にっぽんの旅 中国 島根 玉造温泉

[旅の日記]

玉造温泉で山陰のカニ 

 JR山陰本線でやって来たのは、玉造温泉駅です。
特急列車も停まる駅ですが、駅を出てもそばにはこれと言った賑やかさもありません。
温泉街は山側に1km以上離れたところです。
今日宿泊する旅館に連絡すれば送迎をしてくれるのですが、折角ですからのんびりと歩いて行くことにします。

 玉湯川に沿って、川沿いの道を進んでいきます。
3月末のこの時期、長い冬が終わりやっと緑が芽生えだしたところです。
川辺の桜も花が咲くまで、あと1週間は欲しいところです。
暑くもなく寒くもないここのところの気温は、歩いていても気持ちが良いものです。
はるか高く見上げるようなところに、山陰自動車道が見えます。
この道が見えれば、その先は玉造温泉の温泉街です。

 先ずは宿に寄り、荷物を置いてきます。
ところがそこで出された抹茶とまんじゅうを口にすると、動きたくなくなってしまいます。
これはいけないと自分を奮い立たせ、温泉街を巡る決意をするのでした。

 ここからはさらに上流に向かって、玉湯川をさかのぼって行きます。
温泉街まで来ると、川辺も整備されておりコンクリートで固められています。
近くには足湯もあり、多くの人が楽しんでいます。

 そして川辺の道沿いには、色々なオブジェが並んでいます。
可愛い身なりをしたイナバの白兎といった島根にちなんだオブジェがあります。
それらを見ながら歩いて行くのも、楽しいものです。

 宇宙船のような奇抜な形の建物があります。
ここは玉造温泉ゆ〜ゆという銭湯です。
大浴場だけでなく、ホールや会議室、休憩室も備えた施設だったのです。

 先ほどは足湯があったのですが、この辺りに来ると玉湯川も足湯場になっています。
川に温泉が流れており、多くの若者が川に向かって座っています。
そして気持ち良さそうに足を水に浸けて休んでいるのです。

 その先の玉湯川に人がかろうじて通れる幅の木の橋が架かっています。
733年に編纂された出雲国風土記にも「川辺の出湯」として登場します。
かつてこの場所には石で囲まれた露天風呂がありました。
この湯に浸かればみんな美人美女になり病気も治ると言われていました。
そうしたことから神の湯と呼ばれていたようです。

 その奥に朱色の欄干をもつ橋が見えます。
宮橋で、別名を恋叶い橋と呼ばれています。
神社に向かって撮影すると恋が叶うとされたところです。

 その橋の先にあるのが、湯薬師堂です。
一間四方の木造の小さなお堂です。
鎌倉時代に隠岐に流された後醍醐天皇ですが、天皇に従って戦った富士名判官義綱は病に苦しんでいました。
ところがの家臣の綱久が薬師如来に祈願すると、白髪の老人が枕元に立ち洪水で埋まっている川床の霊泉の湧き出る場所を告げます。
川床からは1体の薬師如来像が見つかり、そこから霊泉が湧き出しました。
義綱がその温泉に入ると、不思議と病から全快することができました。
そこで泉源のそばに薬師如来を安置したことが、この湯薬師堂なのです。

 玉作湯神社はその先にあります。
出雲国風土記には玉作湯社の記述もあり、古くから存在する神社です。
玉造りの祖神である櫛明玉命、医療の神である大国主命、そして温泉の神である少彦名命が祀られています。
江戸時代に入ると玉作温泉が松江藩の湯治場として整備され、玉作湯神社も崇敬の対象になっていました。
鳥居の先の石段を登ると、そこに境内が広がっています。
正面に拝殿、そしてその奥にあるのが球状の石で、そこから水が湧き出ています。
真玉と呼ばれる願い石で、触れて祈ると願いが叶うとされているものです。

 さて、お腹もすいてきましたので宿に戻ることにします。
今晩の食事は、カニ料理を予約しておきました。
山陰と言えばカニが有名で、今年はまだ口にしていなかったのでこの機会に目いっぱい食べて帰ります。
贅沢にもひとり1杯のゆがいたカニに甘酢をつけて甘酢をつけて食べるオーソドックスのものから、かにすきまで山陰の味を食べ尽くします。
そして蟹釜飯まであります。
この蟹釜飯は絶品の味でした。

 そしてせっかく温泉地に来たのですから、食後は温泉にゆっくり浸かります。
日本最古の温泉のひとつで、美肌の湯としても有名です。
どうして湯に浸かるだけで、こうも落ち着くのでしょうか。
湯に浸かるの文化が、日本人だけの特権であることを改めて感じます。
露店の岩風呂で、今日の疲れを癒したのでした。

 翌朝はシジミの味噌汁から始まります。
宍道湖に面した玉造温泉です。
シジミで有名な宍道湖ですから、これを待っていました。
いつもより数倍多い朝御飯を腹に入れ、この日の力を補充したのでした。

 さて帰り支度です。
今度は駅までの送迎車を使って移動します。
車の出発を待っている間、気付いたものがあります。
旅館の外には、湧き出る元湯があったのです。
そして玉湯川の桜ですが、数は限られていますが花を開いているものがあります。
シジミを食べたことで、よく見えるようになったからでしょうか?

 そうこうしているうちに、旅館を後に車は発車しました。
玉造温泉駅の勾玉の飾りを確認して、電車に乗り込んだのでした。

 
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