にっぽんの旅 四国 徳島 祖谷

[旅の日記]

祖谷のかずら橋 

 本日の訪問先は、徳島県の祖谷を巡る旅です。
今居るのは、徳島県といってもすぐ先は高知・香川・愛媛、四国4県の県境が集まる阿波池田です。
そんな徳島駅からは遠く離れた阿波池田駅前から、祖谷の各地に観光バスが連れて行ってくれる楽ちんの旅です。

 駅前には、懐かしいボンネットバスが停まっています。
早速それに乗り込みます。
予約が早かった甲斐もあって、先頭の席に座ることができました。
バスはJR土讃線に並行して走る国道を、吉野川沿いを進みます。
バスが最初に向かったのは、「平家屋敷」です。

 1185年の讃岐・屋島の戦いで、平氏は源氏に敗れます。
平教盛の次男 平国盛は水主村(現東かがわ市)に逃れ、しばらくはここに潜伏します。
その後、残党30名ほどが吉野川をさかのぼり、山深い祖谷に入って来たといわれています。
茅葺の古民家である「平家屋敷」には、鎧や古文書、生活用具が並んでします。
徳島県の正月儀礼として五穀豊穣、無病息災を願うために古くから伝わる人形「三番叟(さんばそう)」も、ここには展示されています。
昭和の初めに姿を消してしまった貴重なものです。

 バスで祖谷に向かい「平家屋敷」を訪れると、もう昼前になってしまいました。
ここで祖谷に伝わる郷土料理を頂きます。
囲炉裏には「でこまわし」が並び、火の通るのを待っています。
里芋、岩豆腐、こんにゃくに味噌を塗り、炭火で焼いていただくものです。
木偶(=人形)に似ていることから、このような名前が付きました。
川で採れたアユも囲炉裏で焼かれ、美味しく食べることができます。
そして鍋にはこの地方の「そば米雑炊」も火にかけられ、湯気を揚げています。
もちろん自家製のこんにゃくもあり、刺身としていただきます。
最後に出てきたのは「祖谷そば」です。
山深い祖谷は急斜面で囲まれているため水はけの良い土地に恵まれ、また昼夜の寒暖差の大きくそばの栽培に適しています。
そのため質の良いそばの実が育つことで、この地の名物となりました。
厚揚げを入れ出汁を掛けただけの素朴なものですが、そばの旨みが出て満足の一品だったのです。

 さて次は今回の旅の最大の関心事、「かずら橋」です。
5月の連休での訪問で、「かずら橋」の入口まで列ができるということでしたが、連休最終日だけあって並ぶことなく橋に辿り着くことができます。
長さ45m、幅2mのシラクチカズラのツルを編んで造られた吊り橋です。
敵が攻めてくるとツルを切って橋を壊してしまうために、ツルで編んだ橋にしたということです。
足場は14m下の水面が隙間から見え、スリル満点です。
橋は一方通行なのですが、人が通ると橋は揺れツルを掴みながらゆっくり渡ります。
小雨がぱらついてきたのですが、傘を差すような余裕はありません。
なんとか対岸まで、橋を渡り切ったのです。

 橋を渡った左手には、滝が降り注いでします。
落差50mのこの滝は、「琵琶の滝」です。
平家が盛んに枇杷を奏でていたことから、このような名が付きました。
「琵琶の滝」の水が川に注ぐところから、川辺に下りることができます。
川から見上げる「かずら橋」も、美しいものです。

 次にバスが向かったのは、「小便小僧」です。
祖谷渓谷の山道をバスは走ります。
細く曲がりくねってた坂道を、バスはエンジンの限界まで大きな音をあげて進みます。
険しく切り立った渓谷に造られた道で、場所が取れずに岩をくり抜いて道を通したところもあります。
かなりの難工事だったと聞いています。

 そんな渓谷の岩の上に、「小便小僧」はあります。
何故こんなところに「小便小僧」がなのかと思いますが、1968年に徳島県出身の彫刻家 河崎良行によって制作されたものです。
ここは度胸試しのための小便の場所として、度々使われていました。
岩の下までは200mの高さがあります。
そこで「小便小僧」の像が設置されたということです。

 ここから山を下り、朝から来た道を「大歩危」まで戻ります。
「道の駅大歩危」には、「妖怪屋敷」があります。
建物に入ると、そこでは大天狗が迎えてくれます。
なかには数々の妖怪が、所狭しと並んでいます。
2階は「石の博物館」になっており、宝石が発掘された状態で展示されています。

 その「道の駅大歩危」からは、「大歩危峡観光遊覧船」が出ています。
これに乗り、川から大歩危峡の岩の造形美を眺めましょう。
おりしも5月の連休、吉野川には多くの鯉のぼりが泳いでいます。
船上から見える両岸の岩は自然の隆起陥没のすさまじさを感じるかのように、地層が斜めに刻まれています。
ごつごつした岩が、ずっと続きます。
川底の深さが場所により違うのか、荒々しい水の流れだったかと思うと、今度はゆったりとした澄んだ水で川底が見えたりもします。
わずか半時間ですが、ゆったりとした船の旅です。

 そして朝集合した阿波池田駅が、本日のバス旅の終点です。
渓谷美をボンネットバスで巡り、楽しい祖谷の1日でした。

     
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