にっぽんの旅 北海道 北海道全域 知床

[旅の日記]

知床・ウトロ 

 本日は道東の秘境、知床五湖を訪れます。
前日のうちから知床斜里駅に入り、1泊をして準備万端です。
路線バスで移動することが多いのですが、1日数本しかないバスでは、知床五湖以外はどこにも寄らずに帰ってくるしかありません。
おまけに今の時期である11月後半は、夏の観光シーズンも終わり、五湖がいつ冬季閉園されても文句を言えない時期(現にこの週末には閉園の宣言が行われてのギリギリの訪問)ですので、観光バスもなければ路線バスでさえも五湖のかなり手前までしか通っていません。
それに加えて今回は2名での旅行ということもあって、レンタカーを借りることにします。

 朝9:00に予約していたレンタカーを借りに、知床斜里駅に行きます。
駅前のロータリーでは、ワシのモニュメントが迎えてくれます。
普段乗り慣れている車と違って、カーナビの設定が判らないし、給油カバーのボタンはいったいどこにあるの、もっと深刻なのはトランクオープナーのボタン位置さえ判らない状態です。
なんとか取扱説明書を見付けだして、事なきをえたのでした。

 道路案内をみて気になったのが、「天までつづく道」です。
ちょうど五湖に向かう途中にありそうなので、ちょっと寄ってみましょう。
障害物のない北海道らしくまっすぐに延びた道ですが、地形に合わせて上下にアップダウンを繰り返します。
これが天につながっているかのごとく見えるのです。
坂を登り切ったところどには丸太で組まれた展望台もあり、道のみならず広大な大地の先にはオホーツク海も見渡せます。
大きな気分にさせられてしまうのです。

 さて先を急ぎましょう。
オホーツクの海は荒れ狂い、激しい波を打ち寄せてきます。
岩に当り波が砕けた時にあがる水蒸気で、海岸線の部分だけは霧が立ち込めたようになっています。
その海岸線の道を、車は走ります。

「オシンコシンの滝」は、アイヌ語で「川下にエゾマツが群生するところ」を意味し、流れが2つに分かれて水が落ちてきます。
広い岩肌に水が薄く滑らかに流れる様は、荒々しさはなくきれいな流れをする滝です。
訪れた時も観光バスが1台到着し、その観光客に呑まれないようにあわてて滝への階段を登ったのでした。
「オシンコシンの滝」の先には、「三重の滝」もあります。

 車はウトロの町に入ります。
奇岩が並ぶ海岸線を横目に、五湖に急ぎます。
そういえば今までシカの注意標識だけだったものに、この辺りからクマの標識が加わります。
途中「知床自然センター」に寄って、道路状況とクマの出没情報を確かめます。
そろそろ冬眠の時期というのに、1週間ほど前にクマが出没し地上遊歩道は通行禁止になっています。
改めて「知床自然センター」で確認すると、2日前に通行止めは解除されたとのこと。
ただし2つある遊歩道のうち3つの湖を回る小ループだけが通れるとのことです。

その情報を聞き、喜び勇んで再び車は五湖へと向かいます。
 道路の周りの針葉樹が、背の低い笹に変わるのが判ります。
そして道路標識通り、シカが道の脇に平然と立っています。
道路を渡っていて、車に気付きあわててガードレールを乗り越えようと足を取られているものもいます。
改めて目の前のシカを見ると、大きいことに驚かされます。
今朝レンタカーの鍵をもらう時に、「シカには注意を。そして夕方のライトが点灯したときにはとくに注意を。シカはライトに向かってくるのでくれぐれもスピードを出しすぎないように」の意味が判りました。

 「知床五湖」には、高架木道で一湖までは、行くことができます。
これは周りの藪から1段高く築かれた人間専用の歩道で、両側の柵には高圧電流が流れており獣を寄せ付けません。
この高架木道なら自由に散策できるのですが、「知床自然センター」で聞いてきた小ループを回るには、レストハウスに寄らなければなりません。
クマへの出没状況や出会った時の対処の仕方について、答えてくれます。
「本日散策した人はいるのか」の質問に対しては、「職員が2回、ネイチャーガイドが伴った観光客が1組」とのことで、個人客単独での行動はなかったのです。
おまけに昨夜の雨で足場が悪い上に笹がたわんで、道幅がかなり狭くなっているとのこと。
そんななか、「クマの姿すら見えないが糞が落ちていた」との話を聞いて、今まで行く気満々だった気持が揺らいできました。


 ということで、おとなしく高架木道を歩くことにします。
作られた道とはいえ、左右の景色や群がるシカの親子を興味深く見て歩くと、一湖まで20分近くかかってしまいました。
ひょっとしてシカが無事だということは、今はクマがいないのかも。
笹藪の一角にぽっかりと空いた湖は、背景の雄大な知床連山とは対照的に神秘的で澄み切った場所に映っていました。

 知床五湖、いや本日は一湖だけを見た後は、車でウトロまで戻ります。
海の幸を、昼から豪勢にてんぷらでいただきます。
エビ、イカ、サケと野菜のてんぷらは、あっという間にお腹に入ってしまいました。
この上もない満足です。

 行きに見えた奇岩の数々が気になっていたのですが、本格的に回ってみることにします。
まずは、ウトロ漁協の横に立上がった怪獣の形、とりわけ頭がはっきりと見える「ゴジラ岩」です。
実に変わった形で、人がゴジラに合わせて彫ったかのような形をしています。
 その奥には、ご飯を山盛りよそったような「オロンコ岩」があります。
「オロンコ岩」は、この辺りに住んでいた先住民族の「オロッコ族」から名付けられました。
知床八景にも選ばれた場所で、岩の上まで登ることができます。
急な階段が果てしなく続き、息を切らしながらそして途中で何度も立ち止まりながら60mの高さを登りきると、ウトロの町のどの建物よりも高いことに気づきます。
頭上にはカモメが大群となって、飛び回っています。
どうか、空からオツリを落とさないようにと祈りながら、さらに先にある「三角岩」を眺めるのでした。

漁港の目と鼻の先に、「道の駅」があります。
そして同じ敷地内の横の建物が、「知床世界遺産センター」です。
ここでは、知床に住む生き物(ヒクマやキタキツネ、エゾシカ、カモメ・ウミネコ、マス・サケ)の生態を知ることができます。
そして、サケの川上りが見えるということです。
詳しく聞いてみれば、このセンター横の川でも見れるということなので、早速見に行くことにします。
確かに川の水が所々波立っており、サケの背びれが水面に顔を覗かせます。
同じ風景は、斜里に向かう途中の「オンネベツ川」でも見ることができます。
こちらの川辺の柵には、サケが模られています。
初めて見たサケの川上り、それもいとも簡単に見ることができたのです。

 知床斜里に車が帰ってきたときには、日も陰ってしまっていました。
しかし、まだ16:00。
これで最後にしようと、「知床博物館」を訪れます。
ここでは、ねぷたについての山車の展示が行われていました。
ねぷたといえば青森が有名ですが、姉妹都市の弘前から伝わり斜里でも行われるようになったそうです。

そして今晩の食事は、炭火で焼く新鮮なお魚です。
カレイのアラは脂がのっていて、今まで食べたことがないようなあまい美味しさでした。
その他お魚が4〜5匹とサザエ、ホタテ、赤貝と、食べきれないほどの贅沢をしたのでした。

 
旅の写真館