にっぽんの旅 近畿 滋賀 坂本

[旅の日記]

比叡山の麓 坂本 

 本日は、比叡山の麓の町 坂本を散策します。
JR湖西線の比叡山坂本駅で降り、山側に歩いていきます。

 比叡山延暦寺の門前町として栄えた坂本には、約50ヵ寺の里坊があります。
里坊は山上での修行を終えた老僧に与えられた坊舎で、それぞれに趣向を凝らしたみごとな庭園があります。
庭園にはさつきや紅葉などの木々が植えられ、見事な日本庭園を形作っています。

 まず目に付くのが、「公人屋敷」です。
門前町としての坂本に、江戸時代ともなれば、多くの里坊が造られるようになります。
比叡山で修行を積んだ僧侶たちが、ここに住み込むようになります。
僧侶に混ざって職人や商人なども集まり、さまざまな人が生活するようになります。
その中で、延暦寺の僧侶でありながら妻帯と名字帯刀を認められた「公人」と呼ばれる人々がいました。
「公人屋敷」では、そんな公人の暮らしをいまに残す建物として公開されています。

 京阪坂本駅を越えたところに、風情のある建物を見ることができます。
この地で300年もの間、変わらず営んでいる蕎麦屋です。
入母屋造の総二階建ての建物の当初は桧皮葺だった唐破風も、今では銅版になっています。
現在の母屋は、築30年の年季の入ったものです。
ここで延暦寺ご用達の美味しい蕎麦を堪能します。
享保初年から受け継がれた味です。

 それでは「日吉大社」の石鳥居を潜り、さらに山側に足を進めましょう。
通りには石垣が目立ちます。
ここ坂本は、穴太衆(あのうしゅう)と呼ばれる城の石垣などを作った石工集団の出身地で、安土城を始め全国の城郭や寺院などの石垣を積んだことで知られています。
自然石を巧みに積み上げた様子が、里坊の落ち着いた雰囲気を漂わせています。

 そんな中に、「旧竹林院」があります。
「旧竹林院」は里坊のひとつで、延暦寺の中でも格式の高い寺院です。
特に庭園は有名で、大宮川の清流を庭に流し、奥に起伏のある築山を配しています。
訪れた時期は、おりしも秋の紅葉シーズン。
赤く色付いた鮮やかな紅葉が、日本庭園を飾っています。
そして庭園奥の茶室とあずまやは、天正年間に建てられた歴史あるものです。
しばらくは、主屋から庭園を眺めて心を洗います。

 「旧竹林院」から、少し先に進んだところに「日吉大社」はあります。
全国にある山王信仰の山王神社の総本宮で、紀元前91年に創祀されました。
古事記にも登場する歴史ある神社です。
最澄が比叡山上に延暦寺を建立する際は、比叡山の地主神である「日吉大社」を延暦寺の守護神として崇敬します。
1571年の織田信長による比叡山焼きの時は、「日吉大社」も灰燼に帰することになります。
現在見られる建造物は、1586年から再建されたものです。
ちなみに豊臣秀吉の「日吉丸」といい、あだ名が「猿」であることから、「日吉大社」の影響を大きく受けたと考えられます。

 三の鳥居を潜ると、石橋が架かっています。
参道となる正面には「大宮橋」、そして右手下側の「走井橋」では、垂れた松が石橋に当たりここでくの字型に天に向かって伸びている光景が見られます。
その先のなだらかな上り坂の両側には、真っ赤に色付いた紅葉が映えて見えます。
そして坂を登り切ったところに、山王神社の「山」という文字を表す山形になった「山王鳥居」があります。
ここで小屋を見付けます。
神様の使いとされる猿が飼われており、「神猿(まさる)」と呼ばれています。
「魔が去る」「何よりも勝る」として、縁起の良いものとされています。

 先ずは一番奥の「西本宮」に参りましょう。
西本宮楼門の先に拝殿が、そしてその奥に本殿があります。
檜皮葺の日吉造で、比叡山焼き打ちで焼失した後、1586に再建されました。
釈迦如来が祀られています。
一方、三の鳥居の右手を進んだところにある「東大宮」には、薬師如来が祀られているのです。

 次に、「日吉東照宮」を訪れます。
石段を上がると、朱塗りの立派な建物があります。
徳川家康は没後、静岡の久能山東照宮に祀られますが、その後にいまの日光東照宮で祀られています。
その東照宮造営に縁の深い天海が天台宗の僧侶であったこともあって、1623年にここ比叡山の麓に造営されたのが「日吉東照宮」です。
社殿の本殿と拝殿を石の間で連結する権現造の発祥とされ、日光東照宮の再建の際は「日吉東照宮」を基にしたと言われています。
関西の日光とも呼ばれているところです。

 ここから「滋賀院」に向かいます。
「日吉東照宮」からまっすぐと延びる「権現馬場」と呼ばれる通りを下ります。
左手に見える門を入ると、両側に燈籠が並んだ石畳の先に小さなお堂が見えます。
ここは、織田信長の比叡山焼き討ち後の復興に尽力した天海の廟所です。
天海(慈眼大師)の名を取って「慈眼堂」と呼ばれています。
そしてその左手には、13体の石仏像が並んでいます。
阿弥陀如来を祀った「滋賀院門跡」です。

 その奥に「滋賀院門跡」はあります。
坂本には多くの延暦寺の里坊が軒を連ねていますが、その中でも天台座主の里坊が「滋賀院門跡」で、ひときわ格式の高い場所です。
桃山風の華麗な石組みで知られる庭園も有名で、狩野派の障壁画を見ることもできます。
「慈眼堂」も「滋賀院門跡」の境内だったのです。

 その他にも最澄の誕生の地とされる「生源寺」も近くにあります。
本日は観光協会のイベントがこれから始まるらしく、ざわざわした境内でした。
ぶらりと見て回るには飽きない、紅葉の坂本の町でした。

 さて今晩の宿泊は、JR湖西線の隣の駅の雄琴です。
雄琴温泉で汗を流し近江牛でお腹を満たして、文句の言いようのない1日でした。

 
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