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[旅の日記]

長田と鉄人28号 

 「鉄人28号が長田にやって来た」
そんなうわさを聞いて無性に出かけたくなるのは、おじさんになった証拠でしょうか。
主人公の金田正太郎がティッシュボックス大の金属製の箱にレバーのついたリモコンを操作し、正義の味方のロボット「鉄人28号」を操るアニメは、当時ワクワクしながら見ていたものです。
そのヒーローが何十年も経った今、現れたとなると居ても立っても居られなくなったのです。

 鉄人28号は長田にいるのですが、今回は3駅先の須磨に先に寄ります。
JR須磨駅を降り、2Fになった改札口から階段を下りると、目の前が砂浜です。
夏なら海水浴客で賑わう須磨海岸ですが、肌寒くなった秋の季節では散歩に来たお年寄りや家族連れ、それに釣り客がのんびりと時間を過ごしています。
そう言えば、釣りを始めようかと竿を買ったことを思い出します。
もう2〜3年前のことですが、その時の竿は眺めただけで確か押し入れに眠っているはずです。

 須磨駅から須磨海岸液まで、海辺の歩道を歩いて行きます。
途中数名の若者が野球をしています。
バッターが見事なホームランを放ち、すごいなと感心していると聞こえてきた言葉は「本気で売ったからアウトとちゃうか」
なるほど、狭い浜辺での本気モードはルール違反と言うことなのですね。

 歩く先に見えてきたのは、今まで見たこともない真っ赤な灯台です。
これは旧和田岬灯台が、1963年の廃灯によってここ須磨海浜公園に移設されたものです。
和田岬灯台は、1871年に木造の灯台が和田岬砲台の横に建てられ、1885年にはこの六角形の形をした赤い木造の灯台に建替えられました。
現存する鉄骨製の灯台としては日本最古のもので、色といい角ばった形といい非常に珍しいものです。
須磨海浜公園には、その他にもラッコで有名な須磨海浜水族園があります。
本日は先を急ぎますので、海岸線からお別れしてJR須磨海浜公園駅に向かいます。
ここからは2駅ですが、新長田駅まで電車で移動します。

 JR新長田駅では、商業施設ジョイプラザの西に面する若松公園の広場に、鉄人28号は立っていました。
2009年に建設された高さ18mの鋼鉄製の巨大な鉄人が、右手を空に伸ばして立っています。
囲いがあるわけでもなく、足元まで行って見上げることも可能なのです。
他の人に交じって、下から横から遠くから写真を撮って置きます。
となりのジョイプラザでは、2階に見渡すための場所も設けられており、そこに行っても撮影です。
この鉄人のモニュメントだけでも、感慨に更け結構時間を取ってしまいました。

 ここから大正筋商店街を南下します。
KOBE鉄人三国志ギャラリーを見に行くためです。
実は阪神・淡路大震災で決定的なダメージを受けた長田の街ですが、復興のためのさまざまな検討が行われました。
この時、地元出身の横山光輝の漫画の大ヒットに因んで、鉄人プロジェクトなるものが結成されました。
長田の街に再び賑わいをとして、鉄人28号と三国志を目玉とした町興し事業なのです。
ギャラリーでは、鉄人モニュメントの企画段階から、設計、製造の様子がビデオになっており紹介されています。
そしてこのギャラリーには、無料で入れるところも嬉しいところです。

 鉄人とともに街の目玉となっているのが、三国志です。
街には、関羽、孔明などの石像が立てられており、三国志館なる展示場(休憩場と言った方が適切かも)が商店街の一角にあります。
ただ鉄人の衝撃と感動があまりにも大きかったために、三国志の意識が薄れてしまったことも事実です。

 さて長田駅に戻ります。
途中阪神高速の下をくぐるのですが、震災の時にはこの橋脚が何kmにもわたってものの見事に横倒しになったということですから、驚きです。
今ではその面影すら感じさせません。
さらには駅を越え、駅北側の徒歩で2km程先にある長田神社を目指します。
JRに沿って神戸側に進み、新湊川に出会ったところで川上に向かって北上します。
六甲山から流れ出る豊富な水によって、かつての湊川はたびたび氾濫を起こしていました。
その後川は新湊川としてつけかえられますが、ビルやマンションの間を抜けていく川は川幅が取れずに深く切り立ったコンクリートで固められた川となってしまいました。
阪神・淡路大震災でも損害を受け、河辺には震災の慰霊碑が静かに立っていました。

 高速長田駅を越えた辺りで、新湊川と苅藻川に分かれます。
目指す長田神社は苅藻川の方で、ほどなく行くと川に架かる神社の赤い欄干が目に入ります。
日本書紀によれば、201年に皇后が新羅より帰還中に武庫の水門で神託を受け、創祀されたといわれています。
2001年には鎮座1800年を祝ったことからも、由緒ある神社であることがわかります。
廣田神社、生田神社とともに神戸を代表する神社のひとつなのです。

 さてここから高速長田駅を越え、JR兵庫駅まで歩いて、本日の日程は終了したのでした。

 
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