にっぽんの旅 関東 東京 葛飾柴又

[旅の日記]

葛飾柴又 

 寅さんと言えば、知らない人がいないくらい有名な日本を代表する邦画です。
「私、生まれも育ちも葛飾柴又です。」で始まる渥美清演じるフーテンのトラ(車寅次郎)が啖呵を切る場面で有名な「男はつらいよ」シリーズの松竹映画です。
今日はその地を訪れることにします。

 京成高砂駅から金町行に乗り換えて駅、柴又駅で下車します。
改札を出る前に向かいのホームに通じる踏切を越えなければならない点など、昔の駅を感じさせます。
だってここ柴又駅まではかろうじて複線になっているのですが、ここから先は単線で昔はレールに乗った客車をはっぴを着た者が人力で押していた帝釈人力鉄道だったのですから。
駅前広場には寅さんの銅像が立っており、像とともに記念撮影の順番を待つ人でごった返しています。
それでは帝釈天に向かいましょう。

 葛飾駅から200m続く帝釈天までの参道の両側には、だんごや、せんべいやが所狭しと軒を連ねています。
折角ここに来たのだから、寅さんの気分になって私も草だんごを食すことにします。
1本150円の草だんごには、こぼれ落ちんばかりの小豆が乗っています。
これを落とさないようにそろりと口に入れて味わいます。
昼を食べてきたというのに、それは別腹ってとこでしょうか。
そのほかにも昔懐かしい透明の入れ物に詰まったせんべいが店頭に並んでします。
周りを見ながら歩くとあっという間に帝釈天に着いてしまいました。

 寅さんが産湯を使ったという柴又帝釈天題経寺は、1629年(寛永6年)建立の寺です。
寺の外壁は、法華経説話が描かれた木彫りで飾られており、それを見て回ることができます。
映画はとっくの昔に終わったというのにここも寅さんの影響で、休日ともなれば今でも人の絶えることがありません。

 さて次は寅さん記念館です。
「男はつらいよ」シリーズ全作品の展示と、名場面の上映、それにセットを再現した部屋があります。
それにしても寅さんの人気もさることながら、相手の女優さんにもそうそうたる名前が並んでいることに、今更ながら気づいたのでした。

 ひとしきり寅さんに酔った後は、川辺に出て外の空気を吸います。
江戸川の土手に登り、のどかな川辺の風景を見ながらぶらぶら歩きます。
そう、ここと対岸を結ぶ渡し船があるのです。
歌にもある「矢切りの渡し」です。
こちらはその演歌の影響でしょうか。
わざわざ対岸まで行き、その足でまた戻ってくる観光客が大勢いたのでした。

 私は江戸川上流に見える次の鉄橋のところまで、約1.5kmの距離を歩くことにします。
土手の上はサイクリングコースにもなっていて、行き交う自転車に交じって初夏の青空の下でのんびり金町駅までの散策を楽しみます。

 このまま帰ってもいいのですが、隣の亀有駅でぜひ見たいものがあります。
秋本治原作の「こちら亀有交番前派出所」の舞台となった亀有です。
北側駅前には、主人公の破天荒な警察官 両津勘吉の制服姿が、南側には祭り姿の両津がいます。
そして、至る所に小さめの麗子や中川、本田の像が点在しています。
寅さんといい、両津といい、何か似たような生き方をした二人です。

 そんな庶民派の両津に似合う食べ物が、JR常磐線で4駅の南千住にあります。
今や全国区となった焼きそばパンですが、南千住の「野澤屋」が発祥の地なのです。
パンと焼きそばを別々に販売していたところ、客から面倒なので焼きそばをパンに挟んでくれとの要求に応えたことから、焼きそばパンは生まれました。
おもしろい話です。

 本日の散策は、これにて終了。
葛飾の1日を楽しんだのでした。

 
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