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[旅の日記]

桐生 

 今日は桐生の街を散策します。
栃木と群馬の県境に位置する桐生市は、奈良時代から絹織物の産地として知られています。
京都の西陣織と並び、桐生織で有名なところです。
それでは早速、「桐生織物記念館」を目指しすことにしましょう。

 JR桐生駅を後に、北口から末広通りに出ます。
末広通りはアーケード街ですが、何故かひっそりしています。
安売りのドンキホーテが見えたところで、左折します。
安売り店とはいえ全国展開している通称ドンキは、大きなビルまで建てて活気づいています。
その先に「桐生織物記念館」はあります。

 茶色のタイルで囲まれた「桐生織物記念館」は、桐生織物協同組合の建物で、織物の展示と販売が行われています。
展示室を覗いて、桐生織の歴史を学ぶことにします。
日本の機どころと慕われた桐生は、1300年の歴史と伝統を持つ織物の街です。
714年に上野の国(今の群馬県)が「あしぎぬ」を織って朝廷に納めていたことや、905年の租税制度に上野の国の税金は「あしぎぬ」と定めていることからも、この地では昔から織物が盛んであったことに間違いありません。
展示室では、鹿内式の織機や八丁撚糸機、座繰り機、糸繰機などが展示されています。

 ここから「本町通り」に移り、通りを北に向かって進んでいきます。
おりしも本日は「骨董市」で、通りは骨董品や古着の着物を並べた露店でびっしり埋め尽くされています。
それを眺める人も群がり、通り全体がお祭り騒ぎです。
骨董品なのかガラクタなのか見分けもつかず、左右の古い街並みを楽しみながらぶらりと歩いて行きます。

 麒麟麦酒の看板があがった酒屋があります。
木造の建物も立派ですが、看板も黒光りしねんきが入った大きなものです。
看板の下に目を移すと、酒まんじゅうを買い求めて並ぶ人の列があります。
よだれが溜まるのが判るのですが、ここはこらえて先を進みます。

 やがて右手に煉瓦造りの「有鄰館」が見えてきます。
先ほどの酒屋である矢野商店によって醸造業が営まれていた11棟の建築物で、そのうち煉瓦蔵・塩蔵・味噌醤油蔵・酒蔵・穀蔵の5棟が桐生市指定重要文化財として保管されています。
現在は、多目的催事会場として利用されています。

 さらに歩いて行きます。
この辺りは蔵を備えた昔からの家が並んでおり、見て楽しませてくれます。
古風なお風呂屋さんまであり、ひっくりとお風呂を味わえそうです。
もう少し先に進みます。
左手にはのこぎり型の屋根をした「無鄰館」が立ち並び、北川織物工場という織物の街を再認識させられます。

 その先に、「桐生天満宮」があります。
景行天皇の時代に天穂日命を祀る神社として創建されたことが「桐生天満宮」の起源とされ、南北朝時代には桐生綱元が当神社この地に移し、菅原道真を合祀して天満宮となりました。
天満宮の名の通り学問の神様で、受験シーズンには多くの参拝者が訪れます。
そして本町通りの骨董市は「桐生天満宮」で最高潮となり、境内は足の踏み場もないほど露店で賑わっています。
大げさではなく、かろうじて本殿に辿り着いたと言ったところです。
天満宮に参拝して、この先の群馬大学に寄ることにします。

 「桐生天満宮」の目と鼻の先にある群馬大学工学部の「同窓会記念会館」は、近代的建物として有名です。
1916年に建てられた木造2階建ての建物は旧桐生高等染織学校本館講堂で、桐生の近代化を進めた建物として保存されています。
この建物を一目見ようと、骨董市の混雑を掻い潜って来たのでした。
目的を果たすと、あとはまた人ごみの中を帰らなければなりません。
元来たJR桐生駅にほど近い、上毛電鉄西桐生駅に向かいます。

 マンサード屋根の洋風建築は駅開業当時の建物で、真ん中が高く2段に折れた屋根の形が特徴的です。
木製の改札口の先には、流線型の電車が待っています。
この電車、人だけでなく自転車持参で乗れてしまうのです。
改札にも、自転車の料金が書かれた看板が掲げられています。
2両編成の車内には、数台の自転車が積み込まれていました。
電車で3駅先の「天王宿」駅まで、少しの間電車に揺られて行くことにします。

 「天王宿」は無人駅で、電車が走り去ったあとは静けさが漂います。
小学校の横を越えて、「桐生明治館」に向かいます。
1878年に建てられた洋風建築で、「旧群馬県衛生所」の衛生所兼医学校の建物です。
明治の面影を残し、中でゆっくりコーヒーでもいただこうかとも思いましたが、この後食事に行くことで思いとどまります。

 そして待ちに待った食事です。
桐生に来て食べてみたかったのが「ひもかわ」です。
「ひもかわ」というのは幅の広いうどんのことで、店によってその幅はまちまち。
きしめんのようなちょっと太目のところもあれば、今回訪れたような千代紙大のところも。
とにかくその形の珍しさにひかれて、わざわざ食べに来たようなものです。
ところが本日は休日ということもあって、店の前には長蛇の列。
日曜日が休日と重なっただけで連休でもないのに、この混みようです。
結局店に入るまで、1時間も並びました。

 頼んだのは、なめこ出汁につけて食べる「ひもかわ」です。
腰があり切れそうで切れない麺を、なめこの入った濃いめのつけ汁に漬けて食べます。
つけ汁自体が、丼のような大きな器に入っています。
並んだ甲斐があって、「ひもかわ」は予想以上のおいしいものでした。

 実はもう一つ、近くの相老駅の反対側にあるお店に「コロリンシュウマイ」があるのです。
こちらも食べに行こうと思っていたのです。
今流行のB級グルメの代表格でしょうが、「ひもかわ」にあまりにも時間を取られて、今回は見送り。
次回の楽しみに取っておくことにします。

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