にっぽんの旅 北陸 富山 八尾

[旅の日記]

おわら風の盆 越中八尾 

 富山市南西部の山あいの町、越中八尾に来ています。
駅から八尾中心地まではバスが出ていますが、歩けばバスを待っている間に着きそうなので、ボチボチと歩いて行くことにします。
駅前の道を線路伝いに歩いていくと、「伊田川」に出会います。
草が生え放題の河原の真ん中を水は流れ、その周りには田舎の穏やかな風景が広がっています。
道は上り坂に差し掛かり、ここから先は長い上り坂です。
やはりバスを待っていればよかったと、後悔するのでした。

 「八幡社」を越えて道が折れるところにある「聞名寺」が、越中八尾の通りの始まりです。
通りを進むと、やがて「八尾おわら資料館」が現れます。
越中八尾に伝わるおわらを、後世に残そうと孤軍奮闘した初代おわら保存会長の川崎順二にまつわる資料館です。
建物は町屋を利用した純和風のものです。
中ではおわらの様子が映像で紹介され、その歴史が展示・解説されています。
9月に開催される祭り「おわら風の盆」の雰囲気を、展示されているおわら人形で少しでも味わいます。

 「八尾おわら資料館」の先を進むと、石畳の道があります。
「諏訪町本通り」で、道の両側には和風の建物が並びます。
この辺りが「おわら風の盆」の舞台となり、祭りの行列が踊りながら練り歩く通りです。
木で作られ縦格子の窓に、風情を感じます。

 通りを歩いて行くと、左手に長い階段が見えてきます。
「城ケ山公園」に続く階段です。
階段を登り始めたのですが、民家が途絶えたところに「クマが目撃されています」の立て看板を見つけて、足が止まってしまいました。
クマによる被害が各所で報道されている中、これより先に進むことができず、あえなく引き戻すことになりました。

 諏訪町本通りを終点まで歩き詰めると、一筋北側の通りに移ります。
「曳山展示館」では越中八尾のもうひとつの春の祭りである「曳山祭」の曳山を展示する場所です。
3体の曳山が展示されており、鮮やかな装飾に魅了されます。
ここでは越中八尾の郷土芸能の曳山だけでなく、この地の産業であった養蚕も展示されています。
蚕のまゆから真っ白でつやのある生糸になるまでの様子が、展示されています。

 ここからは街中を少し外れた「和紙文庫 桂樹舎」に向かいます。
越中八尾和紙と呼ばれ、この地方の主要産業のひとつであった手漉き和紙の展示館です。
富山の薬売りが使用する鞄の材料でもあった越中八尾和紙は、通常のの紙とは一線を画す硬く丈夫な和紙なのです。
「和紙文庫 桂樹舎」は廃校になった山合いの分校を移築したもので、味のある建物です。
和紙を材料とした加工品の展示と販売、そして紙漉き体験もすることができます。

 さて越中八尾も一通り見て回り街に戻ろうとしたとき、小型のバスに出会います。
立ち止まってバスの行き先を確認するためにジロジロ見ていると、運転手が窓を開けて「駅まで行く?」と声を掛けてきます。
そう、町を巡回するバスが偶然に通りかかったのです。
思わず飛び乗り、帰りは歩くことなく駅にたどり着くことができたのでした。

 
   
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