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[旅の日記]

奄美大島(金作原原生林から瀬戸内まで) 

 奄美大島の旅、本日は中心地の名瀬から島の西側を責めてみます。
その前に、奄美に来て是非行きたかったところがあります。
そこは、今だ原生林が残る「金作原原生林」です。
まずは「金作原原生林」を訪れてみます。

 近くまで車は入れるのか、ハブを始め恐ろしい動植物はいないのか、頭をよぎるのは心配ばかりです。
ということもあって、今回は珍しくツアーに潜り込んでの散策です。
予約をしていると、朝はホテルまで車が迎えに来てくれます。
今回のツアーの総勢は7名で、各々のホテルでピックアップしながら向かいます。

 名瀬から1時間弱で、目的地の金作原に着きます。
ここから先は原生林の中をトラッキングです。
車ではジャングルのようなところをガイドに連れられてさまよい回るのではないかとも思っていましたが、考えていたよりかなり整備された道を歩くことができます。
道端には亜熱帯植物が茂り、シダや苔が緑を保っています。

 「となりのトトロ」ご愛用の大きな葉をもつ「クワズイモ」も、至る所に生息しています。
サトイモ科の植物ですが、地中にできるイモはまずくて食えないことからこんな名前が付きました。
白い花と瑠璃色の実をつけているのは、「リュウキュウルリミノキ」です。
花と実が一度につくのは、今年の台風のせいかな?と盛んにガイドが言っています。
皮がはがれてツルツルなのは身ぐるみはがれたことから「バクチの木」、木に傷をつけると小便のように水分が噴き出ることから名付いた「ションベンの木」など、ユニークな名前の木がいっぱいです。

 ガイドの説明を聞き周りの草木を眺めながら歩いて行くと、やがて「ヒカゲヘゴ」の群生地にたどり着きます。
空を見上げるとヘゴの葉の隙間から陽が差してきます。
以前はもっとうっそうとしていたそうですが、見通しが良くなったのも台風のおかげのようです。
逆に苔類が減ってしまったも、ガイドは嘆いています。
「ヒカゲヘゴ」の幹には、カマで皮を剥いだかのような楕円形の模様ができます。
そしてその中には線を引いたような模様が付いており、顔のようにも見える不思議なものです。

 植物の世界でもきっちりと他人のふんどしを頼りにしている奴がいます。
これこそが「オオタニワタリ」で、「ヒカゲヘゴ」などの高木の枝などにへばりついて生育しています。
親木の枝に住み着き、放射状に自らの葉を伸ばすことで中央がくぼんだようになります。
そこで上から落ちてくる葉を溜め込み、栄養を吸収する植物です。

 朽ちた木の切り株には緑の草が生い茂り、まるで鉢植えを見ているようです。
自然の美しさです。
切株の根元に眼をやると、そこには細い「ザトウムシ」が移動しています。
よく見ると多くの「ザトウムシ」がいます。あちらにもこちららにも。

 と、目の前に赤い鳥が飛び降りました。
これこそが「アカヒゲ」です。
奄美大島や徳之島で見られる貴重な鳥です。
カメラを構える間もなく、飛び去ってしまいました。

 「金作原原生林」のトラッキングの最後は、「オキナワウラジオガシ」です。
カシの木ですが、根元が板状になる板根を見ることができます。
樹齢は150年以上で屋久島の屋久杉に較べると可愛いものでしょうが、それでも樹高が22m、幹の直径は1mを越えています。

 帰りは来た道を折り返すのですが、日差しが少し強くなっただけで木々の色も生えて、先ほどとは違った見え方をしているのでした。
車で名瀬のホテルまで戻り、ここからはレンタカーを借りて移動します。
その前に食事としましょう。
奄美の食べ物「油ぞうめん」を頂きます。
野菜、キノコ、蒲鉾を千切りにして、そうめんと炒めたシンプルなものです。
ところが塩加減が効いて、美味しいのです。
同じ奄美の料理で「鶏飯」がありますが、個人的にはこちらの方が気に入ってしまったのです。

 食後は島の西端の古仁屋を目指して運転します。
東シナ海に臨む名瀬から山を越え、太平洋側の自然の湾である内海には面白い形の建物があります。
「奄美体験交流館」で中は体育館になっており、この地域の交流の場でもあります。
さらに車を走らせると「マングローブパーク」の看板を掲げた道の駅があります。
「道の駅 住用」で、ここに寄ってみます。
駐車場の入口にある太い木は、ひょっとしてバオバブでしょうか。
ここではパターゴルフやカヌー体験ができるのですが、お目当てはそれらではなくその先にある展望台に上りたかったのです。
「マングローブパーク」は通るだけでも料金がかかりますので、外周の道を教えてもらい展望台に向かいます。


 長い階段をやっとの思いで上り、展望台にやってきました。
その名も「マングローブ展望所」です。
この辺りにマングローブ林が広がっており、それを眺めることができるのです。
蛇行した川の周りにマングローブ原生林が迫っており、先ほどのカヌーに乗れば間近で見ることもできます。
そこで目の前に現れたのはキツツキの一種で「オーストンオオアカゲラ」ではないでしょうか。
とっさのことだったので、またしてもカメラに収めることはできませんでした。

 ここからは一気に瀬戸内町の古仁屋に向かいます。
途中に見えるのはタンカンの木です。
緑の実が所々黄色に色づき始めてるところです。
タンカンはポンカンとネーブルオレンジの自然交配種で、中国で行商人が木桶で持ち歩いていたことが「桶柑」の由来です。
ここ奄美大島や屋久島が主な産地ですが、日本には1896年ごろに入ってきたものです。

 そんなタンカンを眺めながら、瀬戸内町の古仁屋港に着きました。
「せとうち海の駅」は船の待合所のほか、しっかりと魚屋も併設しています。
外の水槽では華やかな熱帯魚も泳いでおり、亜熱帯の独特の雰囲気が漂っています。
港に停留している船には「海上タクシー」という文字が掲げられ、船を足代わりにしているこの地域の暮らしぶりが判ります。
そして古仁屋港の岸壁には、巨大な魚の像もあります。
クロマグロ養殖日本一のモニュメントで、マグロが大きな口を開けています。

 それではここから東に海岸線に沿って車を進めましょう。
「マネン崎展望台」からは、海を見渡すことができます。
眼下に広がる「嘉鉄海水浴場」は、真っ青の素晴らしい海を見ることができます。
しかし良い写真を撮ろうと一旦道を外れると、とんでもないことになります。
「ハブに注意」の看板ではかわいらしいハブが描かれているものの、噛まれでもすれば最悪は命を落とす羽目になるのです。

 さらに進んでいくと、そこは澄んだ水で海底が見えるところがあります。
その先に「ホノホシ海岸」があります。
なぜここまでやって来たかという答えは、海岸に座り耳をすませばすぐに判ります。
海岸と言えばどこまでもつつく砂浜を思い浮かべがちですが、ここはちょっと違います。
波間に転がり角が取れた石ばかりの海岸なのです。
石に混ざって真っ白なものは、サンゴです。
同じように丸くなって、この海岸に打ち上げられています。
波が打ち寄せるのですが、その引き際に石どおしが流されこすれ合うガラガラガラーと響く音が特徴的です。
しばらく聞きほれていたのでした。

 ここからはホテルのある名瀬に戻るために、60kmの道を車でひたすら走ります。
途中いくつものトンネルを越えていきます。
奄美のトンネルは生活道路なので、必ず人や自転車が通るための歩道が整備されています。
トンネルができた今でこそ気軽に行き来ができるのですが、それまでは峠を越えるかあるいは船の方が手軽だったとも聞きました。
まだまだ自然が残る瀬戸内、そして大自然を守り奄美の固有種が楽しめる「金作原原生林」など、奄美の綺麗な景色に魅了された1日でした。

     
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