にっぽんの旅 九州 大分 鉄輪

[旅の日記]

鉄輪温泉の地獄めぐり 

 別府は日本最大の温泉地帯です。
そんな別府の「地獄めぐり」をしてみましょう。

 別府駅からバスに乗り、別府湾を回りながら「血の池地獄」のバス停に向かいます。
バス停を降りると、前には「龍巻地獄」の建物があります。
地獄はその奥にあります。
湯壺に向かったベンチに、何人かの人が座っています。
ここは30〜40分間隔で湯が噴き出る間欠泉で、やがて来る噴出に備えて皆が待っているのです。
待つこと10分余り、岩で囲まれた湯壺に激しい音とともに熱湯が噴出してきました。
すると、見る見るうちに真っ白の湯気が立ちあがります。
天井の岩が湯の飛び散るのを防いでいますが、これがなければ50mの高さまで湯は達するそうです。

 その隣には「血の池地獄」があります。
門を潜り敷地内に入ると、土産物屋の建物があります、
それを越えたところに地獄があります。
池は血を思わせる真っ赤な水を湛えています。
赤い水面には、白い湯気が不気味に立ち上っています。
地下で化学反応をして酸化鉄や酸化マグネシウムなどを含む赤い熱泥が、地上に噴出し堆積したために赤くなって見えます。
敷地内には足湯もあり、「血の池地獄」を眺めながら休憩することもできます。

 残りの地獄は、「鉄輪温泉」にあります。
ここから「鉄輪温泉」までは、バスで移動します。
しかし今回は終点の「鉄輪」の2つ手前のバス停で降ります。
バス停から坂を登って行ったところに「貴船城」はあります。
1957年に築かれた個人の城で、一般に公開されています。
柱の丸太がむき出しの城中には守り神として白蛇が飼われており、開運の御利益があると尊われています。
中に足を踏み入れるとその大蛇の紹介があり、実際に蛇の皮を手で撫ぜて感触を身をもって味わうイベントがあります。
さてなぜここに来たかというと、「この城から眺める鉄輪の景色が絶景なので是非寄ってみれば」と勧められたからです。
町の至る所から湯気が立ち上がり、幻想的な姿です。
そして後ろに見える扇山は、山焼きをして木のないのっぺらぼうの山です。

 それでは「鉄輪」のバス停まで、歩いてみます。
「鉄輪」に近付くと、そこらじゅうが湯元で家々から湯気が噴出しています。
道端には共同釜戸の「地獄釜」があます。
鍋台の下から熱気が揚がってくる自然のコンロで、食材を入れた鍋さえ持って来れば料理ができてしまうのです。
その先には、「湯乃徳稲荷」があります。
温泉の真ん中にある神社に相応しい湯の神社です。

 「鉄輪」で最初に訪れたのは、「白池地獄」です。
青白い池の隅からは、白い湯気が黙々と立ち上がっています。
噴出時は透明の湯ですが、池に落ちた時の圧力変化と温度低下で青っぽい色に変色してしまうのです。
敷地内には温泉を利用した熱帯魚の水槽があり、ピラニアやピラルクが飼育されています。

 そのそばには「鬼山地獄」があります。
おびただしい量の湯気が、池を覆い隠しています。
その先には鬼の像が迎えてくれます。
温泉の蒸気を利用して蒸した芋、とうもろこし、卵の「地獄蒸」も美味しそうです。
そして「鬼山地獄」には、もっと驚く地獄があるのです。
それは柵で囲まれた池の中から、顔と目だけがこちらを睨んでいます。
そう、ここでは温泉の熱を利用してワニが飼われているのです。
これこそ驚愕の地獄体験でしょう。

 立て続けに次なる地獄「かまど地獄」に向かいます。
ここでは地獄の1丁目から6丁目に、順に異なった地獄を巡っていくことができます。
1丁目は泥の中から温泉が湧きだし、泥が飛び跳ねています。
2丁目の岩の上には鬼がいます。ちょっと滑稽でほほえましい地獄です。
青白い池の3丁目、泥が噴き出す4丁目、日によって水の色が変化する5丁目と続きます。
本日は天気が良くて青色い色をしていますが、雨が続けば緑色に変わるということです。
そして赤茶色の6丁目の横には、足湯場があります。
タオルを持参して臨んだ今回の旅ですから、ここで入らないわけにはいきません。
せっかくですから「地獄蒸」で蒸された温泉プリンを買って、湯に浸かります。
歩いた足が湯の中でジンとしびれ、気持ち良いものです。

 食べかけたついでに、本格的に食事に出かけます。
大分の郷土料理「だんご汁」は小麦粉で作った平たい麺で、うどんを食べているようです。
その定食に付いて出てきたのは、これまた「地獄蒸」のゆで卵です。
店の主人が、「鉄輪温泉」で寄るべき銭湯を色々と教えてくれます。
温泉の銭湯には、後で行くことにします。
そして「鉄輪温泉」を宣伝してくれと、鉄輪のパンフレットを渡され記念撮影までされてしまいました。
その写真はお見せできるのもではなく紹介できませんが、思わぬハプニングでした。

 食事も終わり、残りの地獄を巡ります。
「山地獄」はサボテンが咲く温室を抜け、カバやフラミンゴがいるミニ動物園を越えた先にあります。
山を見立てた丘の脇には水が溜まり、ここで温泉が湧いています。
茶褐色の池の中央は緑色で、そこに澄んだ透明の湯が溜まっています。
温泉は勢いよく湧いているようで、ここにも白い湯気が立ち込めているのです。

 次なる「海地獄」は入るとすぐに、大きな池があります。
その先の温室には池があり、ここにはアマゾン原産の大鬼蓮が生息しています。
その蓮の葉は人が乗れるほどの大きさに育ち、小学生ぐらいの体重なら実際に乗ることができるのです。
奥に進んだところに、コバルトブルーの鮮やかな色をした「海地獄」があります。
温泉を利用した温泉卵のかごが、池に浸かっています。
湯気の激しく出る様は地獄のようですが、色鮮やかな海は美しい天国を思い浮かべるのでした。

 8つ目の「鬼石坊主地獄」が「地獄めぐり」で最後の場所です。
敷地内のどの池も泥が溜まり、その中から湯気が噴き出しており泥が丸く円を描いています。
円の中央では泥が踊り、時に高く飛び跳ねます。
そんな池が数多くあるのが、ここ「鬼石坊主地獄」なのです。
落ちると吸い込まれそうな、まさに地獄の様子を描いています。
「鬼石坊主地獄」には温泉もあるようですが今回はここでの入浴は行わずに、これから「鉄輪温泉」の町を巡り銭湯に行くことにします。

 先ほどの食堂で教えて頂いた銭湯めぐりをすることにします。
鉄輪のバス停から、「いでゆ坂」を下って行きます。
「すべて水質が違うから、複数の温泉に入って行って入り較べをすればいい」と言う食堂の主人の言葉を信じて、順に温泉を巡ります。
「渋の湯」は食塩泉で、ロッカー代を支払って入ります。
ここは、素直な水質の温泉です。
一方「むし湯」は鉄輪でも有名な蒸し風呂で、単純泉、食塩泉を有しています。
旅行ガイドなどに掲載されているだけあって、観光客に人気です。
「熱の湯」は、無料で入れる市営の共同銭湯です。
混むほどでもないのですが、昼間でも地元の人が入れ代わり立ち代わり入浴する温泉です。
ここまで来ると、身体はホクホクで汗だくです。
そして「とにかくボロイから、一回行ってみる価値がある」と言われて訪れたのは「谷の湯」です。
さすがに温泉疲れをして、ここは前を通り過ぎるだけにしておきます。

 1分も歩けば次の温泉にぶち当たるといった、都会に住んでいる者にとっては夢のような環境の「鉄輪温泉」だったのでした。

       
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