にっぽんの旅 九州 沖縄 斎場御嶽

[旅の日記]

斎場御嶽と玉泉洞 

 今回は、沖縄南部を散策してみます。
といってもモノレールとバス以外交通手段のない沖縄での移動手段は車です。

 最初に向かったのが「ニライカナル橋」です。
琉球ゴルフクラブの前を通り過ぎ、自衛隊演習所脇のトンネルの前で止まります。
このトンネルの上に、橋を一望できる展望台があるのです。
橋といっても海に架かる橋ではなく、知念の高台から一気に下りるためのループ橋なのです。
ブーメランの奇跡のようになだらかにUターンして返ってくる形をしています。
ニライカナイはこの地方に伝わる理想郷のことで、橋を造るときにこの名前が採用されました。
真っ青な海の向こうに久高島を臨むここからの橋の眺めは、実に美しいものです。

 さて車は「ニライカナル橋」を一気に下りて、「斎場御嶽(せいふぁうたき)」へと向かいます。
パワースポットとして脚光を浴びている「斎場御嶽」ですが、ここは聖なる場所であって決して観光バスが行き交うようなところではありません。
ここでは、琉球王国時代(1470年〜1879年)の最も大きな行事が行われた場所なのです。
最大神女の聞得大君の即位の儀式である「お新下り(おあらおり)」が行われるのは、夜が更けてからです。
月明かりを頼りに儀式は進められ、その後の寝床に結婚相手の男性が寄り添うことになります。
御門口(うじょーぐち)は御嶽への入り口で、かつてはこれから先は男子禁制となっていましたが、今では入ることが許されています。
本州の霊場では女人禁制の場所が多い中、ここ琉球では女性が力を持っているのです。

 それでは、「御門口」から入って行きましょう。
入口には沖縄独特の平べったい線香が、供えられています。
数本の線香を横並べて固めたもので、そういえばこんな形をしたラーメンのお菓子がありましたね。
通路には、久高島から取り寄せた真っ白なサンゴを敷き詰められています。

 サンゴを踏みしめながら歩いていくと、最初の拝所である「大庫理(うふぐーい)」に出ます。
大広間や一番座という意味を持っており、磚(せん)の敷かれた祈りの場(うなー)があります。
「お新下り」では、中心的な祭場であったところです。

 さらに先に進みましょう。
「寄満(ユインチ)」と呼ばれる、岩の下側がくりぬかれたような場所があります。
そしてそこにお年寄りが入り、祈りを捧げています。
声を凝らしお祈りの邪魔をしないように、遠巻きに「寄満」を見学します。
「台所」を意味するこの場所ですが、貿易の盛んであった当時の琉球では、世界中から交易品の集まる「豊穣の満ち満ちた所」と解釈されています。

 「三庫理(さんぐーい)」は、巨大な2つの石で構成されており、石の間にできた三角形の隙間から陽がこぼれています。
中は人が並んでくぐることができるほどの広さで、洞門から吹き寄せてくる涼風が相まって、聖域の気を感じます。
ここでの願いは叶うとあって、三角形の空間の突き当たりの拝所では、直角にそびえる石の壁に向かって祈りを捧げたのでした。
そして洞門の脇の岩では、頭上から垂れ下がる2本の鍾乳石があり、それを伝って落ちてくる水を壷が受けています。
水が落ちるたびに甲高い音が響き、ゆったりをその音に聞き入ったのでした。

 さて「斎場御嶽」で身も心も洗われた後は、一路「おきなわワールド」に向かいます。
車は、サトウキビ畑をひたすら走ります。
やがて、鮮やかな朱色の門が出迎えてくれます。
門を入ると、いきなりハブ資料館が目に入ります。
そしてその先には、琉球古船が展示されています。
他にも見所はあるのですが、今回は国内最大級といわれる鍾乳洞である「玉泉洞」入り口を見つけて、早速地底に潜り込みます。

 「玉泉洞」とは、琉球石灰岩でできた洞窟が890mに渡って続く地底の世界です。
洞窟に入ると、眼鏡が曇るぐらいの湿気です。
「東洋一洞」では、つららのように垂れ下がった鍾乳石が、一面に広がっています。
石灰岩が溶けた水は、天井から垂れるときに鍾乳石を形作ります。
そしてその水が地面に落ちた時にも、地から生えるような上向きの鍾乳石が出来上がります。
3年に1mmというゆっくりしたスピードですが、それでも亜熱帯で多雨の沖縄は他の地域の鍾乳石に較べると早い方なのです。
奥の「昇龍の鐘」では、大理石を磨きあげたような純白の鍾乳石が光り輝いています。

 地底の川に沿って、鍾乳洞は続いています。
入り口とは違い、ここは地底のひんやりとした涼しさがとても心地良いのです。
「櫓天井」では、天井から突き出るように迫ってくる鍾乳石を、傷つけないようにかがみながら進んでいきます。
「化石の広場」を抜け、目の前に広がったのは「青の泉」。
ここは溜まった水が青色に輝いている場所です。
青いライトを当てての演出とはいえ、きれいなものです。
そして、その水が鍾乳石の表面をなめるようにして流れていく滝には、滝という言葉が場違いのような実に優しい流れを見せてくれます。
洞内の古酒蔵は自然の冷蔵庫で、柵で仕切られた奥にはお酒の樽が並んでいます。

「玉泉洞」を出ると、まぶしい地上の太陽の前には、植物園が広がっています。
バナナの木、パイナップルの実もやがて実りを結びそうです。
その先には「王国村」があり、琉球の昔の民家が再現されています。
そんな中の一つの「王国歴史博物館」があるので入ってみます。
沖縄で言う「じゃみせん」はサンシンのことで、ここで展示されています。
そのほか、沖縄で古くから伝わる道具の数々が展示されています。
ハブ薬草酒の販売所や琉球ガラス工房を眺めながら、最後は民族衣装を身にまとい踊りを披露しているエイサー広場にたどり着きます。

 神秘的な「斎場御嶽」、自然の造った「玉泉洞」、そして沖縄の暮らしを知ることのできる「王国村」と、少しは沖縄を理解できたような気がします。

   
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