にっぽんの旅 近畿 京都 宇治

[旅の日記]

宇治の平等院 

 京都の世界遺産といえば、京都市内の神社仏閣を思い浮かべるのですが、南の宇治にも立派な世界遺産があるのです。
今日はそんな宇治を訪れてみます。

 京阪電車で宇治駅に降り立つと、まず目に入るには壮大な宇治川です。
この宇治川をまたぐ桧造りの橋が、日本三古橋の一つに数えられる宇治橋です。
古今和歌集や紫式部の源氏物語に登場する由緒ある橋なのです。
現在はコンクリートの橋ですが、桁かくしには檜材が使われ、また歩道には大判の御影石が敷き詰められています。
そして橋のたもとには紫式部像が設置され、源氏物語がこの地に色濃く根付いている表れなのでしょう。

 まずは本日のめだまである平等院に向かいます。
平等院の表参道である平等院通りには多くの草団子屋が軒を連ねており、この地方の名産である宇治茶の香ばしい匂いが漂っています。
そしてその先に表門があるのです。
朱塗りの表門は思ったよりも簡素で、あの壮大な平等院かと思うぐらいの控え目な造りです。

 さて門をくぐると、そこには池に浮かぶ鳳凰堂がそびえたっています。
10円玉の図柄に採用されて有名な鳳凰堂は、左右対称の建物で中堂の屋根の上には羽ばたいている「鳳凰」が設置されています。
折角来たのだから鳳凰堂の中の阿弥陀如来を拝観したいところでしたが、本日は2時間待ちとのことで諦めざる得ませんでした。
その代り鳳翔館では、保存展示している多数の文化財を見ることができます。
雲の上に乗った雲中供養菩薩像は手作業で実に巧妙に細部まで造られています。
そしてそれぞれに楽器を奏でる様子を見事に表現しています。
そのほか、敷地内には観音堂や最勝院、浄土院などが建ち並んでいるのです。

 平等院を一通り見終えると、再び宇治川の方に戻っていきます。
宇治川の中洲である橘島と塔の島には、朱塗りの橋を渡っていきます。
腰を掛けて宇治川の流れを眺めていおると、慌ただしい毎日を忘れさせてくれます。
島の南端には、宇治橋の架け替えに伴い1286年に建立された十三重の塔があります。
高さ15.2mのこの石塔は、我国最大の古石塔なのです。

 さらに朱塗りの朝霧橋を渡りきると、少し歩いたところに興聖寺があります。
琴坂と呼ばれる200mの坂を登りきったところに、これは珍しく白い角ばった山門が見えてきます。
そして竜宮造りの山門をくぐれば、この寺の庭園が目の前に広がります。
決して広くない庭園ですが、隅の隅まできれいに整備されているのが印象深かったのでした。
今日では曹洞宗の修行道場ともなっており、座禅の間を見ることもできました。

 次に訪れたのは宇治神社です。
鳥居をくぐり階段を上がって行ったところに、本殿があります。
祭神は、応神天皇の皇子菟道稚郎子とされています。
そしてそのすぐ先には宇治上神社があるのです。
明治維新までは、宇治神社と宇治上神社は一対の関係でした。
対岸に平等院が建立された時にはその鎮守社として栄え、平安から鎌倉時代にかけては藤原氏の援助もあって、祭礼時(離宮祭)には競馬、田楽が華々しく繰り広げられ、宇治川は舟で溢れかえったと伝えられています。
そして今では、平等院と並びこの宇治上神社も世界遺産に登録されているのです。

 一通り宇治の神社仏閣を散策し終わり、最後に訪れたのが源氏物語ミュージーアムです。
源氏物語に対しては、素晴らしい恋愛物語という意見と、色恋の浮気話を自慢しているだけという意見に二分されますが、この博物館では前者の源氏物語美化の方針で光源氏を展示しています。
ここでは源氏物語の魅力やあらすじを、展示と映像で教えてくれます。
源氏物語のもつあのややこしい人間関係も、20分の映画によって少しは整理できたことでしょう。
それにもまして、色鮮やかな源氏絵巻は一見の価値があるでしょう。

 10円玉と源氏物語に浸った秋の1日でした。

 
   
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