にっぽんの旅 近畿 兵庫 篠山

[旅の日記]

丹波篠山 

 兵庫県中東部にある篠山、本日はここ篠山を訪れます。
JR篠山口駅から市街地までは少し離れており、路線バスで15分ほど揺られて行きます。
二階町が市の中心地、ここで降りて市内を巡ります。

 関ヶ原の戦いで勝利した徳川家康は、豊臣方を抑えるために大阪城の周囲の軍備を固めて行きます。
篠山は重要な軍事拠点として、家康は1609年に常陸国笠間城から丹波国八上城に松平康重を移し、さらに新城の築城を命じます。
それが篠山城です。
守備に重要となる石垣建設は、近江の穴太衆を呼び寄せて強固で頑丈な城囲いを造り上げます。
それに対して天守閣は不要とし、京都二条城にみられるような平城を築きます。
大阪城を攻略することに急を要する家康は工事を急がせ、わずか1年足らずで城を造ってしまったのです。
初代城主は、家康の実子である松平康重で、松平家が8代受け継いだ後も譜代大名である徳川の息のかかった青山家が6代続きます。

 篠山城の本殿御殿、二の丸御殿の横に建てられた「大書院」は、明治維新後の城の解体の際も残されました。
しかし1944年に火災により焼失してしまい、今残っている建物は2000年に復元された入母屋造り、こけら葺きの屋根をもつものです。
「鉄門(くろがねもん)」を潜り「大書院」を訪れます。
城内は床・天井・柱と木がふんだんに使われており、贅沢造りをしています。
上段の間には、江戸時代初期の狩野派絵師が描いた屏風絵を障壁画として使う、贅沢なものです。
敷地内には、青山忠裕を祭神とした「青山神社」もあります。

 それでは城の北側の「青山歴史村」を訪れます。
篠山藩主青山家の別邸を展示したもので、長屋門は旧藩士澤井家のもつ木造入母屋造り、茅葺のものを移設しました。
藩士教育に使う漢学書を印刷するための版木や漢学書、藩印などが展示されています。

 その先、城の西側には、武家屋敷が広がっています。
「お徒士町通り武家屋敷群」です。
城の外濠沿いの南北に走る通りの左右には、いまも十数件の武家屋敷が残っています。
間口8間が割り当てられた家々は、茅葺の屋根を今に伝えています。
そんな中に「安間家資料館」はあります。
玄関の先には庭園を臨む座敷が、奥には台所、仏間、居間が続きます。
家具や古文書、武具などが展示されています。
訪れた時は、おりしも屋根の吹き替え作業中。新たな色をした茅が次々と葺き替えられていきます。
普段なら工事中で眺めも足場も悪いところですが、今回は実におもしろい様子を見ることができたのでした。

 さてここからは、元来た二階町に一旦戻ります。
途中、土産物屋の「大正ロマン館」に寄ります。
1923年に建てられたロマネスク様式の洋館です。
無料の休憩場所としても利用されています。
本日は、丹波篠山の特産品である黒豆を購入したのです。

 それでは篠山のもうひとつの名物である猪肉を求めて、バス通りに向かいます。
入ったところは、昼でもぼたん鍋が食べられる店です。
しばらく料理ができるのを待ち、出てきたのはグツグツ煮立ち美味しそうな湯気があがる鍋です。
そしてその表面を、猪肉がびっしり覆い隠しています。
猪肉は比較的歯ごたえのあるものですが、味噌の味が浸みて食べやすくなっています。
白菜、タマネギ、豆腐、エノキタケとともに煮込まれた猪を食べて、身体が芯から温まったのでした。

 お腹がいっぱいになった後は、近くにある「春日神社」を巡ります。
ここの境内にある能舞台は、篠山藩第13代藩主 青山忠良が1861年寄進したもので、今でも能楽が演じられています。
また絵馬堂に飾られている狩野尚信作の黒神馬も有名です。

 再びバス通りに戻り、東へ進路を取ります。
交差点のところに、木造の立派な建物が見えます。
「篠山市立歴史美術館」です。
篠山に伝わる武器や古文書、そしてこの地方の窯王地山焼の壺や器の数々が展示されています。
そして何よりも興味深かったのは、この建物が旧篠山裁判所だったことです。
篠山藩庁の建物を利用して、1870年に地方裁判所として使いだされました。
木造建築の裁判所としては日本最古のもので、新しい庁舎が完成する1981年まで現役で使われていたのです。
旧法廷が保存され、見学することができます。

 外に出てみましょう。
「篠山市立歴史美術館」のすぐそばに、「ほろ酔い城下蔵」なるものがあります。
鳳鳴酒造が構える酒蔵で、酒蔵の中が見学できます。
そして酒蔵だけに留まらず、ここでは麹室の中まで入ることができます。
発酵させるために必要な米麹を、杜氏が五感を使って愛情をもって育てた様子が目に浮かびます。
もちろんお酒もしっかり頂いてきました。

 バス通りは「尊賓寺」で行き止りになり、この三叉路で南北の通りに分かれます。
ここからは南の河原町を目指して、「立町通り商店街」を歩きます。
商店街とはいえアーケードがあるのではなく、バスが走る道路です。
途中、旅館や黒豆屋など木造の建物が昔のまま点在しています。
それらを眺めながら歩いて行くのも、楽しいものです。

 ふと、左手に古風な家々が通りを見付けます。
ここ河原町では「河原町妻入商家群」という、商家の古い街並みが続く場所があります。
醤油屋を営んでいた「西坂家住宅」、「川端家住宅」など、市指定の文化財に指定されている家がありますが、その以外のどの家を見ても今に残る貴重なものばかりです。
「篠山能楽資料館」もそんな町屋のひとつです。
千本格子や袖壁、うだつなど、当時の姿がそのまま残っています。
1軒1軒の家並みを眺めながら、ゆっくりを通りを進んでいくのでした。

 ちょっと寒い冬の1日でしたが、歴史に触れながらも美味しい鍋をつつきながら身体を温める・・・
そんな贅沢感を十分に味わった1日でした。

   
   
 
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