にっぽんの旅 北陸 福井 越前大野

[旅の日記]

城下町 越前大野 

 本日の旅の舞台は、福井県の越前大野です。
ここは、JR越美北線の途中駅です。
九頭竜線と言った方が、馴染み深いかもしれません。
以前に一乗谷の朝倉遺跡を訪れた時に、その先の越前大野もいずれは行ってみたいと思っていたところです。
越美北線というからには南線があるはずですが、福井から岐阜県の美濃太田駅までを結ぶ路線として越美線が建設されました。
ところが九頭竜湖を跨ぐ辺りで県越えが果たせず、南側は長良川鉄道越美南線として今も残っています。

 戦車のようなゴツゴツした感じのする列車に乗り込み、混み合った1両編成の乗り物はディーゼルの音を立てて走り出します。
始発の福井駅では混んでいた車内も、やがて空席が目立ってきます。
そして1時間ほど経ったころに、目的地の越前大野に着きます。

 駅に着くと、観光協会の方が観光客を探しています。
ちょうどよかったとこの辺りの散策マップを尋ねると、マップとともに食べ歩き券を配ってくれました。
冊子に指定された30件を超える場所で、無料で食べ物の配布があったり、食べ物が1品多く付いてきたりの優れものです。
そしてこれもどうだといただいたのは、施設入館とまちなか循環バスの利用ができるパスポートです。
これがあれば、観光施設が無料で入れるのです。
いずれも普段は販売しているものを、幸運にも無料でいただけたのです。

 駅前には水が湧いています。
「駅清水」と言われ、町の至る所で水が湧いているのです。
ここもそのひとつです。

 それでは散策マップに従い、まずは昼食にあり付きます。
実は来る前から狙っていた、「醤油カツ丼」の店がマップに載っていたので向かいます。
ご飯の上に軽く野菜を敷き、そこにカツを並べます。
温泉卵を添えてでき上がりです。
上からかけるのは大野の醤油で、通常の「ソースカツ丼」よりあっさりしています。
散策マップを示すと、こちらも大野名物の「里いもの煮ころがし」の小鉢が付いてきたのです。

 ここからは寺町を進んで行きます。
寺町では古い佇まいの建物が、通りの両脇に並んでいます。
そして七間通りに折れて、ここから「越前大野城」を目指します。
からくり人形を演じる「熊屋」、店先に杉玉が飾られている「南部酒造場」など、かつての城下町を彷彿させる街並みです。
水が湧き出す「七間清水」を過ぎて、大きな看板があがる「やなぎや薬局」もあります。

 ふと目の前に、洋風の建物が現れます。
国の有形文化財にも指定されている「はいから茶屋」で、ここでは食事ができます。
その横には「芹川清水」「水舟清水」が続き、土産物屋の「平成大野屋 結楽座」があります。
奥に入ると外壁に木材を打ち付けた「二階蔵」「平蔵」もあります。
訪れた時は「平蔵」でひな人形の展示が行われていました。
ただそこらの展示とは違い、大木半蔵のひな人形をはじめ全国の名作を集めた人形が揃っています。
江戸時代から受け継がれてきた人形もあり、蔵いっぱいの20段のひな壇に収められた圧巻の姿です。

 「平蔵」の裏手には武家屋敷の「旧内山家」があります。
1842年大野藩主であった土井利忠が藩財政を立て直すため、「更始の令」を出して藩政改革に乗り出します。
内山七郎右衛門良休と隆佐良隆の兄弟は殖産興業と人材育成に協力します。
七郎右衛門良休は藩営の商店として、「大野屋」を開設ます。
そして銅山経営などで、藩の財政を支えます。
一方の隆佐も、洋式帆船「大野丸」の建造や蘭学の振興など、藩の発展に寄与してきました。
1882年ごろに建てられた母屋は、2階建てで、離れとは渡り廊下でつながっています。
敷地内には味噌蔵や米蔵、衣装蔵などがあり、この地で幅を利かせた有力者であったことを物語っています。

 「旧内山家」と並び有名なのが、次に訪れる武家屋敷「旧田村家」です。
田村又左衛門家の屋敷で、三の丸にあった母家を移築したものです。
庭園の築山は越前大野城外堀の土塁が、今も残されています。

 それではいよいよ「越前大野城」に上っていきましょう。
その前に坂の登り口には、「民俗博物館」があります。
木造の建物は「大野治安裁判所」として1889年に建てられもので、1968年まで使われていました。
明治中期の地方裁判所の現存する建物として、貴重なものです。
中には大野で使われていた農耕や生活で使ったが道具が紹介されており、当時流行った土人形などが展示されています。

 「民俗博物館」の先には神社の「柳廼社」があり、ここから城への山門と登山道が続きます。
城はいつでも観れるものを気にしていなかったのですが、実は昨日から本年の開館が始まったばかりだということです。
ちょうど良い時に来たものです。
越前大野の町を眼下に見ながら、標高249mの亀山を城を目指して登って行きます。

 越前一向一揆を平定したことで織田信長より3万石を与えられた金森長近は、この地に城を築きます。
「越前大野城」は1575年から4年の歳月をかけて完成したもので,当時は2層3階の大天守閣とそれに続く小天守閣、天狗書院などで構成されていました。
しかし1775年の大火で焼失し、一度は三権をするものの明治の廃城令により取り壊されてしまいます。
現在の天守閣と天狗書院は、1968年に復元したものです。
金森氏のあとは越前松平家が3代続くものの城主が目まぐるしく替わり、最後は土井氏で定着しました
また「越前大野城」は天空の城としても知られ、季節と天候が整えば雲海の上に浮く「越前大野城」に出会うことができます。

 名水で有名な大野ですが、その中でもひときわ大きいのが「御清水」です。
古くは殿様のご用水として使われていたことから、殿様清水とも呼ばれています。

 その後は「歴史博物館」「五番名水庵清水」を経て、「越前大野駅」へと向かいます。
来た時に駅でいただいた散策マップとパスポートをフルに使い、お金を使うことなく観光施設を巡り歩いてきたのですが、まだ券が余っています。
そこで春日通りにある醤油屋に寄ることにします。
「醤油カツ丼」でみられる大野の醤油を、もらえるからです。
さらにはその先の菓子屋では、和どら焼きもいただけます。
ともに越前大野の良いお土産となったのでした。

 JR越美北線で福井駅まで戻ると、越前カニの出番です。
今晩のご飯は、せいこガニ丼といきましょう。
越前大野の町巡りをした1日でした。

   
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