にっぽんの旅 近畿 奈良 御所

[旅の日記]

葛城氏や巨勢氏を生んだ御所 

 本日は、御所を訪れています。
飛鳥文化以前の古代史の舞台として活躍した葛城地方のひとつです。
大和朝廷の時代には、豪族の葛城氏と巨勢氏が活躍していた場所でもあるのです。

 着いてすぐなのですが、まずは腹ごしらえです。
御所らしい店がないのか、探します。
そんな中で、葛城川の支流の川岸に、御所に似合う店を見つけました。
お目当ての鴨汁がついた定食があるのです。
これに天ぷらや厚焼き玉子、それに2品の小皿が付いています。
素朴ですが美味しい食事を終え、ここから御所の散策が始まります。

 その先の鴨都波神社に寄ってみましょう。
境内には大きな木々が茂り、その中央に社殿が構えられています。
夏祭りと秋祭り宵宮の2回、ススキ提灯献灯参拝行事が行われる場所でもあります。
五穀豊穣、家内安全、無病息災を祈願した「ススキ提灯」と呼ばれる提灯が奉納されます。
夜空に複数の提灯を束ねた「ススキ提灯」が灯される幻想的なものです。

 御所の古い町並みは、駅の東側に広がっています。
四地蔵(安産地蔵)の建つJR和歌山線の踏切を超えて、旧市街に入っていきます。
背割り下水という狭い水路で囲まれた環濠集落です。
碁盤の目に区切られた街のいたるところに、古くからの街並みが残っています。
通りを南北に行き来しながら、次第に西から東へ移動していきます。

 前田紙店は、その名の通り紙全般を扱う店舗です。
紙だけで商売ができているのですから、これも驚きです。
この御所だからこそ成り立つことができる商売のようです。
隣には油長酒造のタンクが見えています。

 それではその油長酒造の前まで進みます。
タンクと道を挟んだところに、杉玉の吊るされた家があります。
扉の前に酒樽が積まれていることから、油長酒造に間違いありません。
工場の方は今日が日曜日なので、ひっそりとしています。

 南北に走る西久保通りを北に進んでいくと、T字路に出ます。
ぶつかった家の軒先にあるのは、大きな石です。
千本格子の内側にあるので、写真では判りにくいかも知れません。
衝波除石で、風水によれば邪気を受け止めてくれるそうです。

 ここで一筋西側の室大師道標(旧高野街道)に逸れます。
御所まちの北の木戸跡である遠見遮断です。
いわゆる高札場が復元されていました。
横にあるのは四地蔵(長命地蔵)です。

 次に中町通りを進んでいきます。
時代劇に登場しそうな町屋が、町のひとつとして何食わぬ顔で風景の中に入っています。
ここにある1軒1軒が歴史を重ねた家々で、まるで久しぶりに田舎に帰ってきたようです。
そしてここでは実際に人が生活しているのです。

 この近くに珍しい建物があります。
瓦葺の建物ですが、少し近代的な造りになっています。
郵便局として使われていたものです。
そういえば、周りと較べると雰囲気が違って見えます。

 中井家住宅は大きな屋敷です。
江戸時代後期に町庄屋を務めた商家で、「茶売屋」の屋号を持ちます。
主屋は1792年建築のもので、明治時代後期建築の座敷棟と1916年建築の土蔵が登録有形文化財になっています。
親族に与謝野晶子がいるところも、古くから続く中井家ならではです。

   

 ここまで葛城川の西側を歩いてきました。
ここからは日本基督教団を横に見て、大橋を渡り川の東岸に進みます。
西岸の商家が軒を連ねる西御所に対して、東岸の東御所は「圓照寺」を中心に発達した門前町です。

 それではその「圓照寺」向かうのですが、その途中に面白い家があります。
1階の軒下に石灯籠があるのです。
それぞれ愛宕神社、大神宮の文字が記されています。
屋根で雨を受けて、大切にされています。

 「圓照寺」は1546年に桑山源吾(釋笑雲)によって開かれた寺院です。
当時は「常徳寺」として開山しました。
この「常徳寺」を中心に、町が形作られてきました。
1610年には本山准如上人より懸所坊舎を命ぜられ、今の「圓照寺」と改名しました。
葛上郡周辺の西本願寺派50寺余りを統括する布教の拠点となりました。

 しばらくは葛城川東岸の御所まちを散策してみます。
そんな中、これまた面白いものを見つけたのです。
窓に怖そうな仁王像のような人物が付いています。
鍾馗(しょうき)さんと呼ばれる中国に伝わる道教系の神の像だということです。
魔除けとして置かれています。

     

 ここまで来ると町の東端です。
御所まちの南の通りを、葛城川に向けて戻っていきます。
葛城川に掛かる豊年橋を渡ったところにあるのは、サイカチの巨木です。
木の根元には小さな祠が建って、この巨木を守っています。

 末広商店街を通って、駅の近くまで戻ってきました。
帰りは近鉄御所駅から電車に乗ります。
JR御所駅からは、2〜3分離れたところにあります。
せっかくですから、来た時とは違った経路で帰ってみたかったのでした。

旅の写真館(1)