にっぽんの旅 九州 沖縄 西表島

[旅の日記]

水牛とマングローブの西表島 

 本日の訪問先は、日本の南の果てにある西表島(いりおもてじま)です。
西表島へは、石垣島から高速艇で1時間をかけて行きます。
石垣島が生んだ具志堅用高の像が飾られている離島ターミナルから、出かけます。
湾を出るとそこは外洋なので、高い波に船は大きく揺れます。
海の先にうっすらと見える西表島に向かって、船は全速力で走ります。

 やがて赤い柱が立つ大原港桟橋に到着します。
ここからバスに乗り、由布島に渡る水牛車乗り場までこの身を運んでもらいます。
「由布島入口」と書かれた砂浜には、水を染ましたマットで靴底についた泥を拭ってから入ります。
動植物やその種を島に持ち込まないためです。
砂浜には水牛車がずらりと並んでおり、そのうちのひとつに乗り込みます。
水牛車は左右にそれぞれ1輪だけの車輪がついた不安定なもので、いわばリヤカーを水牛が引くようなものです。
早く走るかどうかは、水牛のやる気次第です。

 由布島までは、海の中を渡っていきます。
海と言っても浅瀬ですので、水牛車の中まで水が入ってくることはありません。
水をかき分け、水牛は進んでいきます。
歩いても行ける距離なのですが、ゆっくりと15分かけて進んでいきます。

 たどり着いた由布島は周囲2kmの小さな島で、島全体が亜熱帯植物園になっています。
これから、島の中を歩いて回ります。
通路の脇にはヤシの木が並び、中央に大きな菩提樹が生えています。
南国に来たことを、改めて認識します。
地表にはたくさんの小さな穴が開いています。
確認はできませんが、カニでもいるのでしょうか。
「貝の館」では、珍しい貝やサンゴが飾られています。
小学校の正門と校舎跡を通り過ぎ、島の対岸に出ます。
浜にはエイの形を模った置物が飾られており、その先の水面はサンゴ礁の岩場になっています。

 ここからさらに北側の「ブーゲンビレアガーデン」に向かいましょう。
温室の中には、普段は見ることのできない色鮮やかな植物が咲き誇っています。
名前を即答できるのは、ハイビスカスぐらいでしょうか。
ハイビスカスも、赤や白、ピンクと様々な色のものが咲いています。
ほのかな赤色をし中に白い花をつけたブーゲンビレア、そして黄色が美しいアリアケカズラなどが迎えてくれます。

 さらに島を歩いて「蝶々園」を覗いてみます。
「蝶々園」に来るまでの島内でも何種類かの蝶に出会いますが、そこでは変わったサナギが吊り下がっています。
木々に金色をしたサナギがぶら下がっています。
オオゴマダラのサナギで、鮮やかな色は自然界で毒を持つ生物の華やかさに似せた、身を守るためのものです。
サナギの中の黄色の体液が金色に見えている理由で、成虫になって蝶が飛び立った抜け殻は、透明な色のないものなのです。

 その他にも島内には水牛車を曳く水牛も、骨を休めています。
子供の水牛やシーズンオフでで観光客が少ないときは、ここに水牛が集結しているのです。

     

   

 そのあとは食事にします。
ゴーヤチャンプル、豚肉で作るラフテーなどが詰まった定食です。
サンピン花茶が気に入って、思わずペットボトルもサンピン花茶を買ってしまいました。
あわただしく食事を済ませて、再び港に戻ります。
港からは仲間川を上るマングローブクルーズに行くためです。

 船は10人余りが乗ることのできる、ボートです。
この船で川を上り、マングローブの林を見て回ります。
仲間川は高低差のない川が広がり、満潮時には海から川上に海水が逆流するほどです。
水の流れが緩やかですから川底も削られておらず水深が浅く、時折船のスクリューが川底の砂を噴き上げます。
スクリュー音がするにもかかわらず、一向に前に進まないこともしばしばです。

 川辺に溜まった砂の上に、無数の小さく動くものがいます。
ミナミコメツキガニで、普通は横に歩くカニですがこのカニに限っては前後に移動することができます。
集団で歩く様が軍隊の行進に似ていることから、軍隊ガニとも呼ばれています。
そしてそれを餌にするシロサギが、あちらこちらで見かけます。
食べ放題の状態です。

 川の両側にはマングローブのジャングルが広がっています。
マングローブというのは植物の名前ではなく、その総称を指します。
通常の植物は海水では育つことができませんが、マングローブは塩をろ過する機能を持ち備えています。
さらにはろ過できなかった塩をひとつの葉に溜め、塩が溜まりきれば散らすといった自然の動きをします。
木の中で黄色みがかった色をした葉が、それです。
また根からも呼吸をするため、一旦地中に潜った根先が地上に頭を出すのも特徴です。
木々を見ていると、いくつかの種類を確認することができます。
木の幹の下方から根が分かれ、地上に根が見えた状態で立っているもの。
普通の植物のように地上には幹だけ見えているが、一旦潜った根が呼吸のために地上に出てくるもの。
さらには地上に出てきた根が「くの字」に折れ曲がって、再び地下に潜るもの。
様々の木々がマングローブのジャングルを造っています。

 ジャングルの中には、赤く塗られたペットボトルが無造作に置かれた場所があります。
自然の中に捨てられているのか、あるいは水路を知らせるための道標なのか、考えが頭の中を巡ります。
船長の説明では、カニを撮りための罠を仕掛けた場所を示すための目印だということです。
このカニって、ノコギリガザミなのでしょうか。

 川をさかのぼり、そこから先は船底が擦らずに行ける限界のところにあったのが、サキシマスオウノキです。
アオイ科の常緑樹で、根の部分が縦方向に薄い板のように立っているのが特徴です。
マングローブの中に生える植物のひとつです。

 再び川を下り港に帰っていくのですが、色々の珍しい鳥が目の前に現れます。
シロサギは数多く見かけるのですが、そんななかアオサギが木々の隙間から顔を出してきました。
様々な動植物に出会う、1時間のクルーズだったのでした。

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