にっぽんの旅 関東 栃木 奥日光

[旅の日記]

奥日光 

 冬の奥日光の旅です。
日光は、浅草からはわずか2時間半の場所です。
その日光駅から東武バスに乗り、中禅寺温泉に向かいます。
市街地を抜けるとバスはいろは坂を登り始めます。
日光市街から奥日光への行きは、第二いろは坂を通ります。
紅葉のシーズンは大渋滞のこの道ですが、今の季節に奥日光を訪れる人はまばら。
特に昨晩からの雪で、外に出るのも気が引けてしまいます。
そんな中、白銀の世界をバスはうねりを上げて坂を登って行きます。
50分程走ったでしょうか。明智平を越えた辺りからエンジン音も静かになり、下り立ったのは中禅寺温泉です。

 真っ白なバスロータリーにポツリと降ろされ、ここからお目当ての華厳の滝に向かいます。
周りの店もようやく開こうとしたところで、歩道の雪もまだ積もったまま。
行く道を選びながら、5分ほど歩いて華厳の滝入口に辿り着きます。
ここからはエレベータに乗り、滝の下まで一気に下ります。
ここは、袋田、那智の滝と並ぶ日本三大名瀑のひとつに数えられています。
100mの高さから落ちる滝は迫力があり、以前訪れた時の緑の中のきれいな滝ことを思い起こさせます。
ところが今回は真冬の滝。凍りついた神秘的な冬の姿を見たくて、今日はやってきたのです。
つららを身にまとった老婆のような姿で、前とは違った趣があります。

 滝を眺めた後は、中禅寺湖まで歩きます。
バスターミナルから見ると、華厳の滝と中禅寺湖は逆の方向。
道路に架かる二荒山神社の朱色の大鳥居を目指して、滑らないようにへっぴり腰で進んでいきます。
意気込んで行ってみたものの、霧で対岸が見えない中禅寺湖は、降り注ぐ雪の寒さが身にしみたのでした。

 ここから再びバスに乗り、30分かけて終点の湯元温泉まで向かいます。
中禅寺湖畔を通り、龍頭の滝、戦場ヶ原を抜け、湯滝のある湯滝入口。
バスはさらに湯ノ湖を望みながら、最終地である日光湯元に到着です。

 バス停から程なく歩いたところに、雪がなく地肌の見えている場所があります。
もちろんそこに行くには、雪を描き分け進む必要があったのですが・・・
その地肌の見えた場所が、湯の平湿原に位置する泉源です。
硫黄の臭いが立ち込み、もくもくと湯気を上げた小屋がいくつも並んでいます。
今回は日帰りですが、一度ゆっくりと湯元の温泉に浸かってみたものです。
で、お土産をと思ったのですが、この時期そんな店などありもしません。
ホテル以外で唯一空いていたビジターセンターで、奥日光の動植物の展示を見て回ります。

 さて今来た道を日光駅まで帰るのですが、今回どうしても寄りたかった龍頭の滝に立ち寄ります。
バスの運転手に尋ねると「行けないことはないがその装備ではね」と、普段着・皮靴の私を眺めて返ってきた言葉でした。
でもここまで来たからには寄らない訳にはいかない。
行くと堅く決めたのですが、降ろされたバス停は坂の途中の白銀の中。
バスを降り際に「まっすぐ行くと滝があるよ」と言われたものの、内心心細かったのでした。
人気のない場所に、確かに「龍頭の滝」と書かれた看板だけはあります。
奥に進むと、確かにありました。川の傾斜に沿って白い筋をなびかせ緩やかに流れ落ちる滝が。
そして滝に沿うように、階段状の道が続いています。
今日付いた足跡でしょうか。1人の足跡が階段にくっきりと刻まれています。
雪に埋もれないよう、その足跡に重ねるように足を合せながら踏み進みます。
滝は以前雪のない季節に見たのと同じ、思った通りの優しい滝です。
華厳の滝・龍頭の滝・湯滝と3つの滝があるのですが、いつ見ても私はこの滝が一番好きです。
足先が凍えてきていることに気付きましたが、次のバスが来るまでしばらくこの滝を眺めておきます。

 再び帰りのバスに乗ったのはその20分ぐらい後だったでしょうか。
温かい車内は、天国のようです。
途中から乗り込んできた中国人の団体のしゃべるやかましい声を聞きながら、第一いろは坂を揺られて日光に帰って行ったのでした。

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