にっぽんの旅 北陸 福井 一乗谷

[旅の日記]

朝倉遺跡の一乗谷 

 福井県の一乗谷にやってきました。
「一乗谷朝倉氏遺跡」を訪れるためにやってきたのですが、福井駅からの列車は午前中は動いていません。
始発が12時台という、なんとものんびりしたところです。
そこで行きはバス、帰りは列車での一乗谷訪問となりました。

 バスは「一乗谷朝倉氏遺跡」の目の前まで、わが身を運んでくれます。
まずは「復原町並」を訪れます。
ここはこの後訪れる「一乗谷城」の城下町として栄えた地で、特に復元されたのは侍屋敷が存在していた場所です。
通りを挟んだ両手には、原寸大の当時の家々が復元されています。

 それでは、いよいよ朝倉家の館があった「朝倉館」に足を運びます。
「復原町並」からは「一乗谷川」を渡った道向こうの場所にあります。
橋を渡ると手前に「朝倉館」、そして奥の山の山頂が「一乗谷城」がかつてあったところです。

 1471年に朝倉敏景が、黒丸館(福井市黒丸町)から一乗谷に本拠にしてきます。
それから100年余りの間、朝倉一族が越前を支配します。
5代目当主の義景は浅井氏と同盟を組み、織田・徳川の両軍と激突することになります。
世に知られる、1573年の「刀根坂の戦い」です。
しかしこの戦いで朝倉氏は大敗を期し、義景は自害し朝倉家の繁栄も幕を閉じることになったのです。

 「一乗谷城」は標高473mの「一乗城山」に築城されたのですが、居住の場としての「朝倉館」は「一乗谷川」を越えたところにあります。
今は建物は建っていませんが、「唐門」だけは残されています。
江戸時代に造られた「松雲院」の正門で、義景館跡の入口に建っています。
ちなみに「松雲院」は、5代目義景の菩提を弔うために建てられた寺院です。
気品ある「唐門」は江戸時代前期のもので、豊臣家が移築寄進したと伝えられています。

 「朝倉館」は「義景館」とも呼ばれ、一乗谷の領主の館です。
5代目の義景が住み、土手で囲まれた御殿があった場所です。
いまは建物の柱の跡があるだけで、常御殿、主殿、会所などの跡が記されています。
そばには義景の墓もあり、この地で滅びた朝倉家に唯一残されたものとなりました。

 それでは「一乗谷城」に続く裏山を少し登ってみましょう。
「湯殿跡庭園」は一乗谷で最も古い庭園といわれており、並べられた石が残っています。
荒々しい石組みの庭園は、戦国の時代を彷彿させられます。

 その隣には「中の御殿跡」があります。
義景の母 高徳院の居館があったと言われ、屋敷の礎石や池跡が残っています。
山麓を削りだして造ったここに、周りを土塁で囲み屋敷を造りました。

 そして階段を上った上側には「諏訪館跡庭園」は、朝倉義景の妻 小少将の館があった場所です。
この遺跡の中でも最も規模の大きい庭園です。
4mもの巨石は滝石組を模っており、どっしりとした安定感のある庭です。
石には、3代貞景と4代孝景の法名が残されています。

 敷地内には「朝倉神社」がひっそりと佇んでいます。
そして今でも、この地で朝倉家を弔っています。

 さてここからは、JR越美北線、またの名を九頭竜線の「一乗谷駅」に向かって、のんびり歩いて行きます。
およそ2kmの距離ですが、1〜2時間に1本しかないバスを待つわけにもいかず、散策がてら歩いて行きます。
「復原町並」以外にも、この一帯には武家屋敷や町屋が並び城下町が造られていた様子が判る場所があります。
建物こそありませんが、跡が残っています。
そして特徴的なのは、各家個別に井戸が掘られていた点です。
昔の街並みを想像しながら、足を運びます。

 「下城戸」には、かつての要塞都市を標すものがあります。
麓から「朝倉館」に向かう時の北側の入り口に当たる「下城戸」には、城門が築かれていました。
今残るのは敵の侵入を防ぐために盛り土をした跡です。
高さは5mの岩が使われ、一乗谷を守ってきました。
のどかな今の一乗谷からは、想像もできないことです。

 その先の民家の並ぶ場所に「春日神社」があります。
1068年創建の神社ですが、1573年の朝倉氏滅亡とともに焼失しました。
現在の社殿は、福井藩主 松平吉品が1700年に再建したものです。


 そしてその先には「西山光照寺跡」があります。
寺自体は福井市内に移り福井大仏として有名になっていますが、ここにはその跡が残されています。
天台宗真盛派の地委員で、一乗谷最大の寺院です。
この寺跡に残されているのは約40体の石仏で、その他にも石塔があって石の建造物が目を引きます。

 さていよいよ最終目的地である「県立一乗谷朝倉氏遺跡資料館」に到着しました。
遺跡から発掘された貴重な出土品が、数多く展示されています。
遺跡に関する資料などが展示されており、一乗谷文化が判りやすく紹介されています。
次の列車までしばらくは、この資料館で休憩させてもらうことにします。

 資料館で一服した後は、JR越美北線で福井まで戻ります。
「一乗谷駅」はまったくの無人駅で、駅舎がなければ改札口すらありません。
階段を上るといきなりホームがあり、列車が来るのを気長に待ちます。
やってきたのは1両編成のディーゼルカーです。

エンジン音を響かせながら田園を突っ走る姿は勇壮なもので、味のあるローカル線の乗車で本日の幕を閉めたのでした。

     
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