にっぽんの旅 関東 山梨 昇仙峡

[旅の日記]

昇仙峡 

 本日の行先は、甲府の昇仙峡です。
甲府駅前バスセンターから、山梨交通のバスに乗り込みます。
当日は台風一過の秋晴れで、昇仙峡行きのバス停にもリック姿の人の列ができており、発車前なのにバスは満員の状態です。
ですが、わざとそのバスを乗り過ごして10分後のバスを待つことにします。
実はその方が、経路の違いで目的地の昇仙峡には早く着くのです。
満員のバスが行ってしまったあと、私の乗ったバスには自分の他には1人しか居らず、空いているのはいいのですが逆に心配になるほどでした。

 市街地を抜けると、力強いエンジン音あらわにバスは坂を上っていきます。
やがて家の姿もまばらになってき、出発から30分ほどで昇仙峡口に着きます。
今回はここで降りずに、終点まで乗っていきます。
バスはグリーンラインを通り終点の昇仙峡滝上に着いたのは、甲府を出発してから50分後のことでした。

 本日はガイドマップもなく、先ずは地図の入手です。
普通なら地図の入ったちらしの1つでもあるのですが、どこを探しても見当たりません。
そんな中見つけたのは、土産物屋の店先にある「昇仙峡ガイドレシピ」という8枚もののガイドです。
厚紙の上表に絵をふんだんに使ってコースの説明がされています。
そして何よりも良いのは、首から吊るす長さ調整のできるひもが付いているのです。
100円という手軽さも手伝って、つい手を出してしまいました。

 さあこれで準備万端。
昇仙峡口目指して、本コースの目玉から順に約5kmの道のりを下っていきます。
最初に目にするのは、「千娥滝」です。
日本の滝百選にも選ばれたところです。
30mの高さがある滝からの水は岩肌を滑らかに流れ落ち、本来の滝のもつ荒々しさというよりは、女性らしい美しさが伝わってきます。
そして滝の両端の1枚岩の巨大さには、驚かされます。

 遊歩道は、川に沿って続いています。
手を伸ばせば岩肌に触ることができ、岩の隙間を縫うように道が造られています。
そんな中でも「石門」と呼ばれるところがあります。
花崗岩が門の形をしているのですが、上部にわずかな隙間があり、いつ壊れてくるのかスリリングな場面です。
この門、山上から見ると滑らかな岩肌なのですが、山下からはごつごつとした感じで、見る方向によってこうも変わるものなのですね。

 川には巨大な岩がごろごろと転がっており、その隙間を水が流れていきます。
水がせき止められ窮屈な隙間を流れるものですから、当然のごとく白く尾を引いた勢いのよい流れになっています。
これがまた岩を侵食し、新たな流れに変わっていくのでしょう。
川の流れを見ているだけでも、飽きることがありません。

 さらに歩いて行き、ふと振り返ると、「覚円峰」が眼に入ります。
昇仙峡で「千娥滝」と並ぶ観光スポットです。
昇仙峡の主峰「覚円峰」では、覚円が畳数畳ほどの広さしかない頂上で修行したと言い伝えられています。
天に向かってそそり立つ岩山の中でも、ひときわ際立つ荒々しさがあります。

 すこし歩いたでしょうか、右手に川を跨ぐ橋が架かっています。
橋の向こうには「羅漢寺」があります。
本殿の向かいの建物には、五百羅漢が祀られています。
ところがこの辺り「熊に注意」のポスターが目立ちます。
日付も書かれており、詳しく読んでみるとわずか2週間前に出たとは。
これはいけない、人の多い遊歩道に引き返すことにします。

 その先には、「愛のかけ橋」が。
二人で渡れば結ばれるとの看板があります。
ひとりで訪れたので渡ることには興味がなかったのですが、気になったのは橋の手摺です。
縦格子を良く見ると、武田氏の家紋が浮かび上がってきます。
甲斐武田氏の勢力は、ここ昇仙峡まで及んでいたのには恐れ入りました。

 さてこの先、川には大きく不思議な形をした奇岩が並んでおり、それぞれに名前が付いています。
えぼし岩、ふぐ岩、はまぐり岩、松茸岩、そして猫、熊、らくだまでいるのです。
さて、四角いトーフ岩、そして大砲岩が見えてくれば、この散策も終盤です。
昇仙峡口の土産物屋のにぎやかさが聞こえてきます。
もっとも観光客の賑やかさというよりも、各駐車場での車の奪い合いで声を張り上げているといった感がぬぐえないでもないのですが・・・
ここまで来ると、白波をあげて流れていた水も、何事もなかったかのような静かな流れになっています。
そして、バス通りである「長瀞橋」が今回の終着点となりました。

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