にっぽんの旅 近畿 兵庫 城崎

[旅の日記]

城崎温泉 

 城崎温泉駅。ここが今日の散策の起点です。
JR山陰本線のJR城崎温泉駅に降り立った本日の目的は、温泉と蟹。
城崎温泉に浸かり、日本海の蟹を思いっきり食らう夢が今日叶うのです。
と言っても思いついたのが、昨日のこと。
昨日の今日でそんなに都合のいい話があるのかと半信半疑ではありましたが、とにかくやってきました。

 城崎温泉駅を出ると、駅の隣に早速1つ目の温泉があります。
「ふれあいの湯」で、外には足湯場があり、多くの人で賑わっています。
温泉といよりはホテルのような建物で、少なくとも外から見る限りでは昔ながらの銭湯という雰囲気には程遠い近代的な造りです。
駅前だから仕方がないのでしょうか。

 まずはおなかを膨らませようと、駅前通りのお店を眺めて歩きます。
さすがに店先にも蟹がずらりと並んでいます。
そのうちの1軒に魚屋さんが営んでいる食堂があると聞いて、入ってみることにします。というよりあらかじめ調べてきて、そこに決めていたのです。

 コースの料理は少し値が張ったのですが、今日だけは大盤振る舞い。海の幸いっぱいの食事の注文です。
まずはお刺身でビールをゴックリ。最高です。
刺身といっても、ここでは蟹の刺身が出てきます。
足の殻を取り除いた蟹足は、口に含むと何とも言えない甘い蟹の身が広がります。
焼き、炊きなど蟹の食べ方は数ありますが、刺身は蟹の甘味を堪能することができます。
蟹と並んで甘エビも新鮮です。
そして、口直しにはアワビのステーキ。何とも贅沢な口直しです。

 次なる蟹は、しゃぶしゃぶです。
生の甘味を活かしつつ、さっと湯に通して食べるのもおつです。
湯につけた途端、透明の蟹のみはさっと白く変わり、湯につける時間が勝負です。
火を通すと鍋のような味になるものの、漬けた時間に比例するように甘味が落ちていきます。
かといって、鍋も味わいたい。
1回ごとに時間を調整しながら、好みの味を求めていきます。

 蟹を中心にお魚を一通り味わった最後の締めは、海鮮丼です。
お腹はすでにいっぱいの状態ですが、丼を見るとこれも食べたくなってしまいます。
ということで、なんとかすべてをたいらげることに成功しました。
外を行き交う人を眺めながら、窮屈になったおなかを休めます。

 しばらくの休憩を取った後は、本日の2つ目の目的である温泉巡りです。
温泉街は、大谿川に沿って家々が並んでいます。
駅前の「ふれあいの湯」を含み7軒の外湯がありますので、好きなところに行ってお風呂に入ることができます。

 大谿川で最初に目にする温泉が「地蔵湯」です。
ここもホテルを思わせるような建物ですが、和風とうろうをイメージしているということで、六角形の広い窓は玄武洞を模ったものだそうです。
この湯の泉源から地蔵尊が出たことでこの名が付いており、此来庭内に地蔵尊が祭られています。

 大谿川は、川の両側に柳が植えられており、垂れた枝のごとくまったりとした時間を忘れさせてくれるような光景をかもちだしています。
そこに石橋が架かっており、風情のある景色です。
一方水面に目を向けると、そこには鯉がゆったりと泳いでいます。
都会のせせこましさは、ここではこれっぽっちも感じません。

 さて先を進みましょう。
和風の感じの良い温泉が「柳湯」です。
感じが良いのですが、ここは子授安産、子授けの湯なのです。
お呼びじゃないみたいです。
中国の名勝西湖から移植した柳の木の下からお湯が湧き出たということで、「柳湯」と呼ばれています。

 もう少し先には、黄色い壁の「一の湯」があります。
大きな門構えで、江戸中期温泉医学の創始者後藤艮山の高弟香川修徳が、当時新湯といったこの湯を天下一と推賞したことから、こう名づけられました。
桃山方式の歌舞伎座を思わせる建物で、町の中央に位置します。

 そして入りたかったのが、「御所の湯」です。
南北朝時代の歴史物語「増鏡」に1267年に後堀河天皇の御姉安嘉門院が入湯された記事があり、「御所の湯」の名はこれに由来しています。
江戸時代には、西隣に陣屋がおかれ「殿の湯」または「鍵の湯」と呼ばれた湯もありましたが、現在は「御所の湯」に合せられています。
火伏防災・良縁成就、そして美人の湯という効能書きがあります。

 その先で、大谿川から少し奥まったところに、「まんだら湯」はあります。
商売繁盛・五穀豊穣の湯で、銅が緑青になったような色合いを示す屋根が印象的です。
717年に、温泉寺開祖道智上人の曼陀羅一千日祈願によって湧き出たものです。
屋根は御堂を模し、入口は唐破風、山すその緑に包まれて清楚な趣をもっています。

 ここまで来れば、その先には温泉寺があります。
温泉寺は720年に城崎温泉を開いた道智上人により、738年に開創された古刹です。
先ほど訪れた「まんだら湯」がここ城崎温泉の起源で、聖武天皇より「城崎温泉の守護寺」として賜わったとされています。
温泉街の賑わいとは異なり、温泉寺にはひっそりとした静けさがあります。

 温泉寺の入り口は「薬師公園ポケットパーク」という小さな広場になっています。
そしてここに泉源があり、岩に噴き出た温泉を見ることができます。
温泉は岩を伝って流れるため、赤茶色に変色した岩からも、お湯の力を感じることができます。
その横では温泉を利用した温泉卵が作られていました。

 温泉寺の通り向かいに、7つ目の外湯である「鴻の湯」があります。
夫婦円満・不老長寿、しあわせを招く湯で知られており、外湯の中でも最も古くから開けた湯です。
舒明天皇の時代に、こうのとりが足の傷をいやしたことから発見されたといういわれにもとづいて名づけられました。

 さて、何軒の温泉に入ったかって? ご想像にお任せしましょう。
日本海の蟹を食べて、ゆったりと街を歩き、飽きたら温泉に浸かる。
そんな、夢のような1日でした。

旅の写真館