にっぽんの旅 関東 栃木 足尾

[旅の日記]

足尾銅山 

 本日は、わたらせ渓谷鐡道に乗って足尾銅山まで旅します。
「わたらせ渓谷鐡道」は、風光明媚な渡良瀬川に沿って進むのどかな列車です。
ダイヤが合えばトロッコで列車に乗ることができ、周りの風景を満喫することができます。
しかし11月になった今では、窓ガラスのない列車に乗るには辛いものがあります。
おとなしく、桐生発の普通の列車に乗り込みます。

 ディーゼルのうなりをあげながら、2両編成の列車はゆっくりと走り出します。
紅葉の季節とあって、車内は立っている人こそはないものの、一通り席は埋まっています。
ガタゴトガタゴト、縦に横に揺られながら列車は走っていきます。
神戸(ごうど)駅を越えると、長い草木トンネルに入り、暗闇の世界となります。
やがて陽の光が差しトンネルを出た途端、次時のトンネルまでの一瞬の間、草木湖に掛かる鉄橋を走ります。
わたらせ渓谷鐡道のにくいサービスで、鉄橋のうえで列車がいったん止まります。
列車の窓からは、波に反射する陽の光を湛えた湖の風景を眺めることができます。
一通り乗客が窓を眺めたころを見計らって、再び列車は走り出します。

 この「わたらせ渓谷鐡道」、どの列車に乗っても若い女性の車掌さんはいずれも元気いっぱいなのです。
そして走る列車の中で切符の販売はもとより、鐡道グッズやクッキーなどを売ってまわるのです。
ついついつられて、買ってしまう人もいます。
輸送収入よりこの収入の方が多いのでは、と疑うほどです。

 そしてもう一つ他の鉄道と違うところは、単線のため上りと下りがすれ違う駅では、結構な時間停車します。
車掌から、駅のトイレの利用や車外でのや飲み物の購入の時間があるとのアナウンスが入ります。
つまり、あせらずゆっくり走る列車なのです。

 さて、渡良瀬川の石は、石灰質の白っぽいものです。
上流に行くほど、河原一面が真っ白になっている風景を目にします。
見所では列車も一旦停止して、車掌さんの解説が入ります。
といったことで飽きることなく、下車駅の「通洞」に着きました。

 「通洞」駅は、足尾銅山観光の入り口です。
足尾鉱毒事件で語られる公害発生のため1973年には閉山し、足尾の街はひっそりしています。
街を南に進み、「足尾銅山観光」のゲートまで進みます。
ここまで来ると、さすがに11月の風は冷たく、街の静けさがさらに寒さを増していきます。

 「足尾銅山観光」ではトロッコに乗り込み、坑道の中に入っていきます。
かつては日本の銅の40%を生産していた「足尾銅山」で、この町は栄えていました。
坑道は約400年間に渡って掘り進められ、その総延長は1234kmといいますから、東京から博多まで(東海道新幹線と山陽新幹線を乗り継いだ)の距離に匹敵します。
トロッコはすぐに終点駅に着くのですが、そこからは展示を見ながら行動を歩いて回ります。
坑道の両端には丸太が立ち、天井を押さえています。
見学通路では、江戸から昭和までの各時代の採掘の様子が、順を追って展示されています。
ダイナマイトを仕掛けて掘り進んで行く様が、表現されています。
坑道の岩肌は銅が混ざっているのでしょう、伝ってくる湧水に変色いした緑青が見て取れます。

 行動を出たところには、「足字銭」が目印の展示館「鋳銭座」があります。
坑道からの出入りには、身体検査を受けて銅の持ち出しがないことを確認する様子や、砂の方に溶かした銅を流し込んでプラモデルのように枝状の永通宝を作る様子、また枝から硬貨を切り取りやすりがけと表面を磨いて初めて硬貨ができあがる様子が、模型と解説で詳しく説明されています。
「鋳銭座」の出口には、この手の見学順路につきものの土産物屋が並んでします。
ビールを注ぐことを想像して、銅色に光るビールタンブラーを購入してしまいました。
持ち帰って早速一杯、となったかどうかご想像にお任せします。

 「足尾銅山観光」からの帰りは、足尾鉱毒事件を今に伝える「足尾歴史博物館」に寄って、「通洞」駅までたどり着いたのでした。


   
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