にっぽんの旅 近畿 兵庫 竹田

[旅の日記]

天空の城 竹田城 

 東洋のマチュピチュ、そう呼ばれる場所があります。
兵庫県の竹田城を訪れてみます。

 雲の上に浮かぶ「天空の城」、それが見えるのは9月〜11月の良く晴れた日の早朝です。
さすがに朝4時とはいかないので、昼間の竹田城を見ることにします。
「山城の郷」までバスで移動します。
「山城の郷」は、竹田城の石垣を遠くに臨むことのできる休憩処です。
土産物屋とレストランがあるだけの施設ですが、ここから先へは観光バスも含め一般車両の乗り入れが禁止されていますので、ここで指定のミニバスに乗り換えなければいけません。
人でごったがえしている中、竹田城までの「天空バス」を探します。
ちょうど次のバス待ちの列ができ始めたころで、30分間隔のバスを待つことにします。
この先に売店がないということなので、とりあえず飲み物を補給します。

 やがてやってきたバスは、ぎゅうぎゅう詰めの状態で、走り出しました。
運よく座れたのが悪いような、立ち客ばかりのバスです。
山道をゆっくりと登って行くバスは、山頂に近付いたと思うと離れるを繰り返して、「竹田城」の門までたどり着きました。

 ここで入城料を払って、先を進みます。
上り坂を20分近く歩いたでしょうか、最初の石垣に着きます。
と言っても天守閣があるわけでもなく、あちらこちらに石垣が見える山城跡です。
築城に関しては謎に満ちたところが多い城です。
「竹田城」は1431年に但馬守護である山名宗全により、出石城の出城として築城されました。
山名氏の武将 太田垣光景が初代城主に任じられ、それ以降7代にわたって太田垣家が城を治めます。
しかし、1577年と1580年の豊臣秀吉による2度の但馬征伐で、竹田城は落城し山名氏とともに太田垣氏は没落してしまいます。
そして赤松広秀が城主となり、土塁だったものから現在のような石垣積みの城郭を築きます。
「竹田城」の石垣の積み方は安土城と同じ穴太流石積みで、近江穴太衆(あのうしゅう)の手による自然石を使った石積み技法が用いられています。
最後の城主となった赤松広秀は、関ヶ原の役で西軍に属し敗北しますが、その後に徳川方として鳥取城攻めに加わり戦功をあげるものの城下に火を放ったとの罪で自刃し、「竹田城」は廃城となってしまいます。
山頂に続く石垣は、遠く麓の町からも偉大に見えます。
当時の城は、天守台を中央に、南千畳、北千畳、花屋敷が放射状に配されており、虎が臥せているような姿に見えることから、別名「虎臥城(とらふすじょう)」とも呼ばれています。

 この城跡ですが、一度だけ天守が見られた時があります。
映画「天と地と」の撮影で、ロケの期間に限り天守が築かれましたが、撮影後は撤去されています。

 帰りは再び「天空バス」の乗り場まで、と歩き出したのですが思わぬ標識を見付けてしまいます。
「表米神社まで800m」、これはバス停まで600m歩いて再びお金を払ってバスに乗るよりも、ずっとお得なのでは?
それが間違いの始まりでした。
「表米神社」への山道は、階段の杭も整備されて一見整備された山道に見えます。
ところが、この道を続いて来る人はひとりもいません。
登りではないので体力的にくたびれるのではないのですが、延々と続く下り階段で、次第に膝が笑ってきます。
その上、両足ともいまにも攣る直前です。
下りの方がつらいという意味が、良く判りました。

 30分以上歩いたでしょうか、眼下に神社の境内が見えてきました。
シートで覆われているのは相撲の土俵のようです。
それを取り囲むように、石を積み段々に作った桟敷があります。
ここが目指していた「表米神社」です。
丹後国の白井の浜に来襲した新羅の賊を討伐した武人とされる表米宿禰命が、祀られています。

 この先、山門を出たところに「寺町通り」が続きます。
通りの堀には錦鯉が泳ぎ、ゆったりとした時間が過ぎています。
「寺町通り」の由来は、この先に「静證寺」「常光寺」「勝賢寺」「法樹寺」が並んでいることから来ています。
「常光寺」には太田垣光景の墓が、「法樹寺」には赤松広秀の供養塔が祀られています。
と、ここまで歩いてきて見つけたのが、竹田城址登山口です。
ここからでも登ることができるのでしょう。

 「寺町通り」は、JR播但線に平行に走っていますが、線路の反対側には竹田の旧市街が広がっています。
和田山竹田家具が有名ですが、仏壇屋と家具屋がひっそりと店を出している程度です。
古い街並みが続く先に「旧木村酒造場」はあります。
広い敷地の一角が、「情報館 天空の城」になっており、観光都市竹田の発信基地となっています。

 これで、竹田の町ともお別れです。
JR播但線の「竹田駅」は、和風の旅館の入り口を思わせる構えになっています。
夢のある天空の城と、城下町を巡る1日でした。

   
旅の写真館