川を挟んだ対岸に足を運びます。
「関所橋」を渡り坂を登ったところには、中央に塔を備えた白壁の建物があります。
電車に乗っていた時に見え、気になっていたモダンな建物です。
ここは「御料館」という愛称で呼ばれている「旧帝室林野局木曽支局庁舎」の建物です。
木造2階建ての1927年に建てられたものです。
木曽谷最古の西洋建築で、いまでは復元改修されて内部が公開されています。

 その隣には、「興禅寺」があります。
長福寺、定勝寺とともに木曽三大寺のひとつで、1434年に木曾氏が鎌倉建長寺5世の円覚大華を迎えて創建したとされています。
そして「興禅寺」は木曾家そして山村家の菩薩寺になっています。
山村家とは代々木曽の地を治めた代官を務め、木曽谷を領した国人領主です。
「興禅寺」は「看雲庭」と呼ばれる大きな枯山水の庭が有名ですが、桜もきれいな場所でもあり本堂の前にも木曽義仲が植えたとされる時雨桜があります。
境内には「木曽踊り発祥の地」とする石碑が建っています。
「木曽のナー中乗りさん 木曽の御岳さんは ナンジャラホーイ」で始める節は、誰もが知る民謡です。
材木を筏に組んで木曽川を下り運搬する人たちを唄った詩です。

 ここからは、木曽福島駅方向に戻っていきます。
「山村代官屋敷」は、木曽谷の徳川直轄地支配を任された木曽代官 山村氏の屋敷です。
山村氏は福島関所の関守も兼ねていました。
屋敷の中には、資料や調度品などが展示されています。
現在残っているのは、下屋敷の一部とその縁側からは臨む築山泉水の庭園だけです。

 「大手橋」は、木曽川に架かるコンクリート製の端です。
初代の「大手橋」は江戸時代の木曽代官所の設置時に架橋された橋ですが、現在のものは1936年に架け替えられたコンクリート製の端です。
世界で最初のコンクリートローゼ桁橋ということですから、なぜこんなところにと驚きです。
橋の上からは、木曽川の流れを見渡しことができます。

 そしてその西には、「行人橋歩道橋」があります。
ここは御嶽山登山道にもなっているところで、橋を渡り切ったところには「やぼら清水公園」があります。
足湯も装備されており、人々が気軽に集れる場所です。
道路脇の崖の上から道路に屋根のひさしが張り出している「西方寺」を通って、車も通ることができる「行人橋」辺りまでやってきます。
ちょっと早いのですが、今日の宿に入ります。

 宿では檜の風呂にゆっくり浸かり、この日の疲れを癒します。
家庭風呂のような小さめの風呂ですが、木のぬくもりがあり落ち着きます。
部屋は畳敷きの和室で、夕食ができるのを待ちます。
そして待望の夕食には、この地方でよく食べられる鯉が出てきました。
甘露煮にしてあり川魚の臭みも感じられず、美味しくいただけたのでした。
その他にもいっぱいの皿が食卓に並び、大満足の食事でした。
おまけに五平餅がサービスで出てきたことは、嬉しい限りです。

 そうそうそれ以外にも、歩き回ったときに買っていたものがあります。
ひとつは木曽福島の酒「七笑」、青色の瓶が綺麗な酒です。
そしてもうひとつは、「そば饅頭」、蕎麦が名物だからこそ美味しく作ることができる木曽の饅頭です。
部屋に戻って、長い夜を楽しんだのでした。

     
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