にっぽんの旅 九州 沖縄 竹富島

[旅の日記]

沖縄の原風景を保つ竹富島 

 本日の旅の舞台は、竹富島です。
沖縄の南、八重山列島の一つの島で、石垣島から船で渡ります。
水牛が暮らす数少ない島のひとつにも数えられます。

 石垣島から約20分で、船は竹富港に着きます。
小さな港で、今乗ってきた高速艇以外はグラスボートが停泊しているだけです。
実は当初乗る予定であったグラスボートは、強風により運行が停止したのです。
そこで本日は、島内観光を行うことにします。

 車を待っている間海を眺めていると、はるか遠くで白波が立っています。
その場所までが、サンゴの生息地なのです。
白波の外には、自衛隊の監視船が停留しています。
南の海を見回っているのでしょうが、平和で穏やかなこの島に似合わないグレーの大きな船は威圧感があります。

 まずは車で「カイジ浜」に向かいます。
ここは信号のない島なので、車の渋滞はなく順調に車は進みます。
5分ほど走ると、目指す海岸に到着します。
「カイジ浜」は、サンゴの合間に白砂が積もった砂浜です。
浜の先には、水道の水を溜めたような澄んだ海が広がっています。
実はこの浜は別の名を「星砂の浜」とも呼ばれ、星砂が採れる場所でもあります。
かつて与論島で教わった星砂の採り方を試してみます。
砂浜に掌を軽く押し付け、そっと上げた掌に付いているのが星砂です。
星の形をして尖った星砂だけが、手に付いてくるのです。
教えの通り、簡単に星砂を見ることができるのでした。
浜では時折波に洗われる浜の上を、ヤドカリがせっせと背負った貝殻を運んでいます。
どうやら、ゆっくりと時間が経つ空間に入り込んでしまったようです。
しばらくはここで、波の打ち寄せる様子や浜で動くヤドカリを眺めていましょう。

 どの位の時間が経ったのでしょうか。
次は島の中心地である西集落、東集落に移動します。
途中で遊泳のできる砂浜「コンドイ浜」を眺めてから、車は進みます。
西集落、東集落は島の中央に位置します。
この辺りには、八重山独特の赤瓦葺きの家屋が集中しています。
砂を巻いた路地とサンゴを積み上げた外塀が、いっそう南国の雰囲気が漂わせています。

 それでは、ここからは水牛が曳く牛車に乗って集落を巡ります。
竹富島の牛車は西表島のものに比べて、車体が長く4輪のタイヤを備えています。
陸上を移動するので水による抵抗がない代わりに、角を曲がるときに外塀にぶつからないことに気を使わなければいけません。
水牛にはこの回る感覚を、徹底的に教え込ませるそうです。
それではその成果を、実際に乗ってみてみましょう。
ミシミシと音を立てながら、牛舎は動き出します。
牛舎1台がやっと通ることができる道幅を、牛車は走ります。
やがて牛車の中では、三線(さんしん)を奏でての八重山、琉球の唄が始まります。
聞き覚えのある唄もあって、場は一挙に和みます。
道の左右に目をやると、サンゴの壁が続き赤瓦の家が並びます。
庭には真っ赤なパッションフルーツが、実を結んでいます。
歩く方が速い牛車を、のんびりと楽しんだのでした。

 牛車を降りた後は、今度は自分の足で周囲を巡ります。
ひと際高い建物は「なごみの塔」です。
2名しか入ることができない展望台で、街を見てみようと行ったのですが、登る時間が限られているようです。
訪れたときにはチェーンが掛けられ展望塔には登ることができずに、塔の根元の部分から街並みを眺めることにします。
集落には、赤い屋根が広がっているのが判ります。

 その次には、少し先の「西塘御獄」に向かいます。
1500年に琉球王府と宮古の連合軍が八重山のオヤケアカハチに征伐します。
その時に総大将 大里親方は竹富島の西塘の才能を見出し、気に入って彼を王都の首里に連れて帰ります。
西塘は沖縄本島の首里の地で言葉や学問を学び、土木建築家として活躍します。
世界遺産の園比屋武御嶽の石門は、西塘が建築したものです。
朱里で成功を極めた西塘には、郷里竹富島に帰り園比屋武御嶽の神様を竹富島に勧請するという長年の思いがありました。
その夢が叶って、西塘は八重山を統治する頭として帰郷します。
そして竹富島に「国仲御嶽」を創建して遥拝所としたのでした。
西塘は晩年を石垣島で過ごしましたが、亡くなったあとは竹富島で立派に葬られました。
その墓が現在の「西塘御嶽」なのです。

 八重山の至る所で植えられているのが、サトウキビです。
そしてサトウキビから精製されたのが黒砂糖で、島には生姜やクルミなどに黒砂糖を和えた菓子が店に並んでいます。
口に入れると手が止まらなくなる食べ物で、ひとしきり試食をした後で結局は買って帰ることにします。
これって、常習性のある危険(?)な食べ物ですよね。

 一通り島の雰囲気に呑み込まれて楽しんだ後は、竹富港からは再び石垣島の離島ターミナルに向かう高速艇で島を後にしたのでした。
次回訪れる機会があれば、ぜひ島の民宿で時間を忘れてゆっくり過ごしたいものです。
ゆったりと時間が流れる異次元の空間、南国の島 竹富島だったのでした。

     
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