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[旅の日記]

小田原かまぼこ 

 神奈川県の西の端、小田原にやってきました。
本日は、小田原の町を散策してみます。

 小田原はJR東海道本線と小田急や箱根登山鉄道、伊豆箱根鉄道が通る交通の要所です。
東海道新幹線も停まり、どこに行くにも交通の便の良い場所なのです。
JR開催札口には、天井から大きな小田原提灯が吊るされています。
また駅の西口には、城下町小田原を形作った北条早雲像が立っています。

 まずは東口から小田原城を越えて、青物町から箱根口まで伸びる「かまぼこ通り」を歩いてみます。
「かまぼこ伝承館 丸う田代」は、1868年に鮮魚商を営むかたわら蒲鉾の製造を始めました丸う田代總本店です。
板付蒲鉾を作る際に、蒲鉾板に蒲鉾の身を盛り付け形を整えるための「つけ包丁」の数々が展示されています。
オキギス、クロムツ、イサキなどの蒲鉾の原料となる魚の模型が並んでいます。

 小田原蒲鉾は、天明年間に広まったとされています。
小田原で沿岸漁業が盛んになり、食べるには余った魚の処理方法として考えられたのが蒲鉾です。
西日本で作られていた蒲鉾を参考にして、小田原でも作るようになりました。
当時は棒に魚肉を巻き付けて、外を焼いて焦げ目をつけたものが主流でした。
今でいうちくわの原型です。
その後改良が加えられ、長方形の板に魚肉を盛り付けそれを蒸して食べる、現在の板付け蒲鉾が作られるようになりました。
小田原は東海道の宿場町で箱根越えの玄関口でしたが、道も悪く鮮魚を箱根に運ぶことができなかったために、保存性の良い蒲鉾が重宝されたのです。
こうして、小田原が蒲鉾の代名詞として知られるようになったのです。

 「籠常商店」は、1893年創業のかつお節と削り節の製造、販売を行っているところです。
赤い屋根が目印の、小さな店舗です。
「かつおぶし博物館」と称して、店内では海から揚がったカツオがかつお節になるまでを紹介しています。
残念ながら今回訪れたときには、店は閉まって中の様子を知ることはできませんでした。

 その先には、通りから少し奥まったところに「松原神社」があります。
後北条氏が社領を寄進するなど、地元の手厚い加護があり栄えた神社です。
「松原大明神」とも呼ばれ、古くから親しまれてきました。
今回は、ちょうど時期は11月。
何組もの七五三参りの家族連れに出会ったのでした。

 そして「小田原宿なりわい交流館」があります。
1932年に建てられた旧網問屋ですが、関東大震災で被害に会ってしまいます。
建物を整備し、観光客の休憩所そして市民の憩いの場として利用されるようになりました。
小田原の典型的な商家の造りである出桁造りで、柱の上に乗せた太い桁が正面に向けて突き出し、その上に屋根が乗っています。
伝統的な商家の造りなのです。

 さらに西に進むと、古めかしい薬屋があります。
「済生堂薬局小西本店」で、1633年創業の歴史のある店舗です。
単なる薬局ではなく、壁一面に広がる百味たんすをはじめ、薬をすりつぶす乳鉢などの所蔵する薬に関係する品々が展示されています。

 その道向かいには、真っ白い城の形をした建物があります。
ここは「外郎(ういろう)博物館」で、1885年に建てられた外郎家の蔵を利用した店舗兼博物館です。

外郎家は中国大陸で代々伝わる公家の家柄でしたが、元が明に滅ぼされると明に仕えることを恥じた陳宗敬は、博多に亡命し日本に帰化します。
宗敬の子の陳宗奇は、足利義満の招請で上洛し中国から持ち出した外郎薬を献上ます。
その時に口直しに添えた菓子が、今のういろうと言われるものです。
「外郎博物館」では、そんな深い歴史を持つういろうが販売されています。

 その先には、「梅万資料館 欄干橋ちん里う」があります。
小田原藩主の大久保公に、小田原城の料理長として京都から招かれた小峯門弥が1871年に創業した梅干店です。
小田原特産の梅を漬け込んだ昔ながらの梅干しが、漬けたままの状態で展示されています。
梅干作りの体験もでき、商品の販売も行われています。

 さて小田原といえば、町を形作った「小田原城」を避けて通れないでしょう。
北条氏康は難攻不落の城として、上杉謙信や武田信玄の攻撃に備えました。
特に豊臣秀吉に対抗するために造られた外郭は、後にも語り継がれる立派なものです。
八幡山から海に至るまでの広大なもので、小田原の町全体を土塁と堀で取り囲んだものです。
北条氏没落後は大久保氏が、城主として「小田原城」に入ります。
その後は阿部、稲葉、そして再に大久保氏が入封します。
「小田原城」を守る小田原藩は、鉄砲出女といわれた箱根の関所の任務を預かり、江戸幕府を守ってきました。

 ここからは「小田原城」から小田原駅に向かうのですが、あえて街中を巡ってみます。
周りを眺めながら歩いていると、年季の入った建物のお茶屋さんがあります。
「小田原城」の城下町、そして東海道五十三次の小田原宿には、こうした古い建物が数多く残っているのです。

 そして小田原の名物である蒲鉾を、土産に買って帰ることにします。
蒲鉾といえば蒸し蒲鉾を思い浮かべますが、昔ながらの焼き蒲鉾にも心が騒ぎます。
しかしショーケースでその横にあった揚げ蒲鉾に、目が釘付けになってしまいました。
さつま揚げのような柔らかい口当たりと、蒲鉾らしい魚の味が口の中に広がります。
これは美味しいと、本日の土産となったのは言うまでもありません。
 何度も通り過ぎていたのですが、こうして改めて小田原の町を巡ったので、久しぶりのことです。
北条氏が造った小田原の街並みと文化に触れることのできた、秋の1日でした。

 
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