にっぽんの旅 九州 福岡 筑後草野

[旅の日記]

豊後街道の宿駅 筑後草野 

 本日訪れたのは、福岡県の筑後草野です。
佐世保からJR久大本線に乗り、20分程度のところにあります。
無人駅なので、列車の運転手に切符を出してホームに降ります。
久大本線は単線ですが、列車がすれ違うために上下線りのそれぞれにホームがあります。
改札口を通り駅舎に入ると、そこは趣のある造りになっています。
扉の外から注ぐ光が眩しいくらいです。

 駅舎を出ると外には緑が広がり、梅雨の合間の強い日差しが注いできます。
まずは線路と平行に走る県道151号線に出ます。
バス通りですが、めったに来ないバスです。
ボチボチと西に向かって歩いていきます。

 しばらく歩くと、右に和風の家屋が見えます。
ここ筑後草野は、久留米から天領日田へ続く豊後街道の宿駅でした。
今とは違い昔は大いに栄えた町だったのです。
その街道沿いにあるのが「上野邸」です。
町家にしては珍しく、横に長い造りになっています。

 和風の家々が並ぶ草野ですが、この文化を残しているのは有名な旧宅だけではありません。
床屋も例にもれず、和風の家屋に店が入っています。

 その先の左手には、「須佐能袁神社」があります。
草野永平が1197年に勧請したと言われる神社です。
石鳥居を潜ると、石造りの太鼓橋です。
楼門の奥に拝殿があります。
彫刻が施された楼門の細かい掘りは、見事なものです。
その先には1886年に再建された権現造りの拝殿があります。

 また通りを隔てた向かい側には「専念寺」があります。
1204年に持願上人が開基した寺です。
朱色の本堂は、こちらの方が神社だと間違える程です。
さすが「九州の日光」と呼ばれるだけあります。

 さらに歩いていくと、水色の壁をした建物があります。
本日この筑後草野に来たのは、水色の美しい建物を見て無性に行きたくなったからです。
同じような建物がここにもあります。
「草野貯蓄銀行」の看板が挙がっています。
1898年に設立された銀行で、町制を施行し草野村から草野町になってから最初の銀行です。

 その先にあるのも水色の建物です。
こちらは「草野歴史資料館」です。
筑後草野氏は1641年に永経、永平親子が備前高木より移り住んだことに始まります。
1180年から始まった源平戦乱では肥後の菊池氏、備前の高木氏とともに源氏方に就き、勝利に導きます。
その功あって源頼朝に認められ、確固たる地位を築いたのでした。
そんな筑後草野氏の資料が、ここには保管されています。

ここは、1910年に「草野銀行本店」として建てられた和洋折衷の建物です。
唐草文をあしらった赤く塗られた鉄柵や門扉が、周りを取り囲んでいます。
この辺りは、草野町の中心地として栄えていました。
そして戦後は、この建物も「福岡銀行草野支店」として利用されていました。
資料館にはこの地方に伝わる絵や言い伝えが紹介されています。

 1筋南側に景色が綺麗な小道があると聞き、ここからはバス通り離れます。
すぐに目につくのが、またしても水色の建物です。
「草野発心堂」と表札が出ています。
調べてみると、どうやら骨董屋のようです。

 しばらくはその道なりに歩いていきます。
すると今度は2階建ての大きな洋館が出てきました。
これまた水色の壁をした建物です。
久留米市花畑に建設中だった病院を、草野町に移築して1914年に完成させたものです。
いまでは「山辺道文化館」として、気軽に使える貸し会議室になっています。
この地方に伝わる神輿や獅子舞も展示されています。

 さらに西に進みます。
そこには「世界のつばき館」があります。
残念ながらツバキの花のシーズンは過ぎて、わずかにナツツバキにつぼみが見えます。
言われてみれば、我が家のツバキも花がとうの昔に落ちています。
その代わりに世界中のツバキの木がここにはあります。
東南アジアのツバキともなれば大きくてシワシワの葉を持ち、日本人の感覚ではとれもツバキとは気付かないものばかりです。

 さて草野で寄りたかったところは一通り回った感がします。
駅へはバス通りを通って帰ります。
「寿本寺」で、鳥居の先の石段の先に本殿があります。

 そこから東側(駅方向)に進んだところには、「鹿毛家住宅」があります。
鹿毛家は、江戸時代から醤油醸造や櫨鑞製造、質屋などを手広く営んでいました。
1700年代後半の建築と推定されます。
草野では最も古い町家なのです。
そうしてJR久大本線の筑後草野駅に帰っていったのでした。

 あっ、言い忘れましたが昼食を食べたのは小さな居酒屋でした。
店に入った時は先客がちぇんぽんを頼んでおり、ちょうど麺が品切れになったところでした。
そこで頼んだ焼きめしが絶品でした。
素朴な味なのですがどこか親しみがあり、自然と顔がにやけてしまうものでした。

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