にっぽんの旅 中国 岡山 吉永

[旅の日記]

吉永の閑谷小学校 

 岡山県のJR吉永駅。
なにもない田舎の駅ですが、ここには日本唯一のものがあるのです。
それではそこに向かって進みましょう。

 吉永駅から目的の場所には、バスで向かいます。
行って戻ってくるには、曜日によって異なりますが、1日1本か2本のバスしかありません。
今日は早起きして、吉永駅9:00のバスに間に合うことができました。
駅前広場の片隅に停留所の標識がぽつん立っているだけで、本当にバスが来るのか不安になります。
標識に記載されている時刻表に9:00発の文字がありますので、それを頼りに待ってみます。

 定刻の少し前にバスは来ました。
黄色いマイクロバスで、一見すると路線バスとは思えません。
とにもかくにもバスが来たので、一安心で乗り込みます。
バスは目的の場所と反対の方向に進みだしたのでヒヤリとしましたが、駅前と言っても道が狭いので広い道に向かって進んでいたのでした。
周りの景色を楽しみながら、10分ほどで「閑谷小学校」のバス停に着きました。

 そう、本日の目的地は「閑谷小学校」です。
駐車場の先に、寺の入り口を思わせるような大きな「公門」があります。
「公門」は出入り禁止で、その横の入場門から敷地内に入ってみます。

ここは、日本最古の庶民の学校で、武士ではなく庶民の子弟の教育を目的として、1670年に岡山藩主池田光政が創立した学校です。
人を育てることが大切だと考えた光政は、藩校である「岡山学校」に続き、岡山藩立の学校として「閑谷小学校」を造ることを決意します。
しかしその設立には、32年もの年月を要することになります。
学校に相応しい土地を探していた光政は、津田永忠の案内で閑谷を訪れます。
そしてこの地をひどく気に入り、閑谷に学校を置くことを決意します。
1674年までに、学房・飲室・講堂・聖堂が整備され、いま敷地の正面に位置する講堂もこの時にはできていました。
しかし当時は、藁葺の質素な建物でした。
1675年には、領内の123か所に散らばっていた手習所を、ここ閑谷学校に統合します。

 光政は1682年にこの世を没しますが、遺言で学校を永続保つように津田に伝えます。
津田永忠は聖堂と講堂の改築を行い、この時に屋根も耐久性の高い備前瓦に敷き替えられ、現在に姿を残しています。
その後「閑谷精舎」と名前を替えて学校教育が盛んに行われますが、講義が漢学に偏っていたため次第に生徒数が減少し、1877年には閉校に追い込まれます。
事態を重く見た元岡山県参事の西毅一が、財界や有識者より資金を募り閑谷学校再興の活動を行います。
そして1884年には、英学・漢学・数学の3教科を教え、生徒は14歳以上で抗議は週24時間を3年間と定め、「閑谷黌」として再スタートします。

 そして中学教育に移行するために「私立閑谷中学校」「私立閑谷黌」などと名前を変え、1921年に「岡山県閑谷中学校」となります。
いまで言うところの瓦屋根の「閑谷小学校」の奥に、白と淡いピンクの姿をした木造2階建ての校舎があります。
「岡山県閑谷中学校」の建物で、資料館としていまも残っています。
「閑谷小学校」「岡山県閑谷中学校」を取り囲む石塀は、上部の角を取った蒲鉾型をしており、765mの膨大なものです。

 敷地の中には、学校の他にも2つの建物があります。
そのひとつが「孔子廟」です。
開学の精神である儒学の始祖孔子を祀っており、ひときわ高い場所に設置されています。

 その横には「閑谷神社」があります。
田永忠が講堂の改築の際に構築した「芳烈祠」で、池田光政が祀られています。

 こんな「閑谷小学校」を見終えて、吉永行きのバスを待ちます。
日に2本しかない貴重なバスですので、乗り過ごすと大変です。
少し早めに向かいます。
道路から少し入り込んだバス停で待っていると、道路を1台のマイクロバスが通り過ぎて行きました。
黄色い車体でまぎれもなく、路線バスの色です。
慌てて手を振りますが、バスは気付いてないのか速度を落とさずに過ぎ去ってしまいました。
行きはガラガラだったバスでしたが、今回は結構客が乗っていたのは気に掛かりますが、人が動き出す時間になったからでしょうか。
この地方のルールで、手を挙げないとバスは泊まってくれないのかもしれません。
駅からタクシーを呼ぼうか、駅まで歩いて行こうか、いずれにしても次の電車にはまにあわないな、など思いが頭の中を巡ります。
困り果てていた時にあざ笑うかのように、黄色のマイクロバスがやって来ました。
そして中はガラガラ状態で。
さて、先ほど見たものは何だったのでしょうか。
安心してバスに乗り込んだのでした。

 そしてここ岡山で有名なものといえば、「備前焼」です。
ずらりと並んだ「備前焼」の食器は、素朴でありながら暖かい姿をしていたのでした。

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