にっぽんの旅 関東 東京 原点

[旅の日記]

日本の原点(日本橋・国会議事堂・新橋) 

 今回の旅の目的は「日本の原点」です。
と、大きなことを言っていますが、要するに名所・旧跡を観て廻ろうというものです。

 そして今日の起点は浜町です。
高速道路の走る隅田川を散策した後は、浜町公園から延びる甘酒横丁を西に進みます。
途中明治座があるということで期待をしていたのですが、名前に似合わず立派なビルとなっていました。
土曜日の朝の甘酒横丁はまだひっそりしており、もともと甘酒屋があったということで名付いたこの通りですが、和菓子や呉服屋が今まさに店を開こうとしています。

 人形町通りで左折すると、そこには水天宮があります。
日本橋七福神の1社であるこの神社は、すでに人で賑わっていました。
周りには門前町であった証のせんべい屋が軒を連ねていました。
それとともに人形焼きの店もあります。

 ここで立ち寄ってみたい店があります。
「玉ひで」という、1960年創業の老舗です。
ここは親子丼発祥の地と言われているところなのです。
店の前には既に列ができており、10分ほど待たされて中に通されます。
親子丼だけですが、軍鶏肉の部位やすき焼き風にするかどうかで、いくつかのメニューがあります。
出てきたのは、程よく緩い部分を残し卵でとじられた丼です。
ボリュームある肉、卵の甘さ、それらに合わせた出汁が、絶妙のコンビネーションです。

 さて本来の目的である日本の原点の2つ目は、その少し先にあります。
足を三越前までさらに運び、高速道路の高架の下にひっそり残っていたのが「日本橋」です。
日本橋川に架かる二連の石橋こそが、日本のすべての道路の始点なのです。
ただ残念なことに、頭上には首都高速道路が迫っており、橋に立つ欄干でさえもその上部が高速道路の隙間に入り込んでいる始末です。
もっともこの頭上の道路を地下に潜らせようという壮大な計画があるということですが、その時には本来の日本橋の姿がよみがえることでしょう。

 日本橋三越の裏手には日本銀行本店があり、西洋建築のたたずまいを見ることができます。
そして日本銀行の道向かいにある貨幣博物館は、一見の価値ありです。
入場無料ということが嬉しかったことの一因でもありましたが、和同開珎から始まる日本のお金の歴史、悪銭で悩まされた記録、金本位制への移行、そして世界のお金が順を追ってわかりやすく説明されています。
教科書から飛び出てきたような金貨なるものを眺めて、ちょっと裕福になった錯覚をしたのでした。

 さて先を急ぐことにしましょう。
地下鉄で国会議事堂前まで移動し、次に向かったのは皆さんご存知の国会議事堂です。
もちろん日本の政治の原点です。
平日であれば中を見学できるということですが、土曜日の今日は外からの見物です。
ドイツの建築家エンデ、ベックマンが設計した左右対称の建物は地上3階、中央部4階のつくりで、日本各地の石をふんだんに使って作られました。
中を見れないということで、近接する憲政記念館に行くとこにします。
ここでは幕末から民主主義を訴え国会制度を作り今の国会に至るまでの様子が、映画と展示で紹介されています。
これまた無料で入れたというのは、嬉しかったです。

 ここでもうひとつの日本の原点があります。
憲政記念館と一続きの国会前庭庭園のなかに、日本の水準点を示す日本水準原点標庫があるのです。
石造りの小さな建物は、気をつけなければ今は使わなくなったトイレだと間違えるほどのものです。

 さて国会前の物々しい装甲車を横目に、日比谷公園へと向かいます。
皇居の濠伝いに進んで行けば、桜田門に出会います。
その道路向かいには、法務省旧本館があります。
赤煉瓦造りの、実にきれいな建物です。
法務資料展示室が中にあるということですが、入口の門は高く警備でしっかりと固められています。
時間もないことですから、目の前まで来た日比谷公園へと向かうことにします。

 日比谷公園では、梅雨の合間で晴れたこの時とばかりに多くの人が集まっていました。
ここでしばしの休憩です。
1903年に作られたこの公園は、日本初の洋式近代公園なのです。
ここもまた今日のテーマの見本の原点だったのです。

 日比谷公園を出ると、帝国ホテルを目にすることができます。
フランク・ロイド・ライトの設計により、1890年に開業したこのホテルは、ニューオータニ、ニューオークラとともに、日本の三大ホテルの1つです。
震災にも空襲にも耐えたこのホテルは、今や近代的な高層ホテルと化してしまいましたが、都心の一等地で堂々とした趣があります。
なお当時の様子が明治村で復元されているとのことです。

 いい加減に歩き疲れた時に、やっと新橋へ到着しました。
鉄道発祥の地である新橋駅では、それを記念してSLが展示されています。
本当の発祥の地は、貨物駅である汐留駅となりそしていまや廃駅となってしまいましたが、当時を再現するために汐留シオサイトなるものができていました。
私が25年までに関東に住んでいた時にはなかったものです。
当時の駅を模して造られたレストランの裏手に、鉄道の起点を示す旧新橋停留所が復元されています。
当時の線路とホームがビルの谷間のオアシスとして、思いのほかマッチしていました。

 所変わって、鉄道と言えば東京駅を語らずして本日の散策を終わるわけにはいきません。
日本の表玄関とも言うべきターミナル駅で、日本一多いホームのある駅で、在来線が地上5面10線と地下4面8線の合計9面18線、新幹線が地上5面10線、地下鉄は地下1面2線の大きさを誇ります。
赤レンガ造りの丸の内口駅舎は辰野金吾らが設計したもので、1914年に竣工しました。
駅の南北2か所にはドーム状の屋根があり、ローマのパンテオンを模したデザインになっており、中から見栄げることができます。
駅舎にはホテルも併設されており、皇居まで延びる大通りを一望することができます。
ただし値段も一流で、今回の散策で泊まるわけにはいきませんでした。

 さてここでちょっとお腹がすいてきました。
小腹を満たすためにメロンパン買い、パンを片手に歩いてみます。

実はこのメロンパンも、東京発のものなのです。
発祥は駒込のパン屋「木村屋」とも、帝国ホテルの元ロシア宮廷の腕利き職人とも言われていますが、いずれにしても日本独自のものです。
他にも、日本一の高級繁華街の銀座、そして山手線の反対側であり夜の顔も持つもう一つの繁華街新宿で、日本の原点は締めくくりとします。

     
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