にっぽんの旅 関東 茨城 袋田

[旅の日記]

袋田の滝 

 神社仏閣を訪れることが多いこの企画。
たまには自然と親しもうと、今回は滝を巡ります。
以前から行きたかったけれどまだ行けていない所、今回は茨城県の袋田の滝を訪れます。
 時刻表をにらみながら袋田行の行程を考えてはみたものの、なかなか決まらない。
車であればスッと行けるところを、わざわざ電車で行こうとしているものですから、これまた大変なのです。
だって東京からは水戸まで出て、そこから袋田までのJR水郡線に至っては1時間に1本、しかもその中には別の方向に行ってしまう電車もあって、手ごろな時間に発車する電車なんかないのです。
これは帰りの電車にも言えることで、おまけに袋田駅から滝本(滝の入り口)までのバスをも考えると、なお深刻。
結局、その日に帰って来れる電車はわずか2本しかなかったのです。
なんだかんだと言っても、旅の行程を考えるのも楽しみの一つ。
既に水戸まで来ていたのでした。

 水戸で1泊して翌朝は、いざ袋田に向かいます。
水戸駅の片隅にJR水郡線のホームがひっそりとあります。
「この電車を逃すと後がない」と言わんばかりに駅には少し早めに着いたのですが、時間があったので土産屋を回っていました。
そして15分前にホームに降り立ったときには、既に乗車を待つ人の列ができていたのです。
ここから1時間の電車の旅、土産物屋で時間をつぶしたのは失敗だったかと、列の後ろに並ぶのでした。
やがてやってきたのは2両編成の電車。それも赤や黄色の原色で車体を塗られた派手なやつです。
郡山行のその電車は、長旅に備えてしっかりトイレも設置されています。
単線でワンマンカーのこの電車に、しばらく揺られていくことにします。
水戸を出た時は田んぼの真ん中を走っていた線路も、やがて山にへばり付くように山肌に沿ってクネクネと曲がり進みます。
10人ばかりの観光客と地元の老人を乗せて走ること1時間、「袋田」の案内が車内に流れました。
ここで降りて、接続するバスとの時間はわずか2分。
このバスを乗り過ごせば2時間後のバスでは東京まで帰れない。是非とも間に合わなければならない。
最悪は歩くかレンタルサイクルで滝まで行く羽目になる、と考えつつ降りるや否やバスを探すのでした。

 無人の袋田駅に降り立ち、焦ってバスを探すのですがそんな心配ご無用。
小さなロータリー(というより駅前広場)に止まっていたバスのドアがゆっくりと開きました。
この時間バスはこれ1台しかない、と安心して乗りこむことができました。
バスは村の集落を巡りながら、滝本までのんびりと走ります。
停留所にして4駅ぐらいでしょうか、まもなく滝本に到着しました。
周りを眺めても滝らしきものは一向に見えず、バスの乗客は動こうともしないのです。
堪りかねたのか、運転手は盛んに「終点です、降りてください」を連呼したのです。

 はやる心を抑えつつ、まずは昼食にします。
うまいそば屋はないものかと、落ち着ける食堂を探します。
バス停からほどなく歩き土産物屋街の手前に、木造りのイメージ通りの店がありましたのでそこに入ることにします。
「とろろそばと・・・」と言いかけると、メニューに「地ビール」の文字が。
ここはその土地に馴染まなければならないと、袋田の土地を知るという大義名分でビールも注文します。
「アユはいかかですか」の問いかけに、アユの塩焼きのおいしい光景が頭に浮かびます。
ところが、さてアユはどうやって食べるのだったか?
確か箸でアユを押さえて身から骨を剥がしやすくするのがったが、骨は頭から一気に取るのだったか、はたまた尻尾から抜くのだったか?
頭の中でしばしの格闘があった末、今回は遠慮することにしました。
でも地ビールの突き出しに出されたふきは、甘辛く醤油で焚かれていて家庭料理として絶品でした。
一方そば方はいえば、別の皿に載ってきたとろろの腰のあること。そばつゆに分けて入れようとするのですが粘りがあってなかなか切れず、またつゆに浸けたそばにもなかなか絡まないしろものです。
多分皿をひっくり返しても、とろろは落ちないはずだと思いつつ、そばをすすっていました。
そばと言いとろろと言い、味は十分に満足のいくものでした。

 さてここから滝へは歩いて5分程度。
こんな不便なところだからないかもしれないと心配していた土産物屋ですが、そこのところは東洋人の商売根性、しっかりと軒を並べています。
土産物を横目に、滝の入り口まで進みます。
ここからは入場券を買って、トンネルを抜けて滝まで進みます。
昭和54年に掘られたトンネルですが、これがなければ本当の秘境の滝だったのでしょう。
トンネルには、何箇所かの展望所が設けられています。
手前の展望所には、吊橋も造られています。
そしてその先からは、滝の真下から滝を見上げることができます。
さらにはエレベータで上った所にある最近造られた展望所からは、滝の全景を眺めることができます。
この袋田の滝は、幅73m、高さ120mの四段の滝で、日本三名滝の一つに数えられています。
荒々しい滝というよりは、なめらかな岩肌を舐めるように白く尾を引きながら落ちる水がきれいな滝です。
昨日の雨で白い筋が見えなくなるのではないかと心配しましたが、大丈夫だったようです。
何箇所か展望所のうちでも、滝を見上げることのできる従来の場所のほうが、迫力があってお勧めです。
いずれの展望所にも同一の入場券で行くことができますので、見比べてみてはいかがでしょうか。

 さて念願の滝も見終え、袋田駅まで田舎の道を散策しても良いと思っていたのですが、遊びまわることへの戒めなのか膝の痛みが再発し、2時間後のバスを待つ羽目になりました。
さて袋田駅まで行き水戸経由で帰る常套手段を取るのも良いのですが、袋田駅でまた1時間の電車待ちには耐えられなかったのと、せっかく来たのだから帰りは別の景色を観たいという欲望から高速バスで帰ることにします。
滝本〜袋田駅の手前の停留所がある「袋田の滝入口」の交差点(滝本を指すのかとなんと紛らわしい名前でしょうか)から、高速バスは出発します。
これまた少ない便数なのですが、ちょうどこの時は時間が合致したのです。
座席指定でしかもゆったりした座席なので、電車より楽なのではないでしょうか。
いつもの散策に較べれば、目的地がわずか1箇所という異例の旅になりましたが、のんびりと1日を過ごすことができたのでした。

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