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[旅の日記]

富士吉田から忍野八海 

 日本の美、富士山の神秘に浸るために富士急の富士吉田を訪れます。
富士吉田に着いたのは21:00過ぎで、食事を取ろうにも駅前はひっそりしています。
やっと見つけたラーメン屋で夕食を取り、その日は富士吉田で一泊したのでした。

 翌日、目を覚ますと宿の前には大きな鳥居が建っています。
これが金鳥居と呼ばれるもので、鳥居に書かれている文字は「富士山」です。
そう、晴れていればこの金鳥居の奥には富士山が見えるはずだったのです。
天気が悪くて、残念です。

 その足で北口本宮富士浅間神社に向かいます。
途中には、旧外川家住宅があります。
代々富士山の御師を勤めてきた外川家で、富士山信仰を支えてきた貴重な建物です。
1768年に建築された主屋ですが、時間が早かったのかまだ門が閉ざされています。
さらに先を進みましょう。

 北口本宮富士浅間神社は、駅からは1kmほど歩いたところにあります。
両側を杉に囲まれた参道を歩いて行くと、富士浅間神社の大鳥居が眼に入ります。
木造の鳥居としては日本最大のものです。
そしてその奥には神楽殿を挟んで、拝殿が広がります。
110年に日本武尊(やまとたけるのみこと)が、箱根足柄から甲斐に向かう際に寄られ、富士山の神霊を御遥拝されたことから、祠を建てて祀ったのが始りとされています。
その後、村上光清が、幣殿、拝殿、神楽殿等を造営しました。
浅間神社は数多く存在していますが、いずれも富士信仰に基づいて富士山を神格化したものです。
ここは北口本宮ですが、富士山南麓の静岡県富士宮市に鎮座する富士山本宮浅間大社が総本宮とされています。

 さて、ここからバスに乗り込みます。
富士山レーダドーム館、忍野八海と進みます。
大橋でバスを降り、富士山の雪解け水が80年の歳月をかけて湧きだす8つの池からなる忍野八海に向かいます。
その昔、忍野村には宇津湖という湖がありましたが、延暦の富士山の大噴火での溶岩流により、山中湖と忍野湖に分かれてしまいます。
その後、忍野湖は枯れてしまうのですが、富士山の伏流水の湧出のより今日の8つの池となるのです。

 まず訪れたのが湧池です。
ここは神秘的な緑色の湖面が鮮やかな池です。
八海で最大の湧水量を誇り、水中に張り巡らされた洞窟は池底から最奥部まで約55mもあることが確認されています。

 その先には大きめの中池があり、「神の水」では湧き出す水を飲むことができます。
ここは八海には数えられない人工池で、池の脇には土産物屋は雨をしのぐ人で賑わっています。
湧池と中池の一角が観光バスからの客でごった返している所ですが、その先に向かいます。

 この先には逆さ富士が映るという鏡池があります。
残念ながら雨のため富士山は雲隠れ、そして水面は曇った鏡になってしまい、逆さ富士はお預けです。
前回来たときには、素晴らしい富士山が映っていたのですが。

 そして、菖蒲池が続きます。
菖蒲が多く生息する池です。
ところが運悪くこの時は護岸工事中で、池の縁には木枠が組まれています。

 それでは来た道を一旦戻り、桂川脇を歩きます。
そこには濁池があります。
元々の池は澄んでおり飲料水を取るのに使っていたのですが、ある日見るからにみすぼらしい行者がやって来て一杯の飲み水を求めました。
しかし、乞食と思ったその家の老婆は無愛想に断ってしまいます。
その途端に池は急に濁ってしまったという伝説があります。
今は濁りはなく、池にいっぱいの水をたたえています。
もっとも雨で水面が波打っているので、ここが濁った池なのかの判断がつかないのです。

 道を逸れ、人影のまばらな場所には銚子池があり、ここはゆっくりと感慨に浸ることができます。
銚子池には悲しい伝説があります。
ある家の厳粛な結婚式の最中、花嫁がおならをしてしまいます。
その音は皆に聞こえ、いたたまれなくなった花嫁は、席は外し銚子を抱いてこの池に身を投げてしまいました。
その後は池底に美しい女の姿が映ったと言われています。

 さらに川沿いを歩いて行くと、ヒキガエルが娘をさらったと言い伝えのあるお釜池があります。
この池のほとりにあった家に、年老いた父親と二人の美しい娘が住んでいました。
ある日のこと妹が洗濯をしていたところへ、突然ヒキガエルが現れ娘を強引に水中に引き込んでしまいます。
それを知った姉は、近所の人に助けを求める一方、畑仕事に出ていた父親を呼んで妹の救出を試みます。
しかしいつまでたっても妹は帰えらず、遺体も浮かんでこなかったということです。
それ以来、父親と姉はこの池の畔の家に留まり、妹の冥福を祈り続けたということです。
小さな池ですが、人目に付かないひっそり場所にあり、しばらく座り込んで池を眺めてしまいました。

 その他にも底抜池と出口池があり、中池を除く自然の池が8つ存在しています。
これら8つの池をもって、忍野八海と呼ばれているのです。

 青く澄み渡る水を湛えた現在の忍野八海ですが、妙な話もあるのです。
富士山から流れ出た溶岩により造られた忍野八海は、池の底にも多くの洞窟があります。
この入り組んだ通路を撮影しようとカメラマンが潜るのですが、入り組んだ穴であるために迷子になり二度と出てこれないことが度々起こっているのも事実です。
清い水に隠れた怖い話です。

 路線バスの旅は、まだまだ続きます。
半時間以上バスに揺られて、山中湖交流プラザで降ります。
本来はここから湖面に浮かぶ逆さ富士が見えるところですが、あいにくの雨で逆さ富士どことが、富士山の姿すら見ることができません。(あまりにも寂しいので新幹線の新富士辺りから見た富士山を最後に載せておきます)
おまけに次のバスは1時間後。
グラウンドではテントが並びなにやらB級グルメフェスティバルらしき準備が始まっていますが、店が開くまで待つほかありません。
雨の中を湖面の遊歩道を歩いて、小1時間の時間をつぶすことにしたのでした。

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